アルコール医療ケース・スタディ 
白倉克之、丸山勝也 編著

2008年発行 B5判 168頁
定価(本体価格3,700円+税)
ISBN9784880026831

その他執筆者など▼
編集:
白倉 克之(独立行政法人国立病院機構久里浜アルコール症センター・名誉院長)
丸山 勝也(独立行政法人国立病院機構久里浜アルコール症センター・院長)

執筆者(執筆順):
白倉 克之(独立行政法人国立病院機構久里浜アルコール症センター・名誉院長/国府津病院・院長)
西岡 直也(独立行政法人国立病院機構久里浜アルコール症センター精神科・医長)
真栄里 仁(独立行政法人国立病院機構久里浜アルコール症センター精神科・医長)
樋口  進(独立行政法人国立病院機構久里浜アルコール症センター・副院長)
原田 勝二(株式会社エスアールエル・理事)
山本 暢明(財団法人神経研究所附属晴和病院診療部精神科)
中根  潤(独立行政法人国立病院機構下総精神医療センター精神科・医長)
一青 良太(常磐病院精神科)
白川 教人(横浜市こころの健康相談センター・センター長)
黒川 達也(成仁病院精神科)
宮川 朋大(独立行政法人国立病院機構久里浜アルコール症センター精神科・医長)
水上  健(横浜市立病院内視鏡センター・センター長)
高橋 久雄(平塚市民病院内科系・診療部長)
奥山 啓二(日本鋼管病院内科・部長/地域医療科・部長)
丸山 勝也(独立行政法人国立病院機構久里アルコール症センター・院長)
白木 裕人(稲城市立病院循環器科・部長)
杠  岳文(独立行政法人国立病院機構肥前精神医療センター・副院長)
真先 敏弘(元、独立行政法人国立病院機構久里アルコール症センター神経内科・医長/現、The Rockefeller University,Laboratory of Bacterial Pathogenesis and Immunology)
横山  顕(独立行政法人国立病院機構久里アルコール症センター臨床研究部・部長)
井上 裕之(独立行政法人国立病院機構久里アルコール症センター歯科・医長)
宗  未来(防衛医科大学校精神科学講座)
松下 幸生(独立行政法人国立病院機構久里アルコール症センター精神科・診療部長)
木村  充(独立行政法人国立病院機構久里アルコール症センター精神科・医長)
山本 哲也(独立行政法人国立病院機構久里アルコール症センター精神科・医長)
鈴木 健二(鈴木メンタルクリニック・院長)
藤田さかえ(独立行政法人国立病院機構久里アルコール症センター医療福祉相談室・主任)
安藤 寛美(よしの病院精神科)
新美 洋一(独立行政法人国立病院機構久里アルコール症センター婦人科)
岡崎 直人(さいたま市こころの健康センター・所長補佐)
内容の説明▼
(序文より)

 平成13年1月、新興医学出版社のご好意により「アルコール医療入門」を発行させていただいた。これはアルコール医療を目指す若い医師や看護師、保健師、精神保健福祉士、医学生ないし看護学生、職場の産業保健やメンタルヘルスに関与する方々、さらには依存症者ご本人ないしその家族の方々などにご理解いただくための適当な入門書が見あたらなかった。そういう意図をふまえた入門書の必要性をかねがね痛感していたので、主に独立行政法人国立病院機構久里浜アルコール症センター(旧国立久里浜病院)の先生方にお諮りし、平素研修会などで利用するテキスト原稿を基に、ごく短期間のうちに上梓させていただいた。
 幸い発刊後の評判も良く、また各種のアルコール医療講習会などのテキストなどにも使用していただくなど多方面で利用していただき、編集に携わった者としては安堵している状況であった。
 その後、新興医学出版社より医療入門の姉妹編として具体的な対応を中心としたケーススタデイ編を企画してはとの矢継ぎ早の提案があり、われわれ二人で検討させていただいた結果、新しい試みとして本書の刊行を改めて計画した次第である。
 「アルコール医療入門」では紙幅の都合で割愛した部分も多々あり、無論それを補完する意図もあるが、一方では姉妹編として内容面での重複を可能な限り避けること、さらに出来るだけ簡潔にかつわかりやすい記述と図表を多く取り入れて、具体的な症例の取り扱いを中心に構成すること、前書の各項を担当した各執筆者に原稿を依頼するなどを原則とした。その意味では、各症例のケ―ススタデイの形をとったので、現在抱えているアルコール症例を念頭に浮かべながら、前書と併せて参照して利用されると、読者諸氏には一層理解していただけるのではないかと期待している。
 
 厚生労働省が纏めた国民の健康施策である「健康日本21」計画も、今年で8年目に相当し、目下その成果が危惧される状況にある。その目標達成にはわれられ医療・保健・福祉に関与する者がアルコール依存症ないしその関連問題について十分に理解することはいうまでもないが、広く国民一人一人にアルコール問題についての認識を深めていただくことが不可欠といっても過言ではない。

 本書を通じて少しでも多くの方々の理解の役にたてば執筆者として望外の幸せである。
おもな目次▼
1.アルコール依存症とその関連疾患をめぐって(白倉克之)
2.アルコール中毒(西岡直也)
3.アルコール依存症
 A.アルコール依存症診断における基礎事項 (真江里仁、樋口 進)
 B.アルコール依存症と遺伝子(原田勝二)
 C.アルコール依存症の飲酒量と飲酒期間(山本暢朋、中根潤)
 D.アルコール離脱症状~早期離脱症状・後期離脱症状および慢性禁断症状~(一青良太、白川教人)
 E.アルコール依存症にみられる社会的な問題(黒川達也)

4.アルコール関連疾患
 A.アルコール関連疾患診断における基礎事項(宮川朋大)
 B.アルコール性消化管疾患(水上 健)
 C.アルコール性肝疾患(高橋久雄、奥山啓二、丸山勝也)
 D.アルコール性膵疾患(丸山勝也、高橋久雄、奥山啓二)
 E.アルコール性糖・代謝疾患(奥山啓二、丸山勝也)
 F.アルコール性心・循環器疾患(白木裕人)
 G.アルコール性中枢神経疾患(杠岳文)
 H.アルコール性末梢神経・筋障害(真先敏弘)
 I.アルコールによる消化管癌(横山顕)
 J.歯科領域におけるアルコール関連疾患(井上裕之)

5.アルコール関連精神障害
 A.異常酩酊(宋 未来)
 B.アルコール性認知症(松下幸生)
 C.ウェルニッケ・コルサコフ症候群(木村 充)
 D.合併精神障害(山本哲也)
 
6.青年期アルコール依存症(鈴木健二)
7.高齢者アルコール依存症(松下幸生、藤田さかえ)
8.女性のアルコール依存症(安藤寛美)
9.胎児性アルコール症候群(FAS)(新美洋一)
10.アダルト・チルドレン(AC)(岡崎直人)
11.アルコール関連疾患の今後の見通し(丸山勝也)

【症例目次】
1.イッキ飲みによる急性アルコール中毒の一例(西岡直也)
2.アルコール依存症者が大量飲酒をした場合の一例(西岡直也)
3.比較的多い飲酒量・長い飲酒期間であった一例 
(山本暢朋、中根 潤)
4.飲酒量はやや多いが比較的短い飲酒期間であった一例(山本暢朋、中根 潤)
5.比較的少ない飲酒量、短い飲酒期間であった一例(山本暢朋、中根 潤)
6.早期離脱症状の激しい一例(一青良太、白川教人)
7.入院のたびに激しい精神運動興奮を呈するDT(振戦せん妄)の一例(一青良太、白川教人)
8.アルコールてんかんからDT(振戦せん妄)移行を繰り返した一例(一青良太、白川教人)
9.飲酒がらみの障害事件を呈した一例(黒川達也)
10.家族内における飲酒問題の被害をこうむった一例(黒川達也)
11.Mallory-Weiss症候群の一例(水上 健)
12.逆流性食道炎の一例(水上 健)
13.カンジタ食道炎の一例(水上 健)
14.剥離性食道炎の一例(水上 健)
15.食道・胃静脈瘤の一例(水上 健)
16.AGML(急性胃粘膜病変)の1例(水上 健)
17.胃潰瘍の1例(水上 健)
18.消化管運動・消化吸収能低下の一例(水上 健)
19.大腸腺腫の1例(水上 健)
20.アルコール性脂肪肝の一例(高橋久雄、奥山啓二、丸山勝也)
21.アルコール性肝炎の一例(高橋久雄、奥山啓二、丸山勝也)
22.アルコール性肝線維症の一例(高橋久雄、奥山啓二、丸山勝也)
23.アルコール性肝硬変の一例(高橋久雄、奥山啓二、丸山勝也)
24.膵石を伴うアルコール性慢性膵炎、糖尿病の一例(丸山勝也、高橋久雄、奥山啓二)
25.膵石を伴わないアルコール性慢性膵炎の一例(丸山勝也、高橋久雄、奥山啓二)
26.連続飲酒発作後にアルコール性低血糖・ケトアシドーシスを合併した一例(奥山啓二、丸山勝也)
27.入院後に急性痛風性関節炎を発症した肥満・糖尿病・脂肪肝合併プレアルコホリックの一例(奥山啓二、丸山勝也)
28.慢性膵炎・二次性糖尿病に末梢・自律神経障害を合併した一例(奥山啓二、丸山勝也)
29.アルコール性心筋症の一例(白木裕人)
30.飲酒により冠れん縮性狭心症が誘発された一例(白木裕人)
31.泥酔した患者に認めた脳出血の一例(杠 岳文)
32.多量飲酒者に認めた脳萎縮とその回復がみられた一例(杠 岳文)
33.多量飲酒者に認めた脳幹部の脱髄巣の一例(杠 岳文)
34.アルコール性ポリニューロパチー(低栄養あり)の一例(真先敏弘)
35.アルコール性ポリニューロパチー(低栄養なし)の一例(真先敏弘)
36.慢性アルコール性ミオパチーの一例(真先敏弘)
37.飲酒で赤くなる体質と発癌(食道癌)をきたした一例(横山 顕)
38.胃切除後アルコール依存症をきたし食道癌が見つかった一例(横山 顕)
39.末期的状態を呈している1例(口腔状況からみて)(井上裕之)
40.アルコール依存症者に出現する典型的症状を有する1例(口腔状況からみて)(井上裕之)
41.義歯装着前後を示す一例(井上裕之)
42.アルコール依存症初期の口腔内状況を推察する1例(井上裕之)
43.飲酒がらみの傷害事件を呈した1例(宗 未来)
44.新婚早々に家庭内暴力に至った夫婦の一例(宗 未来)
45.アルコール性認知症と考えられる一例(松下幸生)
46.アルコール性認知症と考えられる一例(松下幸生)
47.ウェルニッケ脳症からコルサコフ症候群に移行し、症状が固定化した一例(木村 充)
48.ウェルニッケ脳症の段階でチアミンを投与し、回復した女性の一例(木村 充)
49.ウェルニッケ脳症の徴候を欠くコルサコフ症候群が半年かけて徐々に回復した一例(木村 充)
50.アルコール症と摂食障害のcomorbidity(山本哲也)
51.アルコール症と統合失調症のcomorbidity(山本哲也)
52.アルコール症とうつ病のcomorbidity(山本哲也)
53.ADHD(注意欠陥多動性障害)にアルコールと薬物乱用が合併した一例(鈴木健二)
54.アダルトチャイルドのヤングアルコール依存症の一例(鈴木健二)
55.過食症にアルコール依存が合併した女性の一例(鈴木健二)
56.若年で発症し高齢になって顕在化した一例(男性)(松下幸生、藤田さかえ)
57.高齢発症の一例(男性)(松下幸生、藤田さかえ)
58.若年発症の一例(男性)(松下幸生、藤田さかえ)
59.女性高齢発症の一例(松下幸生、藤田さかえ)
60.女性若年発症、高齢顕在化の一例(松下幸生、藤田さかえ)
61.女性若年発症の一例(松下幸生、藤田さかえ)
62.平凡な主婦がストレスによりアルコール症を発症した一例(安藤寛美)
63.大酒家の社会人女性から発症した一例(安藤寛美)
64.統合失調症加療中にアルコール症を発症した一例(安藤寛美)
65.飲酒妊婦の子宮内胎児死亡(新美洋一)
66.FAS(胎児性アルコール症候群)の疑いのみられた一例(新美洋一)
67.FAE(胎児性アルコール効果)の疑いのみられた一例(新美洋一)
68.家族介入前の娘の思いを大切に関わったACの一例(岡崎直人)
69.アルコール依存症のACに対する援助を行った一例(岡崎直人)