スーパー★ジェネラリストに必要なモダン・カンポウ 
クリニカル・パール集&総合医の実体験
樫尾明彦(家庭医療専門医)・新見正則(カンポウ・マイスター):著者  
2014年発行 B5判 136頁
定価(本体価格3,300円+税)
ISBN9784880027494

その他執筆者など▼
内容の説明▼

漢方を使ってみたいけれど、どこから学んでどう処方すればいいか、いまいち自信が持てない→→そんな悩みにお答えします!
危険な疾患は否定できても、患者さんの症状が残っている場合など、どんな相談にも臆せずのれるスーパー★ジェネラリストをめざそう!

推薦の序―漢方のパラダイムとジェネラリスト―
 地域基盤型プライマリケア担当ジェネラリスト,すなわち家庭医としての診療の対象は,近年そのレンジが拡大してきている.特に高齢社会を背景にして,在宅ケアを初めとして,複雑で困難な事例に対応することが求められつつある.従来の軽症の急性感染症と安定した慢性疾患の管理といった外来診療のイメージが変容してきている.また,患者中心の医療という,患者と医師が共通基盤の形成を目指して,コミュニケーションを構築しながら診療を進めていくというスタイルが重視される.
 従来医師は,患者の症状を主訴に変換し,必要な身体診察や検査,画像診断を行い,医学的診断を下し,臨床研究にもとづく推奨エビデンスを踏まえた,治療計画をたてるという教育を受ける.しかしながらプライマリケアの現場においては,医学的診断が下せる症状や苦痛はそれほど多くはない(Journal of Family Practice, 1996, 42.2:161―170.).たとえば,疲労感,食思不振,浮遊感などの症状に対応する機会は多いが,実際の診療では,生命に危険な疾患,積極治療が効を奏するであろう疾患を除外することが重要とされ,そうでなければ「大した問題ではない」となりがちである.一期一会の救急外来ならまだしも,困ったことがあったら,最初に相談できるという「かかりつけ」機能をもった家庭医ならば,それで「危険な病気はありませんから,様子をみてください」だけでない,なんらかの対応が必要な場合も多い.
 私が漢方に興味をもったのは,そのあたりの診療ストラテジーにきわめて有用な診療パラダイムを提供しているからである.特に症候論が直接治療に結びつくところが,従来の西洋医学的対症療法とは相当異なる.しかし病因論という直線的な因果関係に基づく西洋医学の考え方とはかなり異なるため,従来の医学教育では重視されてこなかったがゆえに,多くの医師は漢方の考えにとっつきにくさを感じているものである.直感的には,漢方の効能の研究には機械論ではなく,複雑性科学,特に複雑適応系のモデルが有用かもしれない.
 このことはジェネラリストの役割として重要な高齢者診療にも様々な示唆を与える.たとえば,誤嚥に対する半夏厚朴湯,虚弱高齢者に対する補中益気湯,BPSDに対する抑肝散,食思不振に対する六君子湯などは,すでに幅広く使用されつつあるが,これらの問題が,「生物医学的診断により問題を解決する」というパラダイムでは対応できない地域におけるCommonな健康問題だからである.
 漢方には深い源流があり,その膨大な知識経験体系は,そうそう簡単に習得できるものではない.しかし,ジェネラリストはある意味,役に立ちそうなものは,積極的にとりいれるという現実的かつ実践的な姿勢を持っているものである.そういう観点からこの書籍で提案されている2人の漢方の専門家によるモダン・カンポウという,実践的患者アプローチの提案はわれわれ漢方「素人」にとっては,心強い武器となりうるだろう.
医療福祉生協連家庭医療学開発センター 藤沼 康樹

はじめに
 僕が医者になった当時は,超音波検査はごく一部の先生方が熱心に行っていました.特別な技のような領域でした.機会あるごとに超音波検査を華麗に,芸術的に行う先生について,技を盗もうとしました.必死に努力したのです.その当時の超音波に秀でた先生はたぶん超音波学会などに属しているごく一部の先生方でした.
 時代は進みました.超音波検査は器械の進歩もあり,瞬く間に普及しました.解像度が上がり,小型になりました.僕が超音波機器を利用したPTCD(経皮的胆道ドレナージ)を行うようになりました.胆嚢の検査も,乳腺の検査も,甲状腺も,血管の検査も,そして心臓の検査も超音波を利用して自分で行うようになりました.
 僕は漢方も超音波のように普及してもらいたいと願っています.ごく一部の先生方だけのものではないのです.少なくとも保険適用漢方エキス剤は臨床医が普段の診療の一部にすべきです.
 超音波検査の専門家は,僕たち一般臨床医の超音波検査ではよくわからないような状態のときに,本当の出番があります.だからこその超音波の専門家です.
 漢方の専門家も同じで,僕たち一般臨床医が保険適用漢方エキス剤での対処では治らないときにこそ,真価が発揮されます.一般臨床医は西洋医学的治療で困っている患者さんにどんどんと保険適用漢方エキス剤を処方してみる.そして治らないとき,さらに患者が漢方の処方を希望するときに漢方専門医に依頼すればいいのです.彼らは,煎じ薬などを駆使して治療してくれます.
 漢方の良さを多くの一般臨床医が認めないと,近い将来漢方は保険適用から外され兼ねないと危惧しています.患者とのコミュニケーションツールとしては,これほど素晴らしい道具はありません.是非,保険適用漢方エキス剤の魅力にはまって下さい.
 総合診療医の先生方こそが,これからの漢方の命運を握っていると思っています.そして期待しています.
新見 正則

おもな目次▼

推薦の序
はじめに

ジェネ★モダ漢方 クリニカル・パール集  新見正則
 パール1 ジェネラリストには漢方は必須
 パール2 まずプラセボと思って
 パール3 漢方は食事の延長
 パール4 漢方は悩めば飲む
 パール5 因果ではなく,相関を求めて
 パール6 保険適用だから意味がある
 パール7 経験こそが上達の近道
 パール8 患者の希望優先で
 パール9 ラムネよりは香蘇散(70)
 パール10 慢性疾患にはなんでも柴胡桂枝湯(10)
 パール11 訪問診療には真武湯(30)
 パール12 疲れには補中益気湯(41)
 パール13 うつ病もどきには加味帰脾湯(137)
 パール14 食欲不振には六君子湯(43)
 パール15 子どもには五苓散(17)
 パール16 女性には当帰芍薬散(23)
 パール17 更年期障害もどきには加味逍遙散(24)
 パール18 僕の漢方 大柴胡湯(8)+桂枝茯苓丸(25)
 パール19 漢方診療もパールの1つ
 パール20 古典もパールになる
 パール21 是非 漢方の臨床研究を

症候別 ジェネ★モダ漢方  樫尾明彦
 1 冷え症
 2 上気道炎症状
 3 アレルギー性鼻炎/副鼻腔炎
 4 疲れやすい・だるい
 5 かゆみ・発疹
 6 むくみ
 7 食欲不振
 8 月経や妊娠に伴う症状
 9 頭痛・頭が重い
 10 目が回る・ふらふらする
 11 腹痛・腹が張る・下痢・便秘
 12 尿が近い・出にくい
 13 腰痛
    おまけ★K先生との出会い
 14 足のしびれ
 15 うつ・不安
 16 夏ばて
 17 術後の回復
 18 気管支喘息・COPD
 19 ピンポイントで処方できる
 20 高齢者
 21 小児
 22 訪問診療
 23 緩和ケア・終末期
 24 番外編・自分で飲もう

総合医の実体験 ジェネ★モダ漢方  樫尾明彦
 1 漢方との出会い
 2 プライマリケアとの親和性
 3 ジェネ★モダ漢方の勉強法
 4 ジェネ★モダ漢方の意義
 5 患者さんへの説明
 6 患者さんからの質問
 7 同療からの質問
 8 家庭医とは?
 9 家庭医のコアコンピテンシー

おわりに
参考文献
索引