病院のBCP 災害時の医療継続のために
佐々木 勝(都立広尾病院 院長):著  
2014年発行 B5判 62頁
定価(本体価格1,900円+税)
ISBN9784880027463

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内容の説明▼

病院が災害時にリスクを管理し、医療継続するためのBCP策定テキスト。

序  文
 2014年1月5日付の東京新聞朝刊に,『「首都直下マニュアル」なし』という見出しで,『国内の原発の安全対策を担う原子力規制委員会が,首都直下地震の発生を想定した危機管理マニュアルに当たる事業継続計画(BCP)を発足から1年以上がたった現在も策定していないことが分かった』という記事が載っていた。さらに,『首都直下地震では,政府の中枢機能が停止する事態に備える必要がある。だが,現状では,規制委は地震で自らの機能が失われることを想定できていない』と続いていた。
 2010年4月内閣府防災担当から「地震発生時における地方公共団体の業務継続の手引きとその解説」が出され,各自治体にBCP策定が促され,企業のみではなく,公的な機関もBCP策定に取り組んできたはずである。しかしながら,現状をみる限りでは,自治体だけではなく各方面で,BCP策定には温度差があるように思われる。この原因を怠慢と決めつけてしまうは早計である。BCPを策定する意識は高いけれど,策定の方法論が見つからないというのが本音ではないだろうか。特に病院は企業と異なり,「発災直直後から病院自体も被害を受けたにもかかわらず通常以上の業務負担が強いられることや業務自体が生命を扱うものである」という特殊性がある。
 2011年3月11日に起こった東日本大震災は,直接被害と連鎖的被害,対応の複線化・多重化など新たな課題を提示したのみではない。初動体制に重点をおいた対応から,タイムラインを考慮した実践可能な病院医療業務の継続に重点をおいたBCPの策定を否応なしに我々に突き付けた。広尾病院では院内各部署からの協力を得,2012年3月に都立広尾病院BCP(地震編)を完成させた。本書はその時の経験を源に,新たな知見も加え執筆したものである。BCPの策定の一助となれば幸いである。

2014年2月
佐々木 勝

おもな目次▼

BCPとは
何故BCPは災害対応に用いられるのか
病院のBCPの特徴
BCP策定過程
BCPの訓練
訓練研修スケジュール実例,BCPからBCMへ
 A. テーマと基礎知識
 B. プロファイリング
  1. 二次元展開法,多次元展開法
  2. BIA(business impact analysis)
  3. Surge Capacity
  4. 初動体制とBCP
  5. 被害想定
  6. 検証とトレーニング,特にコンフリクトゲーム
  7. 資源不足下のトリアージへの意識改革
  8. まとめ
  9. 参考文献
  10. 索  引