学校危機とコンサルテーション
いじめ・虐待・体罰・性的被害・犯罪・事故・自殺 
細田眞司(こころの診療所細田クリニック 院長)・大西俊江(山陰心理研究所 所長)・河野美江(島根大学保健管理センター 准教授):編著 
2015年発行 B6変型判 228頁
定価(本体価格3,200円+税)
ISBN9784880021874

その他執筆者など▼
内容の説明▼

学校現場でおこるさまざまな緊急事態にどう危機介入すべきか。筆者らの10年に及ぶ豊富な事例検討から、有効なコンサルテーションを実践するためのエッセンスを抽出した。

はじめに
 本書は、深刻な危機的問題に直面する教育現場におけるコンサルテーション活動を取り扱っている。本書で取り上げている生徒間の他害行為、性的問題、生徒の突然の死、教師の違法行為などのケースは従来からあった問題ではあるが、今日ほど注目されている時代はない。それは、1990年代からの児童虐待、体罰、セクシャル・ハラスメント、犯罪被害への社会的視点の変化と照応していると考えられる。それまでは、「親のしつけ」 「指導の範囲」 「被害を受ける側にも何か原因があるに違いない」 「教師は間違いを起こさない」などとされて、問題の本質が覆い隠されてきたが、当事者やその支援者の活動によって、問題解決のための取り組みが公式化されるようになったためである。
 しかし、教育を行う専門家(=教師、教官)はこれらの危機的問題に対応する専門家ではない。それゆえ、他の分野の専門家のコンサルテーションを受け、対応を行わないと間違った対応に陥る危険性がある。また、「自分のところでは起こらない(起こって欲しくない)」と思いたいがために、つい対応が回避的になってしまう傾向がある。そのため、教師も危機的状況であることを感知する能力を養う必要がある。危機的対応は普段の業務と異なるモードで対応を行うことになる。たとえば、虐待と認知したら、児童相談所などに通報する義務が発生する。普段の関係性を飛び越えた行動を要請されるのである。
 コンサルテーションの技法では、現場からは特別なケースと感じられる事態に対する対処を指導・助言しながら、同時に次に同じようなことが起きたときには現場が対処できるように促す技法が重要となる。コンサルタントは組織での対応を常に意識し、予防できるように働きかけるべきである。コンサルテーションでは個人と組織・システムの両者に働きかけるのである。
 本書では、危機的状況におけるコンサルテーションの概念枠を前半で提示し、後半では事例を中心にその応用を提示している。筆者たちの10年間で100回に及ぶ事例検討の中から、そのエッセンスを抽出した内容である。現場で地道に活動している人たちのいくばくかの糧になればと願って本書を作成した。なお、事例は匿名性を保つため、改変を行っている。
2015年 春  細田眞司 

おもな目次▼

はじめに
第1部 コンサルテーションの基本
Chapter 1 危機対応のコンサルテーション
Chapter 2 緊急支援・危機対応の実際
Chapter 3 いじめへの対応
Chapter 4 性暴力被害に対するコンサルテーション
Chapter 5 臨床心理士がコンサルテーションを行うための基本
第2部 ケース・スタディ
Chapter 1 スクール・カウンセリング場面での危機対応
Chapter 2 教員の不祥事
Chapter 3 マスコミ報道によって明らかになった教員の体罰
Chapter 4 いじめ問題─功を奏した校内支援会議─
Chapter 5 インターネットにより生じた問題
Chapter 6 生徒の思いがけない死
Chapter 7 教員による交通事故
Chapter 8 セクシャル・ハラスメント
Chapter 9 虐待
Chapter 10 臨床心理士の緊急支援を受けて─教員の立場から─
あとがき
索引