統合失調症に合併する肥満・糖尿病の予防ガイド

 日本精神神経学会 日本糖尿病学会 日本肥満学会:監修
 「統合失調症に合併する肥満・糖尿病の予防ガイド」作成委員会:編

2020年発行 B5判 78頁
定価(本体価格2,700円+税)
9784880027906

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内容の説明

一般精神科医、メディカルスタッフ必携!本書は統合失調症の診療を複雑化する合併した身体疾患、肥満・糖尿病予防に焦点をあてた、日本精神神経学会・日本糖尿病学会・日本肥満学会の3学会が合同で監修したファーストガイドである。統合失調症の身体的予後を改善し、心身ともにバランスの取れた快復を目指す1冊。

 精神障害をかかえる方のリカバリーを考えるうえで,身体的な健康が維持されることは不可欠な要素のひとつである.精神科領域では,各関連学会において,統合失調症やうつ病・双極性障害などの治療ガイドラインが活発に作成されているが,合併した身体疾患に関して他領域の学会と共同で作成されたガイドラインはこれまで存在しなかった.日本精神神経学会では,ガイドライン検討委員会における課題のひとつとして,「向精神薬服用中の精神障害者の肥満・糖尿病予防のためのガイドライン」作成を目指し,日本糖尿病学会,日本肥満学会に協力を依頼したところ快諾が得られ,3学会合同の委員会が結成されるに至った.
 日本糖尿病学会では,エビデンスに基づく合理的かつ効率的で均質な糖尿病の診療の推進を目的に「診療ガイドライン」を3年ごとに,糖尿病専門医のみならず,一般内科医やメディカルスタッフ向けの「治療ガイド」を2年ごとに,患者さんとその家族向けの「治療の手びき」を3年ごとに作成している.日本肥満学会でも,一般医・メディカルスタッフ向けの「診療ガイドライン」を作成している.一方,今回の課題に関しては,国内外のエビデンスがかなり少ない現状を鑑み,わが国のエビデンスをできるだけ中心にして,海外の文献も参考にしながら,「統合失調症に合併する肥満・糖尿病の予防ガイド」として,一般精神科医やメディカルスタッフ向けにまとめることとなった.肥満・糖尿病予防の一般論的記載は,上記2学会の診療ガイドラインや治療ガイドを積極的に引用しているa~c).しかし,利用できる精神科関連のエビデンスが限られ,エキスパート・コンセンサスの域を出ないものも多いことから,通常のガイドラインで記載されているエビデンスレベルや推奨グレードの表示は今回あえて行わなかった.不十分な形であっても,いったん現状をまとめることによって,将来補っていくべきエビデンス領域を明らかにし,今後の研究の方向性の示唆が得られると考えている.
 したがって,本ガイドはまだ完全なものではない.ここに示された掲載内容は絶対的・永久的なものではなく,医学の進展によって将来変わりうる流動的なものであり,ひとつの目安と考えていただきたい.さらに,本ガイドは法的な規範になるものではない.
 本ガイドは,今後も新たなエビデンスや情報を受けてアップデートを計画している.また,精神科医やメディカルスタッフ向けのガイドだけでなく,当事者やその家族向けのガイド作成についても今後,検討したい.当事者のみならず,統合失調症にかかわるすべての人にとって,本ガイドが統合失調症の身体的予後を改善し,心身ともにバランスの取れたリカバリーを目指していくことの一助になれば幸いである.

2020年4月

「統合失調症に合併する肥満・糖尿病の予防ガイド」作成委員会

主要文献
a) 日本糖尿病学会 編・著:糖尿病診療ガイドライン 2019. 南光堂, 東京, 2019
b) 日本糖尿病学会 編・著:糖尿病治療ガイド 2018−2019. 文光堂, 東京, 2018
c) 日本肥満学会編:肥満症診療ガイドライン 2016. ライフサイエンス出版, 東京, 2016

おもな目次

第1章 はじめに
CQ 1―1 なぜ肥満や糖尿病を予防するのか?
CQ 1―2 患者の身体疾患治療を行ううえで配慮しなければならないことは何か?

第2章 肥満
CQ 2―1 肥満とは何か?
CQ 2―2 肥満になると,何が問題なのか?(肥満症を含む)
CQ 2―3 統合失調症における肥満合併の割合はどれくらいか?
CQ 2―4 肥満と抗精神病薬服用には関係があるか?(多剤併用によるリスク含め)
CQ 2―5 肥満に対する治療は?
CQ 2―6 肥満の予防は可能か?
Supplement 1 肥満やメタボリックシンドローム以外に問題となる栄養問題は何か?(低体重に対する対策を含む)

第3章 メタボリックシンドローム
CQ 3―1 メタボリックシンドロームとは?(高血圧,脂質異常,高血糖)
CQ 3―2 メタボリックシンドロームになると,何が問題なのか?
CQ 3―3 統合失調症にはメタボリックシンドローム合併が多いのか?(男女差,外来・入院差を含め)
CQ 3―4 抗精神病薬はメタボリックシンドローム合併に関係するのか?(多剤併用によるリスク含め)
CQ 3―5 メタボリックシンドロームを予防するために,生活上注意したほうが良いことは?
CQ 3―6 メタボリックシンドロームを予防するために,どのようなモニタリング法があるか?
CQ 3―7 メタボリックシンドロームを合併したら,どのような対応が望ましいか?

第4章 糖尿病
CQ 4―1 糖尿病はどんな病気か?
CQ 4―2 糖尿病の症状は?
CQ 4―3 糖尿病の診断は?
CQ 4―4 糖尿病と診断された場合,どんな注意が必要か?(糖尿病の合併症を含め)
Supplement 2 高血糖を診たらどうするか?
CQ 4―5 糖尿病を予防するために,どのようなモニタリング法があるか?(治療開始時,頻度などを含む)
CQ 4―6 糖尿病を予防するために,生活上注意したほうが良いことは?(喫煙,アルコール,食事,運動を含む)
Supplement 3 糖尿病予防のための具体的な生活習慣の改善方法とは?
CQ 4―7 統合失調症には糖尿病合併が多いのか?(リスク要因を含め)
CQ 4―8 糖尿病合併と抗精神病薬服用には関係があるか?(多剤併用によるリスクを含め)
CQ 4―9 血糖値が悪化してきた場合の内科受診のタイミングは?
CQ 4―10 糖尿病治療薬服用時に気をつけることは?(副作用を含む)

第5章 診療連携
CQ 5―1 肥満や糖尿病を合併した統合失調症患者の内科医・肥満症専門医・糖尿病専門医への紹介状記載のポイントは?
CQ 5―2 内科医から見て精神科医が知ることが望ましい内科治療のポイントは?
CQ 5―3 精神科医から内科医に伝えることが望ましい統合失調症における治療上の注意点は?
CQ 5―4 一般診療科と精神科のスムーズな診療連携を図るポイントは?

◆ 精神科医が知っておくことが望ましい内科的知識に関する項目
索引