カルテはこう書け! 目からウロコ「総合プロブレム方式」
内科学研鑽会:編

2013年発行 B5判 80頁
定価(本体価格2,800円+税)
ISBN 9784880027371

その他執筆者など▼
内容の説明▼

主治医として合理的に診療を行うための「総合プロブレム方式」。いったん身に付けるとカルテを書くのもスムーズに! 学生、研修医はもちろん、指導医にも読んでほしい1冊。

序 ~主治医になるための練習~

 あなたの研修に「主治医になるための練習」は含まれていますか? 臨床研修制度や後期研修の中でローテーションしながら様々な症候や疾患に出合うようになりました.エビデンスをよく勉強して,上手な切り口で臨床推論を行う研修の先生はたくさんいます.様々な研修で患者の一部分を切り取りそれに対してアプローチする手法も大変多くなりました.しかし,それだけでは「主治医になるための練習」は不十分です.患者の持つすべての医学的問題を適切に分けること,分けた問題を病態生理に基づいて適切に考えること,分けた問題をまとめて患者の持つ医学的問題全体について考えることができなくてはなりません.
 本書で紹介する「総合プロブレム方式」は,内科医として臓器だけを対象とするのではなく,患者の主治医として機能することを真剣に考え追求する中でうまれてきた診療形式です.残念ながら「主治医の機能」が従来の臓器別診療の中では軽視される傾向がありました.しかし,この「主治医の機能」が医療において重要であると考える人が増え,その流れの中で2年間の臨床研修を必修化する研修制度の改革が行われました.とはいえ,実際には主治医の機能を合理的にはたすための具体的な方法を持たないために困惑している指導医や研修医が多くいます.
 われわれ内科学研鑽会では,主治医の機能をはたすための診療形式として総合プロブレム方式を推奨し,これに基づく診療を実践してきました.診療の形式は実際にはカルテの形式に反映されます.このカルテの形式は,1968年にWeedが提唱したPOS(problem oriented system)を参考にして同じ記号を使いますが,これを改良して主治医機能を重視し,規則のあいまいさをなくしたものです.この形式は,患者の持つ複数の病気を同時に管理できるという点,混沌とした状態から能率的に診断・治療ができるという点,そして患者に関する徹底した情報収集と分析を通して,概念としての「疾患」ではなく,実在する「患者の病気」を深く理解できるという点において,極めて優れた形式です.カルテを総合プロブレム方式に従って書くことで,主治医機能をはたす診療形式を実践できます.
 本書は2つの章で構成されています.第1章では総論として総合プロブレム方式を概説します.続く第2章では10の症例を通して総合プロブレム方式を体験していただきます.それによって総合プロブレム方式の基本を学び,今後自己学習を進め,臨床の場で実践するためのきっかけにしていただきたいと考えています.
 さあ,「主治医になるための練習」をはじめましょう.
 2012年秋
 大友 宣 

おもな目次▼

第1章 総合プロブレム方式による真の診断への道
Ⅰ 主治医になる
 LECTURE01 主治医って何だろう?
 LECTURE02 総合プロブレム方式はどのように行われるか?
Ⅱ プロブレムリストを作る
 LECTURE03 十分な基礎資料を収集しよう!
 LECTURE04 プロブレムリストを作成する意義は?
 LECTURE05 プロブレムリストを作ってみよう!
 LECTURE06 入院時要約(サマリー)を作成しよう!
Ⅲ プロブレムリストを使う
 LECTURE07 経過記録を書いてみよう!
 LECTURE08 プロブレムを展開しよう!
 LECTURE09 暫定番号を使ってみよう!
 LECTURE10 展開を練習してみよう!
 LECTURE11 退院時要約(サマリー)を書いてみよう!
 LECTURE12 外来診療のカルテの書き方は?
 LECTURE13 総合プロブレム方式の特徴と利点は?

第2章 真の診断に至る練習帳
Ⅰ プロブレムリストを作ろう
 CASE01 息切れを主訴に受診した75歳男性 
 CASE02 全身倦怠感,口渇で受診した33歳男性
Ⅱ プロブレムどうしの関係を考えよう
 CASE03 全身性浮腫,息切れで入院した57歳女性
 CASE04 嚥下障害と咳を訴えて来院した81歳女性
Ⅲ プロブレムを展開しよう
 CASE05 膝痛と発熱のため来院した83歳女性
 CASE06 腹部膨満感を主訴に入院した61歳男性
Ⅳ 病態生理で考えよう
 CASE07 高度貧血のため入院した56歳男性
 CASE08 両下肢のしびれのため受診した57歳男性
Ⅴ 診断に近づこう
 CASE09 結腸癌手術前に発熱を生じた84歳男性
 CASE10 四肢浮腫,肩関節痛を主訴に来院した75歳男性

索 引

コラム
 ①診察室より,30余年の経験から-その1
 ②"決める"ということ
 ③いつも手から
 ④臨床で"わかった"と感じるとき
 ⑤過去の資料の解読
 ⑥経管栄養から思ったこと
 ⑦気をつけよう,ノートパソコンとのにらめっこ
 ⑧診察室より,30余年の経験から-その2
 ⑨減塩ってすごい
 ⑩紅茶の範疇
 ⑪原因と結果
 ⑫"いつもどおりにやる"ということ
 ⑬緩和ケア科における総合プロブレム方式の活用