認知症と軽度認知障害の人および家族介護者への支援・非薬物的介入ガイドライン2022

「認知症と軽度認知障害の人および家族介護者への支援・非薬物的介入ガイドライン2022」作成委員会:著

2022年発行 B5判 96頁 2色刷
定価(本体価格3,000円+税)消費税10%込(3,300円)
ISBN 9784880021218

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内容の説明

認知症の人にかかわるすべての方々、必見!
「薬をなるべく使わずに認知症の治療をしたい」 そんなときに必読のガイドライン。

コミュニケーションに特化した治療法から、音楽療法や動物介在療法、園芸療法など、特に関心の高いテーマをまとめ、わかりやすく解説しました。

当事者だけでなく共に生活する家族や介護者のケアについても学べる1冊となっています。

序文

 超高齢社会となった我が国において認知症や軽度認知障害(Mild Cognitive Impairment)の有病者数は今も増え続け,平成28年度の国民生活基礎調査(厚生労働省)や平成30年版高齢社会白書(内閣府)によると,要介護認定要因の第一位は認知症である.今後,認知症や軽度認知障害の人が社会で暮らすことが今よりも当たり前となり,「共生」と「予防」を目指して多くの工夫が行われるとともに,医療や福祉現場における治療や予防・ケアに関するニーズはますます高まると考えられる.
 認知症の予防,診断,治療の方向性に関しては,2002年度版,2010年度版についで認知症疾患診療ガイドライン2017(日本神経学会監修「認知症疾患診療ガイドライン」作成委員会)が発刊されている.本邦の認知症の診療は,現在,このガイドラインを根拠として実施されており,診断や治療だけでなく,評価やケア,診断後の流れなどについても広く網羅されている.今回,2019年度(平成31年度)厚生労働科学研究補助金・長寿科学政策研究事業(JPMH19GA0301)において「軽度認知障害と認知症の人および家族介護者に対するリハビリテーションマニュアル」を作成するにあたり,リハビリテーションを含む非薬物的介入と家族介護者への支援に関する最新のエビデンスを参照できるよう,「認知症と軽度認知障害の人および家族介護者への支援・非薬物的介入ガイドライン2022」を作成することとなった.このガイドラインは,認知症と軽度認知障害の非薬物的介入に関する診療とケアの向上を支援する目的で,現時点において標準的と思われる情報を集約したものであり,非薬物的介入のなかで特に関心の高いテーマについてClinical Question(CQ)を設定し,それに基づく検索式からシステマティックレビューを行い,ステートメントと解説を作成した.
 認知症や軽度認知障害の治療とケアにおいては,本人に対する介入だけでなく,共に生活する家族や介護者,ひいては社会全体が症状や行動の特徴について理解し,互いにできることを考え,社会の一員として認め合うことが大切である.この観点から,本ガイドラインでは,認知症と軽度認知障害の人に対する介入だけでなく,家族介護者についても焦点をあて,CQを作成した.
 この領域は,今後さらに研究が進み,新しい知見が示されることが予想されるとともに,実際の治療やケアにおいて個人因子や環境因子などへの配慮が不可欠であることは論を俟たない.このような理由から,本ガイドラインが現場のスタッフによる個別の決定やアプローチを制約・拘束するものではないことに留意されたい.また今回検討した文献には介入による有害事象や参加率・脱落率がほとんど記載されておらず,それらに関する情報は十分に得られていない.これらの現状を踏まえ,個々の例に対して具体的にどのようなアプローチを採用するかについては,エビデンスの有無だけでなく,対象者や家族介護者と十分に相談のうえ,目的にあわせて,個別性と安全性に配慮して検討することが望ましい.
 治療やケアの選択の際には,認知症と軽度認知障害の人およびその家族介護者と真摯に向き合い,新しい知見に基づいて症状や環境に適した最良の選択を行おうとする姿勢が最も重要であることをご理解いただいたうえで,本ガイドラインが,現場の医療・介護スタッフの治療やケアに少しでも役立つことを切に願っている.

令和4年9月30日
国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター
リハビリテーション科 医長   大沢 愛子

おもな目次

Chapter 1 ガイドラインの概要

Chapter 2 Clinical Questionとステートメント・解説

 CQ1 認知症とMCIの人に対する支援・非薬物的介入(言語・コミュニケーション)──16
  1 認知症の言語・コミュニケーション障害に対して,認知刺激療法(CST)や多感覚刺激環境(MSSE)などの訓練を行うことは有効か?……16
  2 言語障害を主症状とする認知症の喚語困難や語の理解障害に対して,語の意味に焦点をあてた言語・コミュニケーション訓練を行うことは有効か?……16
  3 認知症の人や家族に対して,早期から言語聴覚士が専門的に進行段階に応じた拡大・代替コミュニケーション(AAC)を含めた支援を行うことは有効か?……17

 CQ2 認知症とMCIの人に対する支援・非薬物的介入(言語・コミュニケーション以外)──21
  1 認知症やMCI の人に対して,筋力トレーニングや有酸素運動などを含む複合的な運動プログラムを行うことは有効か?……21
  2 認知症やMCI の人に対して,認知訓練と運動の両者を含む多因子介入を行うことは有効か?……23
  3 認知症やMCI の人に対して,音楽療法を行うことは有効か?……24
  4 認知症やMCI の人に対して,認知刺激や認知リハビリテーションなどを行うことは有効か?……27

 CQ3 認知症とMCIの人の家族介護者に対する支援・非薬物的介入──37
  1 認知症の人の家族介護者に対して,介護者のスキルアップを目的とした介護教育プログラムや心理的介入を行うことは有効か?……37
  2 認知症の人の家族介護者に対して,介護者の心理面に配慮した専門的な自己管理指導や支援を行うことは有効か?……37

 CQ4 認知症やMCIの人と家族介護者の両者に対する支援・非薬物的介入──42
  1 認知症の人と家族介護者の両者に対して,支援・非薬物的介入を行うことは有効か?……42

Chapter 3 検索履歴と構造化抄録
 検索履歴──46
  CQ1……46
  CQ2……49
  CQ3……52
  CQ4……55

 構造化抄録──58
  CQ1……58
  CQ2……62
  CQ3……88
  CQ4……92

  索引……94