医療従事者のための産業精神保健
日本精神神経学会 精神保健に関する委員会:編

2011年発行 B5判 168頁
定価(本体価格1,800円+税)
ISBN 9784880027272

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内容の説明▼

「医療従事者のための産業精神保健」刊行にあたり
 1998年度よりわが国の自殺者総数は三万人を突破した状態が続いており,特に中高年男性の自殺者の増加は,深刻な社会問題として受け止められています。この背景には近年のめざましい科学技術の革新,終身雇用制の崩壊,製造業の外注化,分社化,就業形態の多様化,成果主義導入,さらにリストラに伴う早期退職者の増加などがあり,就業者を取り巻くストレスは多様化していることがあげられています。そして2003年6月には第10次労働災害防止計画で過労自殺が労働災害として位置づけられ,2007年4月に公表された「自殺総合対策の在り方検討会報告書─総合的な自殺対策の推進に関する提言─」では,職域に関してメンタルヘルスケア支援策の充実が強調されました。また雇用関係が成立すると必然的義務として生じていた安全配慮義務が,2008年4月に労働契約法の中に明文化されました。これにより事業主は,過重労働による健康障害の具体的な予防を講ずる上で,事業所単位のメンタルヘルス対策をさらに強化する必要が出てくると思われます。現在,業務と精神障害との因果関係を巡る労災訴訟,企業の管理責任が問われる民事訴訟,長期休業者の増加,精神障害者雇用の問題などが社会問題となっており,今後,わが国で解決しなければならない産業精神保健を巡る問題は山積しています。
 このような産業保健を取り巻く社会状況の中で,精神科医が果たす役割は大きく,患者側の立場に立ちつつ,企業側や産業医と連携することが強く求められております。特に職場復帰に関しては,大きな社会的問題となっており,復職のためのリハビリテーションとして職場内外での復職プログラムを実施している医療機関や職場が増えてきてます。そして職場内外で精神科医が復職判断や就業制限等の判断を求められることも多くなってきていますが,カウンセラー(臨床心理士等),保健師,人事労務担当者,上司等の管理職との連携の中でメンタルヘルスケアを実践していく必要があります。このような社会情勢に鑑み多職種に求められている産業精神保健学を盛り込んだ内容を本学会「精神保健に関する委員会」で検討した結果,同委員会編集の「医療従事者のための産業精神保健」を刊行することとなりました。

日本精神神経学会「精神保健に関する委員会」編集
担当  黒木 宣夫
担当理事 中村 純

おもな目次▼

「医療従事者のための産業精神保健」刊行にあたり
Industrial Mental Health for Health Care Professionals

Ⅰ. 情報提供と医療機関との連携
 1. 主治医から職域への連携の仕方~診断書,情報提供書,意見書作成の留意点~
  A. 診断書,情報提供書を作成する場合
  B. 主治医から企業へ意見書を提出する場合
 2. 職域から主治医への連携の仕方~産業医の立場より~
  A. 事業場における4つのケアと主治医連携
  B. 産業医から主治医への働きかけと情報交換
  C. 産業医の立場を誤解されないために
  D. 診断書と診療情報提供書
  E. 産業医が不在の事業場の場合
 3. 医療機関のもつべき就労についての情報
 4. 個人情報を開示する際の留意点

Ⅱ. 産業精神保健活動
 1. 産業精神保健における精神科医の役割
 2. 産業精神保健における産業医の役割
  A. 産業保健における健康管理
  B. 産業医活動と健康管理の対象疾患
  C. 産業医の果たすべき役割
 3. 嘱託産業医の活動と役割
  A. 嘱託産業医活動の特徴
  B. メリットを活かした産業医の役割の特徴
 4. 保健師の活動と役割
  A. 保健師の活動の特徴
  B. 保健師の活動
 5. メンタルヘルス支援活動と心理職(カウンセラー)の役割・機能
  A. 産業保健活動としての企業内カウンセリング
  B. 関係部門との連携
 6. 人事労務の役割
  A. 各職種間の連携について
  B. 職場復帰について
  C. メンタルヘルス対策の総合的取り組みについて

コラム
 1. 社団法人大阪精神科診療所協会における産業メンタルヘルスへの取り組み
  A. 社団法人大阪精神科診療所協会とは
  B. 大精診の産業精神保健への取り組み
  C. 産業医グループ,企業関係者との合同研究会における成果
 2. うつ状態・うつ病の評価
  A. 集団を対象にしたうつ病の評価尺度
  B. 個別的にその経過をみるための評価尺度
 3. うつ病デイケア
  A. うつ病デイケアの試み
  B. うつ病回復のポイント
 4. 難治性うつ病
  A. 難治性うつ病とは
  B. うつ病の回復
  C. 難治性うつ病の類型
 5. 新型うつ病について
  A. 新型うつ病とは
  B. 新型うつ病の原因と治療
 6. 自殺をほのめかしたときの対応
  A. 自殺のサイン
  B. 自殺のサインに気づいた際の職場対応
 7. 教職員を巡る対応
  A. 教職員のメンタルヘルスの現状
  B. 小・中学校および高等学校の教職員のメンタルヘルス不全の特徴
  C. 大学教員および研究職員のメンタルヘルス不全の特徴
  D. 教職員のメンタルヘルスケア
  E. 最後に
 8. 部下に対してのパワーハラスメント
  A. パワーハラスメントとは
  B. パワーハラスメントを取巻く状況
  C. 具体的裁判例とパワーハラスメントの判断指針
  D. 職場や個人の対策
 9. 認知療法・認知行動療法
  A. 認知療法・認知行動療法とは
  B. 認知療法・認知行動療法の実際
  C. おわりに:ウェブを使った認知療法・認知行動療法
 10. EAP活動
  A. EAPとは
  B. EAPの活動内容
  C. EAP選定・活用のポイント
 11. 労働安全衛生法と人事院規則
  A. 産業医と健康管理医との関係について
  B. 両者の具体的な役割

Ⅲ. 職場のメンタルヘルスの現状
 1. 労働者の健康度(精神状態)
  A. 労働者健康状況調査の結果からみた労働者のストレスに関する現状
  B. 職場での立場の違いによる現状
 2. 産業精神保健の動向
  A. 精神保健の略史
  B. 産業精神保健の略史
 3. 労働安全衛生法
  A. 職場の安全衛生に関する法体系
  B. 労働安全衛生法と事業者の責務
  C. 労働安全衛生法と労働者の義務
  D. 労働災害防止計画
 4. メンタルヘルス指針
  A. メンタルヘルス指針とその位置づけ
  B. メンタルヘルス指針の概要
  C. 個人情報保護への配慮
 5. 障害者雇用促進法
  A. 精神障害者の雇用対策強化
  B. 在宅精神障害者に対する支援
  C. 障害者雇用促進施策と障害者福祉施策との連携
 6. 個人情報とプライバシー
  A. 労働者の個人情報の取り扱いに関する規定・指針
  B. 産業保健における健康情報の取り扱い

Ⅳ. メンタルヘルスの実際
 1. 一次予防,二次予防,三次予防
  A. 職場のメンタルヘルス対策の3相と事例性の重視
  B. 一次予防
  C. 二次予防
  D. 三次予防
  E. 教育研修の重要性
 2. 復職支援の基本的な考え方
  A. 病気休業中のケア
  B. 主治医による職場復帰可能の判断
  C. 職場復帰後の支援に関する主治医の意見
  D. 復職後のフォローアップ
 
Ⅴ. 職場復帰支援活動
 1. 医療機関における職場復帰支援
  A. 診療所におけるリワーク活動
  B. 総合病院における復職支援デイケアの実践
  C. 地域障害者職業センターにおける職場復帰支援(リワーク支援)
  D. 精神保健福祉センターにおける職場復帰支援
 2. 事業場の職場復帰支援
  A. 民間の復職支援等
  B. 自治体における職場復帰支援活動

Ⅵ. 具体的な事例と対応
 1. 出社困難,頻回欠勤
  A. 出社困難,頻回欠勤とは
  B. 事例提示
  C. 対応
 2. 勤怠不良問題
  A. 職域の3A
  B. 個人の士気
  C. 性格特性について
  D. アルコール依存症
  E. 抑うつ症候群など
 3. 妄想的言動を有した人に対する精神科医の関わり
  A. 症例
  B. 一期:職場の協力を得て復帰し勤務を継続
  C. 二期:千人規模のリストラ開始,勤務場所の異動,保健師の関与も後退局面に入る
  D. 三期:転職
  E. 四期:人事部門で不適応,顕在発症
  F. 五期:復職デイケアプログラム空振りとなる
 4. 復職困難(休職・復職を繰り返す事例)
  A 事例提示
  B. 対応をめぐって
 5. 適応障害
  A. 事例 45歳のプロジェクトチーム次長,Aさん
  B. 発症要因の検討
  C. 治療
 6. 医療現場でハラスメントが起きる背景と発生時の具体的対応
  A. 事例
  B. 解説
 7. 教職員をめぐる対応 事例
  A. 事例
  B. 考察
 8. 広汎性発達障害と就労支援
  A. 症例提示
 9. 職場での自殺企図発生時の対応
  A. 事例1:自殺をほのめかされた時の対応
  B. 事例2:自殺企図発生時の対応
 10. 労災認定後に損害賠償請求に至った事例~職場復帰後に自殺~
  A. 事例の概要
  B. 本事例のストレス評価
  C. 企業のリスク管理
 11. 自傷と他害行為
  A. 自傷,他害行為について
  B. 自殺企図や自傷行為を認めた場合の現場の対応
  C. 他害行為を認めた場合の現場の対応
 12. 自分は仕事のために精神障害が発症したと強く主張された場合の対応
  A. 事例提示
  B. 対応をめぐって

Ⅶ. 職業性ストレスとその対応
 1. ストレスと職業性ストレス
  A. 「ストレス-脆弱理論」に基づく
  B. NIOSHの職業性ストレスモデルと職業性ストレス
 2. ストレス測定
  A. 指針によるストレス評価―職場における心理的負荷評価表
  B. ライフイベント法―SRRSとストレスフルライフイベントに関する面接
  C. 勤労者のライフイベント得点

Ⅷ. 労働者災害補償保険法と精神障害の労災認定―因果関係の基本的考え方等―
 1. 労働者災害補償保険法と労災認定
  A. 労働者災害補償保険法の目的
  B. 労災認定の要件~因果関係の基本~
 2. 精神障害の労災認定~因果関係の判断~
  A. 業務上外の判断指針の基本的な考え方
 3. 後遺障害の等級認定の判断
  A. 労災保険法による治癒と症状固定
  B. 治療(症状固定)後の後遺障害の等級認定
  C. 非器質性精神障害の後遺障害の等級認定に関して
  D. 適切な精神障害の療養期間と症状固定(労災保険法上の治癒)
  E. <資料>厚生労働省補償課:精神障害等の労災補償状況  2009,5

Ⅸ. メンタルヘルスに必要な企業の法的対応
  A. 企業のメンタルヘルスへの対応の法的義務
  B. 安全配慮義務の履行-企業のメンタルヘルスケアの実施
  C. 従業員本人の精神的脆弱性による過重業務についての安全配慮義務

産業医学用語
編集後記
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