獣医版フローチャートペット漢方薬
実は有効!明日から使える!

 新見正則(帝京大学医学部外科准教授)・井上 明(日本獣医がん学会 理事):著

2018年発行 B6変型判 160頁
定価(本体価格2,500円+税)
9784880025810

内容の説明

 おかげさまで大ヒットフローチャート漢方薬シリーズからついに獣医版が登場です! 本書では、原因がはっきりしなくても症状に対してフローチャート式に漢方を処方する方法ですので、漢方の専門的な知識がなくても気軽に処方できます。ぜひ、来院されるかわいいペット諸君に漢方を処方してみて下さい。人間に効く漢方がペットに効かないわけはない。ぜひ気軽に試してみてください。

推薦の言葉

 待望のペット向けの漢方薬処方解説書が出版されました.人に効く漢方薬が動物に効かないわけがありません.私も,昔の漢方医が,仕えている殿様の依頼(命令?)によって,当時ペットの死にかけた錦鯉を漢方薬で生き返らせた話とか,近年でも老衰で足腰の立たなくなった犬を漢方薬で再び歩けるようにした報告など読んだことがあります.私自身も九州某地のある獣医さんですが,老衰と血尿で死にかけた猫をかかえて諦めていたので,漢方薬を教えたところ,幸い猫は全快して,その後大繁盛した獣医さんを知っています.漢方薬は食べ物の延長で,大きな副作用もなく,症状で処方できるフローチャート式なら診断のつかない病気にも対応できます.西洋医学を中心に,足らないところを漢方薬で補完して,ペットの健康寿命を1日でも長くできるよう,漢方薬を処方してみてくださいというのが本書のメッセージです.
 著者の新見正則先生は,人間に対しての漢方薬の専門家です.井上明先生は,獣医で臨床腫瘍学をご専門に全国の動物病院で腫瘍診療を行っています.動物もがんになる時代になりました.透析治療にかかる動物もいます.高度医療の傍らで歴史ある漢方薬をぜひお役立てください.

2018年4月

日本東洋医学会元会長名誉会員 松田邦夫

はじめに

 なんとフローチャートシリーズにペット漢方が登場です.驚いた方々も多いと思います.でも私にとっては自然のことなのです.
 私と漢方との付き合いもいつの間にか長い年月になりました.漢方になんとなく魅力を感じながらも,でも一抹の不安を感じていた遙か昔,その不安を払拭したのはマウスの動物実験でした.当時私は5年間留学したオックスフォード大学での研究を続けるために大学病院で勤務していました.そんな私のネズミの実験に漢方を使用して,漢方の謎が解けていったのです.つまり,漢方薬が動物に効くということ.動物実験が漢方のわかりにくさを理解するヒントをくれたのです.そして私は(人間の)患者さんに自信を持って漢方薬を処方することができるようになりました.
 50歳になって,まったく泳げない親爺の私が水泳を始めました.子どもの誘いです.そして毎日の地道な努力の末に,ある程度泳げるようになって,走り始めて,そして自転車に乗り始めて,なんと金槌親爺が2年間でオリンピックの距離のトライアスロンを完走しました.その日に,わが家の家族となったのが,愛犬の小雪ちゃんです.ビションフリーゼで本当に可愛いです.そんなわが家のペットにも漢方を飲ませています.そこで,みなさんのペットにも漢方を試していただきたく,こんな本を書きました.
 以前から書きたい内容でした.なかなか1人では踏み切れないでいたときに,私の大学院の学生として,獣医師の経験が極めて豊富な井上明先生が入学してくれたのです.私は運と縁が極めて良い人生を送っています(と思っています)が,またまた運が良い人生の一コマが現れました.井上先生との出会いにより本企画が実現しました.
 ペットに漢方を使用するということは,漢方診療は不要ということです.別の言い方をすれば人と同じ漢方診療は不可能ということです.処方選択には漢方診療が必須という立場の先生方には受け入れられないことでしょう.しかし,昔から煎じ薬で残った滓を湯船に入れたり,動物に与えることは実は少なからず行われているのです.そして漢方に興味がある人の中には,私のように自分のペットに漢方を与えている人が相当数いるのです.
 本邦では8割以上の医者が保険適用漢方エキス剤を使用しています.そして患者さんはその恩恵を受けています.そして我々の漢方フローチャートシリーズは漢方の普及と啓蒙にとても役立ってきました.その基本的立ち位置は保険適用漢方エキス剤を用いて,西洋医学の補完医療の役割を果たすことです.一方でペットの領域では保険適用薬か否かは問題とはならないので,今までのシリーズでは登場しなかった保険適用ではない漢方薬や生薬も今回は載っています.
 是非,この本を参考に,みなさんのペットに,そして獣医師の先生方は,来院される可愛いペット諸君に漢方を処方してみてください.その一役をこの本が担えれば嬉しい限りです.

2018年4月

新見正則

あとがき

 フローチャートシリーズのペット編は,予想以上にすばらしい本となりました.共著者の井上明先生の尽力とお陰と思っています.
 今から30年近く前,慶應義塾大学外科学教室で阻血再環流の実験を行っています.犬の大腿動脈を縛ったり,また犬の筋肉からミオグロビンを生成してマウスに投与する実験を行っていました.当時,犬は安く手に入れることができました.保健所から払い下げられた犬だと犬舎の職員の人に教えてもらいました.当時は,ペットにはまったく興味がなく,拾われた野犬が僕の実験の役に立つのであれば,ありがたいことだと思っていました.今から思えば,毛並みの良い,可愛い犬もいました.そんな犬の実験を多数行っていたのです.
 トライアスロンに完走した日に,埼玉のブリーターを訪ねて,ビションフリーゼを手に入れました.数週間前に目と目が合って,すぐにこの子と決めた犬で,迎えに行ったのです.わが家に来て,本当に家族の一員です.犬のカット代は僕の理髪料よりも高額です.犬のワクチンは,私たちのワクチンより高額です.でも家族の一員ですから,その程度の出費は致し方ありません.
 遅く帰宅すると,迎えてくれるのは小雪ちゃんだけです.わが家ではベットやソファでも小雪と一緒です.最初,ペットはベットやソファには上げないことが大切だともいわれましたが,後の祭りです.もうベットやソファの生活に慣れてしまいました.可愛いですよ.私が座ると横に来て,コロンと上向きになって,寄り添って,おなかを出します.ベッドでも私の横で寝息を立てて寝ています.
 こんなにペットに愛着が生まれると,昔自分が犯した罪(?)を反省します.何匹もかわいいペット犬を犠牲にしてしまいました.本当に可哀想です.今,そんなペットたちになんとか役に立つように漢方の本を書きました.決して彼らへの償いにはならないでしょうが,多くのペット諸君が漢方でより幸せになることを願っています.
 実際のところ漢方を食べさせる方法が難題だと思っていましたが,あっさりと井上先生がそのハードルを超えてくれました.ペット用のレシピもこの本には載っています.たくさんの獣医師の先生に,ペット諸君に,漢方を使用していただいて,そして専門の学会でその有用性を発表していただきたいと思っています.
 ペットもがんになる時代になりました.そしてそれを治療する時代になりました.犬に人間と同じ抗がん剤を使うのはちょっと勇気がいります.抗がん剤の副作用で苦しむペットを見ることが飼い主としてはつらいのです.その点,がんにも漢方がある程度効けば,嬉しい限りです.私ががんの患者さんに勧めている生薬は「カイジ」です.幸いカイジは食品として中国から輸入されています.そんなカイジの抗がん効果も是非ペットで体感していただきたいと思っています.
 この書籍を書くにあたり,以下の方々にお世話になりました.
 また,いつも快く私のアイディアを書籍にしてくださる新興医学出版社の林峰子社長に御礼申し上げます.

新見正則

おもな目次

  薬の飲ませ方の基本
  おいしく飲ませるレシピ

モダン・カンポウの基本
  モダン・カンポウ
  本書の使い方
  漢方薬の投与量
  マウスの実験から見えるもの

フローチャートで処方する漢方薬
  眼の疾患
  耳の疾患(外耳炎)
  耳の疾患(炎症)
  風邪のような症状(初期)
  風邪のような症状(こじれたら)
  鼻の疾患
  消化器疾患(全般)
  消化器疾患(嘔吐)
  消化器疾患(下痢)
  消化器疾患(便秘)
  消化器疾患(黄疸)
  消化器疾患(肝炎)
  先天性巨大食道症
  好中球性腸炎
  皮膚疾患(皮膚病)
  皮膚疾患(かゆみ・炎症)
  運動器疾患(こわばり)
  運動器疾患(触ると嫌がる)
  運動器疾患(関節炎)
  循環器疾患
  腎疾患
  泌尿器疾患(血尿)
  泌尿器疾患(膀胱炎)
  膀胱結石
  内分泌疾患(糖尿病)
  内分泌疾患(甲状腺機能低下症)
  がん
  新見正則・おすすめがんの漢方
  カイジとは
  術後の回復に(体力回復)
  術後の回復に(消化器)
  リンパ腫,白血病
  精神・神経疾患(認知症もどき)
  精神・神経疾患(興奮)
  精神・神経疾患(ストレス)
  精神・神経疾患(けいれん)
  老化(初老期)
  老化(初老期のなんとなく)
  老化(泌尿器)
  老化(耳)
  老化(耳の皮膚)
  その他(元気がない)
  その他(歩き方がおかしい)
  その他(異常に食べる)
  その他(食べ過ぎてもどす)
  その他(むくみ)
  その他(出血性ショック)
  その他(生殖器の炎症)

付 録
  掲載漢方薬と生薬構成一覧(ツムラ)
  掲載漢方薬と生薬一覧(ツムラ以外のメーカー)
  漢方薬の匂い

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