カンペキ・カンファ
実患者の正確な情報と綿密な分析こそ症例検討の心髄!
栗本秀彦:著
2014年発行 B5判 128頁
定価(本体価格3,000円+税)
ISBN9784880027449

その他執筆者など▼
内容の説明▼

本書は、合理的な診療形式「総合プロブレム方式」の創始者である著者による、実症例の教育カンファレンスを難易度別にまとめたものです。紙上で繰り広げられる、曖昧さを許容しない徹底的な質疑は、研修医・指導医ともに必見。入門書『カルテはこう書け!』を読んだ方には、次のステップとしておススメします。

序 ~カンファレンスの意義~

 日常の定例カンファは当然ながら「この患者」診療に寄与することに意味があります.考察はかならず言語をもって順序だてて述べ,実行プランを作成します.カンファで医学的検討をすみやかに始めるためには,呈示は資料・考察・プランが正しい枠組みに整理されていなければなりません.だれしも最初はあいまいな整理(といえない)しかできなくても,日常的に規則正しくカルテを書くように促せば,医学的に誤っているか正しいかということではなく,正しい枠組みで資料・考察・プランを整理できるようになります.
 教育カンファは実診療のさなかから一歩下がったものです.それでも一般論の知識披露や文献紹介,疾患解説ではない「この患者」の検討カンファです.
 実症例教育カンファは1例に2時間ちかくかかります.画像や心電図は実物を読影してもらいます.実際に問診診察に行きますと,呈示された病歴とまるで違う症状の有様や身体所見が見られることも少なくありません.また時には検査室へ下りていって末血骨髄スメアや病理組織標本を一緒に検鏡します.
 カンファは主導者や参加者の知識の誇示であってはなりません.あくまで日常診療のために,患者の事態を原理的に理解して,治療の合理的計画を立てる道程でなければなりません.そうであってこそ同時に臨床医の研鑽に供するものとなり得ます.日常カンファでは1例に2時間もかけようはない.新入院は基礎資料からはじまって時間もかかるが他は経過呈示と検討で簡単におわります.最初に徹底的な検討を済ませているので議論の焦点がはっきりしているからです.その時でも必ずプロブレムリストを述べたうえで,その時点での主要プロブレムについての報告検討をします.はじめにプロブレムを掲げることによって話の焦点が定まるのです.主要以外のプロブレムは省くことも出来ます.
 検査や治療の作業をするだけならともかくとして,少なくとも医師として患者診療するにふさわしい能力を養う努力のありさまとして,教育カンファの実際の呈示(毎回印刷して用意させている)と検討を敢えてここに掲載しました.個々の知識についてではなく,混沌とした実診療の中で思考の論理性と明晰性を求めるサンプルとして,豊かな医学診療を志す指導医や訓練医の方々にご覧いただければ幸甚です.                    
2013年 仲秋
栗本秀彦

おもな目次▼

第1章 総合プロブレム方式 案内
  1 総合プロブレム方式とは
  2 臨床の特性
  3 総合プロブレム方式の特徴

第2章 カンファレンスの規則
 Section01 現行教育カンファレンスの形式
 Section02 カンファレンスでしばしば問題となる事柄
  1 基礎資料の質
  2 思考枠組みの規則違反

第3章 基礎資料 整理と呈示
 【難易度 高尾山】
  Case01 84歳女性 外来症例
  Case02 83歳男性 入院症例
  Case03 77歳女性 入院症例
  Case04 102歳女性 入院症例
  Case05 83歳女性 入院症例
 【難易度 富士山】
  Case06 19歳男性 入院症例
  Case07 81歳女性 外来症例
  Case08 21歳男性 退院時症例
  Case09 80歳男性 入院症例
  Case10 58歳女性 入院症例
 【難易度 エベレスト】
  Case11 39歳女性 入院症例
  Case12 67歳男性 入院症例
  Case13 22歳女性 入院症例
  Case14 69歳男性 CPC症例

第4章 プロブレムリスト 検討と結論
 (第3章と同一症例)

索引 

御負け種々
肝“機能”/プロブレム「不明熱」の熱源 その1/関節炎のterminology/赤血球の品質/好中球/腎不全/定義と診断基準/疾患の範疇/問診=問うて診断すること/診察=身体のマクロ検査/プロブレム「不明熱」の熱源 その2/腹痛の種類/悪寒戦慄/リンパ腺スタンプ標本/カルシウム沈着/記述接頭用語