イグノーベル的バランス思考
―極・健康力―

新見正則(帝京大学医学部外科准教授):著

2017年発行 B6変型判 184頁
定価(本体価格2,000円+税)
9784880021980

内容の説明

最新医療に漢方のおもしろ話、健康に生きるためのアドバイスなどなど、移植免疫学を極めイグノーベル賞を獲得した著者ならではのユニークな視点で綴った珠玉のエッセイ集。バランスよく「健康力」を極めるためのヒントが満載です!

はじめに

 僕は外科の専門医で指導医です。消化器外科医で、かつ血管外科医でした。ところが移植免疫学をオックスフォード大学博士課程で勉強し、漢方を当代随一の名医松田邦夫先生に習い、トライアスロンを趣味にして現在に至っています。今はがんや難病を含めたいろいろな患者さんを西洋医学的に、そして漢方も含めたさまざまな視点から治療しています。そんな複眼的な治療方法は、オックスフォード大学で学んだサイエンス的思考方法と、歴史的な治療経験に立脚した漢方的考え方が根底にあります。
 複眼的に見るということは、バランス的思考ということです。いろいろな立ち位置から物事を見ると、新たな視点が得られ、そして現状の問題点と、未来への希望が見えてきます。何事もまずは疑ってみるという立ち位置が必要です。また、何事もまずは信じてみるという視点も大切です。松田邦夫先生の著書に漢方薬の匂いで妊娠した女性の経験談がありました。西洋医学的には直感的に否定されます。ところが、オックスフォード大学で学んだマウスの心臓移植実験を行ったとき、懐妊を誘導するといわれる漢方薬の当帰芍薬散の匂いが大脳の嗅覚中枢を介して末梢の免疫系に影響を与えることがわかりました。匂いで変化するのであれば、音響刺激でも免疫系が変化するかもしれません。そしてオペラ「椿姫」をマウスに聴かせてみたところ拒絶反応は回避されました。その結果で2013年にイグノーベル賞を頂きました。
 世の中にはたくさんの医療情報が氾濫しています。エビデンスがある治療方法や権威が勧めるガイドラインもあれば、何が本当に正しいかはまだわからないものもあります。そんなたくさんの情報から健康になるための知恵を選び出すヒントがここにあります。すべてを疑い、そしてすべてを信じるという両極端な思考の間のバランスに答えがあるのです。この本には物事を考えるためのヒントがあります。一般人の方々に読んで頂いてもわかるように書いてあります。また医療関係者に読んで頂いてもたくさんの気づきがあると確信しています。
 是非、この本をヒントに「健康力」を極めて下さい。本書はそんな視点をもとに、三年間にわたり毎週連載したヨミドクターの原稿を加筆・再構成しました。出版にあたり大変にお世話になった新興医学出版社の中方欣美さんと林峰子社長に深謝申し上げます。

2017年3月吉日 新見正則

おもな目次

はじめに
タバコが嫌いです
不快な環境で生きる
本当に有効な薬と資本主義
うつ病の動物モデル
暑熱馴化
平均寿命と漢方
ビッグデータ
やっぱり死にたくないモード
医療はまだ進化の途中
脳死移植について
ストレスと休養
ストレスに柴胡桂枝湯
今、よいと思われること
高速逆走事故
フェイルセーフシステム
僕のインフルエンザ対策
僕の考える健康によいこと
ちょい健康デブが長生き
大阪都構想からの救急車問題
異質な人
認知症の人の繕うという行為
蝉しぐれ
おくりびと
隠岐の島の話
オーソドックスな治療と奇跡
奇跡はささいなことの積み重ね
バランス重視の食生活で
10時10分
本当はいくつ?
医療の常識は覆るもの
がんかもしれない─乳がんマンモグラフィー
公衆衛生
腹診
低周波音
津波
昔の知恵も役に立つ
野球と医療
エコノミークラス症候群
保険適用の煎じ薬
情報を上手に活かす
ゼロリスク症候群
医療の二刀流
エスカレーターとリスク回避
日頃の養生とファインプレー
CTスキャン
よく効くイメージ
オックスフォード大学同窓会
三つのメッセージ