神経病理標本の見方・考え方
水谷俊雄・望月葉子 共著

2010年発行 B5判 128頁
定価(本体価格6,000円+税)
ISBN 9784880026992

その他執筆者など▼
内容の説明▼
(序文より抜粋)
都立神経病院の毎月2回開催されるCPCでは,レジデントが臨床症状や経過を踏まえて神経病理所見を説明します.本書は彼らの手軽な参考書として作られた冊子を書き改めたものです.
 本書は入門編,症例編からなっています.入門編第 I 部「組織のなかの細胞」では,どんな疾患でも遭遇する機会の多い変化やよく使われる割には定義が曖昧な術語や病変などを積極的に取り上げました.(中略)第 II 部は,神経系では一個一個の細胞の変化ではなくて,組織の変化が症状を引き起こしている,という観点から「組織をみる」と題して,組織標本のさまざまな見方について幾つかの例を挙げて解説しています.一方,四つの疾患からなる症例編の最初は筋萎縮性側索硬化症です.これは神経内科医に最も馴染み深い疾患であると同時に,病理学的にも変性疾患の導入には最適な疾患だからです.そして,多系統萎縮症,Lewy小体型認知症,変性かあるいは血管・循環障害か議論が分かれる症例が続きます.これらの症例は本書のために特別に選んだものではなくて,入門編の執筆中にたまたま筆者が解剖当番に当たったものです.従って,意図的に作った病歴や病理所見ではありませんので,必ずしも筋道立って議論が進んでいませんし,脱線したり,明確な結論が出ない症例も含まれています.しかし,却ってその方がCPCの前にどんな議論がされているのか,その一端が現れているのではないかと思いましたので,敢えて修正していません.
(中略)最後に,神経病理学を勉強することは臨床神経学とは違った切り口から神経学を学ぶことだと思います.一人でも多くの若い人達が神経病理学の面白さに触れ,それが少しでも臨床に活かされれば,筆者としてこれに勝る喜びはありません.
おもな目次▼
はじめに
入門編
標本をみる前に
第 I 部 組織のなかの細胞
1.神経細胞
 コーヒーブレイク〈神経細胞を数える〉
2.グリア
 コーヒーブレイク〈アストログリアの副産物〉
3.ニューロピル
4.血管系
5.ラクネと血管周囲腔

第 II 部 組織をみる
1.病巣の特徴をつかむ
2.病巣を要素別に分解する
3.病巣の分布を調べる
参考文献

症例編
症例 I 筋萎縮性側索硬化症
I.臨床歴
II.マクロ観察
III.顕微鏡をみる
 1.脊髄をみる
 2.脊髄所見をリストアップする
   コーヒーブレイク〈運動ニューロン疾患〉
 3.脳幹をみる
 4.大脳
IV.所見をまとめる
参考文献

症例 II 多系統萎縮症
I.臨床歴
II.マクロ観察
 1.ブレイン・カッティングの手順
 2.マクロ所見のまとめ
 3.切り出しと染色の選択
III.顕微鏡をみる
 1.オリーブ・橋・小脳萎縮
 2.線条体黒質変性について
 3.大脳皮質病変について
 4.自律神経病変について
 5.その他の病変について
IV.神経病理診断
参考文献

症例 III Lewy小体型認知症
I.臨床歴
II.マクロ観察
 1.所見をとる
 2.マクロ所見を箇条書きにする
 3.切り出しと染色の選択
III.顕微鏡観察
 1.中脳黒質
 2.側頭葉内側部
 3.アンモン角
 4.大脳新皮質
 5.その他の構造
IV.所見をまとめる
 コーヒーブレイク〈Lewy小体型認知症とAlzheimer病〉
参考文献

症例 IV 脳血管障害and/or変性
I.臨床歴
  マクロ観察の前に
II.マクロ観察
III.顕微鏡をみる
IV.まとめ
参考文献
索  引