チームアプローチのための老年期精神医学 
斎藤正彦 著

2007年発行 A5判 156頁
定価(本体価格2800円+税)
ISBN9784880024967

その他執筆者など▼
内容の説明▼
この本のねらい(序文より抜粋)

医師や看護師以外のさまざまな専門職がチームとして関わることは、現代の臨床医療の大きな特徴です。老年期の医療・介護についていえば、その特徴はさらに際だっています。医師、看護師、臨床心理士、作業療法士、理学療法士、言語療法士、レクリエーションワーカー、精神社会福祉士、社会福祉士、ケアマネージャー、介護士等々、いわゆるコメディカルの専門職に加え、行政職員や、弁護士、司法書士、家裁の判事、公証人といった法律の専門家、あるいは民生委員、ボランティア等、一般の市民にも関係があります。あげていけばきりがないくらいさまざなま専門職、市民がこの問題に関わっています。

さて、高齢者の医療、介護を考えるとき、精神医学的な視点を欠くことはできません。認知症やうつ状態、妄想、幻覚症など、高齢期にはさまざまな精神医学的問題が起こりますし、正常な加齢現象を理解するためにも精神医学的視点は非常に重要です。

というわけで、この本は、高齢者に関わる精神医学的な問題を、精神医学の専門家以外の方々に理解していただくために書いた手引きです。目標は、そうした方々に、老年期にある一人の人間を理解するために必要な精神医学的な素養を身につけていただくことです。それによって、医療や介護チームの一員として、隣人を支える市民として、あるいは家族介護者として、目の前にいる高齢者の精神の有り様を理解し、精神医療の専門家の話を理解し、それぞれの立場で高齢者を支えるために必要な知識を身につけていただくことができるでしょう。この本を執筆するにあたり、可能な限り、専門的な基礎知識がなくても理解できるよう記述に努めました。一般的な参考文献を読んだり、専門家と話をするときのために必要最小限の専門用語は、定義をしながら使うようにしてあります。幅広い読者を想定して、経験や基礎知識がある方には、より深い理解の手助けになるように、基礎知識の少ない方には、暗記するのではなく、自分で考えるための方法を身につけるような内容を心がけました。

本書は、精神医学の専門書を簡単に整理し直した本ではありません。したがって、専門的な資格試験などの準備をするためにはあまり役に立ちません。本書が目指したのは、あくまでも臨床の役に立てていただく、ご自分で考える手がかりを持っていただくための知識の提供です。この本の趣旨と特徴を理解していただき、日々の臨床や生活に役立てていただければ望外の幸せです。
おもな目次▼
第1章 精神活動とは、精神医学とは
A.脳の機能から見た精神活動のモデル
B.精神症状の生物学的基礎と精神科の薬を理解する
【参考文献】

第2章 老年期に見られる精神の病的状態の理解と対応(認知症を除く)
A.老年期に見られる精神の病的活動
B.老年期のうつ病、その理解と対応
C.老年期の幻覚・妄想、その理解と対応
D.老年期に起こる神経症性障害の理解と対応
E.老年期に起こるせん妄の理解と対応
F.老年期に起こる正確の病的変化、その理解と対応
G.老年期の不眠とその対策
【参考文献】

第3章 認知症の理解とケア
A.認知症とはどういう病気か
B.認知症の症状
C.中核症状が引き起こす生活上の困難とその対応
D.周辺症状の起こり方と対応
E.認知症の医療とケア
【参考文献】

第4章 最後まで自分らしく生き抜くための援助
A.自律と自立
B.高齢者の精神医療と法律の枠組み
【参考文献】

おわりに