（編者序文より抜粋）
　本書は，旧国立療養所時代から結核・非結核性抗酸菌症治療に携わり，日々，非結核性抗酸菌症治療に難渋している国立病院機構病院呼吸器科医が協力し作成された．非結核性抗酸菌症の診断や治療において，現在，何がわかっているのか，何をしたほうがいいか，何をしないほうがいいのか，という知識の整理，つまり，臨床医が用いることができるテキストを作成しようという視点で作成されている．また，本疾患に興味を持っていただけるよう，新しい話題についても言及した．本書が本邦の非結核性抗酸菌症対策の一助になることを祈っているが，願わくば本疾患の研究が急ピッチで進み，本疾患に悩む患者が1人でも少なくなり，本書が早く過去の遺物となることが望ましいと考える．

序文…………………………………………………………………………………………　iii
執筆者一覧…………………………………………………………………………………　v
本書で用いる主な略語一覧………………………………………………………………　x
Ａ　非結核性抗酸菌症研究の歴史と触れられなかった諸問題　倉島篤行　
　1　非結核性抗酸菌発見の頃
　2　ナイアシンテストの発明
　3　今日わが国では行われていない非結核性抗酸菌皮内反応と未解決の問題
　4　非結核性抗酸菌症による石灰化について
　5　Aminoglycosideのこと
Ｂ　肺非結核性抗酸菌症の診断
1．肺非結核性抗酸菌症の画像診断　中川　拓　他
　1　はじめに
　2　肺NTM症の病型
　3　結核とNTMの鑑別
　4　重症度評価，治療方針決定のための画像診断
2．非結核性抗酸菌症の細菌学的診断　桑原克弘
　1　肺非結核性抗酸菌症診断における細菌学的検査の意義
　2　非結核性抗酸菌の分類
　3　臨床的に問題となる菌種
　4　非結核性抗酸菌症の感染源
　5　検体採取と塗抹・培養検査
　6　菌種同定
　7　感受性検査
　8　MAC症培養検査の注意点
　9　呼吸器検体以外の抗酸菌検査の注意点
10　おわりに
Ｃ　非結核性抗酸菌症治療に用いる薬剤の薬理作用　滝　久司　他
　1　薬理作用
　2　Streptomycin（SM）
　3　Kanamycin（KM）
　4　Rifampicin（RFP）
　5　Rifabutin（RBT）
　6　Clarithromycin（CAM）
　7　Ethambutol（EB）
　8　Sitafloxacin（STFX）
　9　Moxifloxacin（MFLX）
10　Isoniazid（INH）
11　Amikacin（AMK）
12　Imipenem/Cilastatin（IPM/CS）
13　Azithromycin（AZM）
14　Faropenem（FRPM）
15　Minocycline（MINO）
D　肺非結核性抗酸菌症各論
1-1　肺Mycobacterium avium complex（MAC）症の治療　佐々木結花
　1　肺MAC症の治療開始時に注意すべきこと
　2　現在推奨される治療について
　3　治療の開始時期について
　4　治療評価
　5　副作用対策
　6　現在ガイドラインに収載されていない他薬剤の有効性について
　7　治療期間
　8　CAM耐性MAC
　9　外科治療について
10　MAC症の予後
11　死にいたる可能性
1-2　肺MAC症患者へのオリエンテーション　佐々木結花
　1　慢性気管支炎，気管支拡張症についての説明
　2　生活習慣で注意すべきこと
1-3　急速進展した肺M. avium症例について　佐々木結花
　1　症例呈示
　2　症例から振り返る治療ポイント
2-1　肺Mycobacterium kansasii症　鈴木克洋
　1　はじめに
　2　疫学と診断
　3　治療・予後
2-2　迅速発育菌　鈴木克洋
　1　はじめに
　2　診断・画像所見など
　3　治療・予後
3　その他の非結核性抗酸菌およびM. bovis，M. bovis BCG株による感染症の病態と治療
多田敦彦
　1　診断総論
　2　M. gordonae感染症
　3　M. szulgai感染症
　4　M. xenopi感染症
　5　M. scrofulaceum感染症
　6　M. terrae complex（M. terrae，M. triviale，M. nonchromogenicum，M. hiderniae）感染症
　7　M. marinum感染症
　8　M. ulcerans感染症（Buruli潰瘍），M. shinshuense感染症
　9　M. bovis感染症
10　M. bovis BCG株感染症
4　非結核性酸菌症と薬剤感受性試験　河田典子
　1　はじめに
　2　MAC
　3　M. kansasii
　4　迅速発育菌
　5　おわりに
Ｅ　肺非結核性抗酸菌症の最新の話題
1　リファブチン　佐々木結花
　1　リファマイシン系抗酸菌治療薬
　2　適応および投与量
　3　投与上の注意および重篤な副作用
　4　RBTの薬物動態
　5　非結核性抗酸菌症におけるRBTの投与
　6　RBT投与の今後
2　非結核性酸菌症とHIV感染症　永井英明
　1　はじめに
　2　M. avium complex（MAC）
　3　症状・検査所見
　4　診断
　5　治療と予防
　6　M. kansasii
　7　その他の非結核性抗酸菌
3　Mycobacterium avium complexの遺伝子研究とその進展　市川和哉　他
　1　はじめに
　2　mycobacterium avium complexの分類
　3　mycobacterium aviumの亜種の分類方法
　4　わが国で臨床分離されるM. aviumの遺伝子的特徴
　5　MACの分子疫学タイピング方法について
　6　VNTR型別解析法の解析能力
　7　VNTR型別解析の応用
　8　M. intracellulareのVNTR型別解析法
　9　MACの薬剤感受性遺伝子について
索引