アメリカ精神科ER
緊急救命室の患者たち

著者 レネイ・J・マラー
訳者 田中芳文

ISBN 978-4-88002-166-9
四六判263頁 定価2,625円(本体2,500円+税)

 


原著紹介文

「この本は精神科救急を学ぶ臨床医にとって“必読の書”である。マラーは、精神科救急疾患の典型的な症状を見せる患者たちの困った状況を私たちに切り取って見せる。小説家の声と実存主義哲学者の耳を持ち、洗練され、また人間味あふれる臨床家である彼は、もっともチャレンジングな臨床例について、いかに理解したら良いかといったことや、その接し方はどうしたらよいかといったことを読者に教えてくれる」 (コロンビア大学精神医学教授 ロバート・アラン・グリック氏)

「レネイ・マラーは患者のケアとそれらの問題の記述における素晴らしい仕事をしました。彼は緊急救命室や精神疾患の扱いについての新鮮な視点をもたらしている」 (ジョンズ・ホプキンズ病院精神科名誉長 ポール・マクヒュー氏)


著者・訳者紹介

●レネイ・J・マラー
精神科医。メリーランド州ボルチモアを拠点に、精神疾患に関するコンサルティング業務をしながら、Psychiatric Times誌に寄稿したり、タウソン大学で精神薬理学の講義を行なったりしている。
著書:Anatomy of a Splitting Borderline: Description and Analysis of a Case History(1994)、Beyond Marginality: Constructing a Self in the Twilight of Western Culture(1998)など数点の精神医学系専門書がある。本書(PSYCH ER: Psychiatric Patients Come to the Emergency Room)は、ユニオン・メモリアル病院やグッド・サマリタン病院の緊急救命室に長年勤めてきた経験を元に、精神疾患患者の実像を描いており、貴重な病跡学の文献ともなっている。

●田中芳文
島根県立看護短期大学教授(専門:英語学、 社会言語学)。
著書:『英和メディカル用語辞典』(共著、 講談社インターナショナル)、『医療英語がおもしろい─最新Medspeakの世界─』(共著、 医歯薬出版)。
訳書:『アメリカ新人研修医の挑戦 最高で最低で最悪の12ヵ月』(西村書店)、『看護師がいなくなる?』(西村書店)、『だから看護教育は楽しい―アメリカのカリスマ教師たち』(日本看護協会出版会)。
編著書:『医療ドラマERで学ぶ英語』(朝日出版社)、『救命救急センター24時』(マクミラン ランゲージハウス)、『救命フライトナース物語』(成美堂)、『働く救急救命士たち』(松柏社)、『英語を学ぶ看護学生のためのStories for Nurses』(エルゼビア・ジャパン)、『ある看護師のみた病院生活のドラマ』(三修社)。

全臨床医・看護師など医療従事者必読

最近、患者さんの言葉や行動に対し、戸惑うような感覚を覚えたことはありませんか?

精神科医ならずとも外来で精神疾患患者を診る機会は多々あります。(たとえば、循環器疾患と勘違いして受診されることが多いパニック障害患者などが典型でしょうか。)

しかし、適切なトリアージができないまま闇雲に診療を続けていると、かえって患者さんを傷つけてしまう自体になりかねません。
患者・医師双方に当惑が拡がり、お互いへの不信感が生まれてしまうかもしれません。

そういった事態を避けるためには、日常診療にかかわるすべての人がある程度の精神科の知識を得ていることが重要になります。
プライマリケア医向け解説書や、初心者向け精神科ガイドブックを読むのもよいでしょう。
しかし、そういった書物の場合、どうしても概論や数値、無味乾燥な言葉が羅列された判断基準の表などで構成せざるをえない部分もあり、ふだんから実際の精神疾患患者に接していないと、なかなかイメージしづらく、手を出しにくいということも事実です。
こんな状況を、丸ごと症例集とでもいうべき本書が補完します。
本書を読んでから各種専門書を読めば、それぞれの内容が生きた内容として理解できるようになります。

このところ、巷では「読書による経験」を「実際の経験」として捉えようというマインドマップという手法が注目を浴びています。
本書を読むことはまさに「精神科救急診療の名医」が蓄積してきた「精神科の診療経験」を手に入れることにほかなりません。

本書の前半では鬱病や境界性パーソナリティ、ドラッグ中毒、統合失調症などといった疾患を有する患者さんの典型的な例を取り上げ、彼らがどんな世界を抱え、どんなふうに感じ考えているか、著者の目を通し理解することができます。
後半では意図せずに精神疾患を演技してしまう患者や、殺人を働いたと主張する患者、身体疾患から精神疾患が発生している例など、一見では不可解と思われる症例を取り上げています。

本書を読んだ経験は、必ず血となり肉となり、いつか役に立つことと確信しています。

精神科専門医にとっては示唆に富む病跡集

もちろん精神科専門医の方にとっても、本書は興味深い内容です。
著者はジャン-ポール・サルトルらをたびたび引用し、徹底して実存主義の立場から、精神疾患の病理を捉えています。
患者から見た世界がどういった世界になっているか理解することが、患者自身を理解することであり、本当の治療につながるという視点で貫かれています。
これは、とかく検査や薬物処方に追われる昨今の臨床現場から考えると、古くて新しい視点です。

精神疾患に興味がある一般の方へ

本書は、患者家族や、医師・看護師をめざす学生、そのほか精神疾患に興味がある一般の方々にもお勧めします。
本書を通し、少しでも社会の精神疾患に対する理解が深まることを願います。


目  次

第 I 部 わかりやすいストーリー
第1章 鬱病 押しつぶれる世界
第2章 パニック ばらばらになる世界
第3章 境界性パーソナリティ 壊れやすい世界、変わりやすい気分
第4章 多重人格性 二つ以上のアイデンティティで世界を相手にする
第5章 アルコール 口で自分の世界を化学的に変える
第6章 ドラッグ 鼻と静脈で自分の世界を化学的に変える
第7章 双極性鬱病 あまりにも憂鬱な世界
第8章 双極性躁病 あまりにも高揚しすぎる世界
第9章 統合失調症 世界を他人と共有することができない
第10章 アルツハイマー型認知症 記憶の糊にひびが入るように世界が溶けていく

第 II 部 複雑なストーリー
第11章 感情の依存によってもたらされるパニック障害
第12章 統合失調症と間違われる演技性

第 III 部 隠された、そして奇怪なストーリー
第13章 詐病者と操縦者
第14章 「ダンプ」
第15章 「スタンブル」
第16章 殺人と身体傷害、かもしれない

第 IV 部 一般身体疾患的要素のあるストーリー
第17章 なぜこの統合失調症患者には人の声が聞こえているのか?
第18章 どのようにして腹痛が首を曲げたのか
第19章 危ない過剰摂取、でも何を?
第20章 閉鎖性頭部損傷が妄想性精神病をもたらす
第21章 しゃっくりを抑えようとして死ぬ危険を冒した患者
第22章 精神病性の症状の理由として見逃される譫妄

第 V 部 患者たちのストーリーはどのようにして精神科の診断をもたらすのか
第23章 精神科診断における患者の物語「大切なのは患者の話すストーリーだよ、そんなこともわからないのか!」
第24章 失感情症 語るべきストーリーがないとき
第25章 「安全の契約」を再調整する
第26章 緊急救命室におけるジャン-ポール・サルトル

 


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