エビデンスからみた森林浴のストレス低減効果と今後の展開
-心身健康科学の視点から-
筒井末春(東邦大学名誉教授):監修
高山範理(森林総合研究所):著

2012年発行 B5判 97頁
定価(本体価格3,500円+税)
ISBN 9784880027364

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内容の説明▼

現代のストレス社会に森林浴の意義は大きくなってきている。リラクセーションとして知られる森林浴について最新の研究成果を含めサイエンティフィックにまとめた学術書。

序文
 人類をはじめ多くの生物は地球の覆う森林に包まれて育まれてきた。2011年は国連の定めた国際森林年であることは余り知られていない。日本の国土の約7割は森林が占めるが、この森林を有効に利用する1つのツールとして森林浴を挙げることができよう。
 森林浴や森林療法は代替医療の1つとしても知られている。
 ITの発達のもたらす24時間社会で、ストレス性健康障害に陥る人々も企業のなかで問題視され、メンタルヘルスの重要性が指摘されている今日、心身のリラックスやリフレッシュに役立つ1つの手段として、森林浴の意義は決して少なくない。
 本書〔エビデンスからみた森林浴のストレス低減効果と今後の展開〕は、森林総合研究所環境計画研究室長である香川隆英先生の編集のもと、同研究室の主任研究員である高山範理博士による森林浴に関する現時点におけるエビデンスに基づいた最新の研究成果を含め、本邦での歴史、経緯、その活用や今後の方向性にも言及した内容で構成され、かつ内外の文献も網羅されていて森林浴に関するタイムリーでかつサイエンティフィックな学術書として位置づけされてよい。
 高山博士は、人間総合科学大学(学長 久住眞理)大学院研究科博士後期課程心身健康科学専攻で博士号を授与されているが、その研究論文のタイトルは「森林浴の森林的効果と個人特性の解明に関する研究─神経症傾向に配慮した癒し効果の高い森林浴プログラムおよび森林環境の提案─」であり、小生はその際に3年間にわたり指導教員として研究をサポートしたこともあって、今回、監修者として名を連ねることになった次第である。
 本書によって、心身両面からの森林浴の効果の科学的実証がさらにすすみ、森林浴に興味を持つ医療従事者や一般読者はもちろんのこと、その関心が深まることで健康科学、心身医学、リハビリの領域においても新たな展開がなされることを願って止まない。

東邦大学名誉教授
人間総合科学大学名誉教授  筒井 末春

おもな目次▼
第Ⅰ部 森林浴のもたらす心理的なストレス低減効果
 第❶章 なぜいま森林浴なのか?
  A 森林浴とは?
  B 社会・経済的な要請
   1.国民医療費の慢性的上昇
   2.高齢者人口の増加
   3.地域の疲弊
   4.税収の長期的下落
  C 森林の管理に係る問題
   1.長期材価の低迷
   2.不足および高齢化する林業従事者
   3.荒廃する山村
   4.森林の多面的機能の発揮とその効能
   5.地域活性化の資源としての森林浴
  D 補完・代替療法としての森林浴
 第❷章 過去のエビデンスからみた森林浴のストレス低減効果
  A 海外の研究成果
  B 国内の研究成果
   1.生理・医学的アプローチによる身体的効果の研究成果
   2.心理的アプローチによる心理的効果の研究成果
   3.残された課題
   4.森林浴と心身相関
 第❸章 オンサイト実験における森林浴のストレス低減効果
  A 調査概要
   1.調査対象者
   2.調査対象地
   3.調査スケジュール
  B 心理的効果の測定
   1.ストレス低減効果(POMS)
   2.森林環境の印象評価(SD法)
   3.森林浴後の感想(感想アンケート)
  C 個人特性の測定
   1.知識・経験(プロフィールアンケート)
   2.性格特性(Neo─FFI;Neo Five Factor Inventory)
   3.自己効力感(GSES;General Self─Efficacy Scale)
   4.価値観・関心(TBS─test;Thompson and Barton Scale─test)
 第❹章 森林浴のストレス低減効果の検証
  A 森林の物理環境要因
  B 調査地の印象評価(森林環境─都市環境)
  C ストレス低減効果(森林環境─都市環境)
   1.歩行活動前後
   2.座観活動前後
  D ストレス低減効果(森林浴前─森林浴後)
   1.歩行活動前後
   2.座観活動前後
  まとめ

第Ⅱ部 心理的ストレス低減効果の個人差
 第❶章 森林環境の印象評価の個人差と個人特性
  A 印象評価と個人特性
  B 調査方法
   1.実験の概要
   2.個人特性についての考え方
  C 分析方法
  D 分析の結果と考察
   1.森林環境の印象評価と個人特性
   2.森林環境の印象評価と性格特性
   3.森林環境の印象評価と自己効力感
   4.森林環境の印象評価と価値観・関心
  まとめ
  第❷章 森林浴のストレス低減効果の個人差と個人特性
  A ストレス低減効果に個人差をもたらす要因とは?
  B 実験の概要
  C 調査方法
   1.個人特性を調べる調査票
   2.森林浴の心理的効果を調べる調査票
  D 分析方法
  E ストレス低減効果と個人特性との関係
   1.ストレス低減効果と知識・経験等
   2.ストレス低減効果と性格特性
   3.ストレス低減効果と自己効力感
   4.ストレス低減効果と価値観・関心
  F ストレス低減効果と森林浴中の活動の関係
   1.ストレス低減効果と歩行活動
   2.ストレス低減効果と座観活動
  まとめ
 第❸章 神経症傾向と森林浴のストレス低減効果との関係
  A 健常者の神経症傾向について
  B 調査・分析方法
   1.実験の概要
   2.調査票
  C 神経症傾向による被験者の分類
   1.被験者の分類方法
   2.被験者の分類結果
  D 分析結果
   1.『神経症傾向』が森林浴以前の気分の状態に与える影響
   2.『神経症傾向』が森林環境の印象評価に与える影響
   3.『神経症傾向』がストレス低減効果に与える影響
   4.『神経症傾向』が森林浴の体験後の感想に与える影響
  E 森林浴前から森林浴後の感想までの関連性
   1.『神経症傾向』と森林環境の印象評価および最終的な感想
   2.『神経症傾向』と森林浴の心理的効果および心身相関の関連性
   3.印象評価・森林浴のストレス低減効果・感想の関連性
  まとめ
 第❹章 個人差に配慮したプログラム・森林環境整備方策の展開
  A より実践的な管理へ
  B 神経症傾向の高い利用者に効果的なプログラムおよび森林環境整備方策
  C 整理方法
  D プログラム
   1.When(いつ)
   2.Where(どこで)
   3.With whom(だれと)
   4.Who(だれを)
   5.What(なにを)
   6.Why(なぜ)
   7.How(どのように)
  E 森林環境整備方策
   1.When(いつ)
   2.Where(どこで)
   3.With whom(だれと)
   4.Who(だれを)
   5.What(なにを)
   6.Why(なぜ)
   7.How(どのように)
  まとめ

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