伊藤病院×相良病院 甲状腺疾患と乳がんのケア

伊藤公一(伊藤病院 院長):監修
相良吉昭(相良病院 理事長、さがら病院宮崎 理事長):監修
石澤 緑(伊藤病院看護部 部長):編著
江口惠子(相良病院看護部 顧問):編著

2022年発行 B5判 174頁
定価(本体価格4,200円+税)消費税10%込(4,620円)
ISBN 9784880027982

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内容の説明

専門病院の看護をより多くの看護職の方に伝えたい。熱い思いとともに専門病院ならではの、実践的な看護のコツについて、大切なポイントを解説。

甲状腺疾患専門の伊藤病院、乳がん専門の相良病院、2つの専門病院から集結された看護ノウハウや神髄が凝縮された1冊です。臨床経験の豊富な看護師たちが経験から得たポイントやコツを解説します。臨床の現場でよく遭遇する事例も掲載し、実践にすぐ生かせる内容です。スペシャリティーによる看護参考書の決定版!女性医療に携わる方はもちろん、すべての看護職の方に読んで欲しい。

● 刊行によせて

専門病院同志で看護の教科書を創りました
 伊藤病院と相良病院は自他ともに認める専門病院ですが,その生い立ち,理念は酷似しています.
 それぞれの地で甲状腺疾患と乳がんの専門診療に特化するという創業者が抱いた目標そのものを具現化させたことが,小生と相良理事長の3代目としてのプライドです.
 両院ともに以下の3つの使命を持って行動しております.
 1つ目は「甲状腺専門病院である」,「乳がん専門病院である」ことです.よって守備範囲と適正規模をわきまえております.そして,いずれの時代も自身の専門領域にかかわるすべての検査・治療を,最先端の手法を持って自己完結できるよう,環境整備を整えてまいります.
 2つ目は「民間病院である強みを活かす」ことです.無論,社会保障のルールには準じますが,患者様と私どもの目標・利益は一致しております.そこで私的病院の自由度を持って,独自のアイデアで柔軟に環境設備を図っております.
 3つ目は「学術的研鑽を積む」ことです.両院から学会や医学論文で発信する学術情報は,世界中の同業者から評価を受けております.それらの学問的な取り組みは医師に限らず,看護師,臨床検査技師,放射線技師,薬剤師,管理栄養士,事務職にまで及び,研究成果を全員で日々の仕事に活かしております.
 以上のミッションの中,伊藤病院と相良病院は兄弟として邁進してまいりました.
 そして,この度,双方で専門看護に務める現役の看護職が総力を挙げて実践的な教科書を作成しました.
 巷に総説的な看護関連書籍は数限りなく存在しますが,このような単独施設による専門看護を網羅した書物は存在しないものと自負しております.
 甲状腺疾患・乳がん患者の看護に従事する方,めざす方のみならず,女性医療や看護全般に役立つ実践書として編集したつもりでございます.
 読者の皆様の日常看護に是非とも,お役立てください.

伊藤病院 院長
伊藤 公一

● おわりに

患者の人生に寄り添う
 伊藤公一先生の魅力と僕が先生を好きな訳.例えば物腰の柔らかい話し方,ワインと葉巻が似合うお洒落な日常,何事にもこだわり続ける姿勢.例えばお会いする時にはいつも僕より一足早く到着していて,子どものような笑顔で迎えてくれること.そして専門病院で存在し続ける誇りについて,僕の心に熱く語りかけてくれること.書ききれないほどたくさんあるんです.
 「専門病院同志で看護の教科書を創ろう!」と伊藤先生よりお電話をいただき,兄弟病院として認めていただいていることがわかりました.そして一緒にいる幸せな時間の中で,「お互いが大切にしていることが一致している」と再認識でき,とても嬉しく思いました.
 伊藤病院と相良病院が共に大切にしていること.それは「患者の人生に寄り添う」という理念です.
 言い換えれば,科学的根拠に基づいた検査や治療を患者に提示するならば,それに付随する出来事に寄り添う看護を提供する必要があるということ.一方,十分に育成されたスタッフと適切な環境整備や患者支援プログラムが存在しない状況下での検査や治療の提示は,時に精神的・肉体的な苦痛を患者に与えてしまうということ.
 伊藤病院と相良病院の共通点として挙げられるのは圧倒的に高い医療の質とマーケットシェア率を持つことであり,そのことが両病院の強みのように見られがちです.しかし,実は「患者の人生に寄り添う」看護を行っていることが両病院の強みであり,特徴と僕は考えています.
 伊藤公一先生にお声がけしていただき,患者さんの人生に寄り添う看護を実践している両病院の現場スタッフによって,病態から治療,そして患者と向き合う時間から生まれた看護の在り方を執筆しました.人口減やコロナ禍後の世界情勢と医療を取り巻く環境は非常に厳しいのが現状であり,診療以外の「経営的には非効率的である,患者の人生に寄り添う部分」が診療現場で行うことが難しい時代になりつつあります.そんな中でも我々が専門性を追求しながら未来の病院のあるべき姿に夢を描けているのは,「患者の人生に寄り添う」看護を行っているからと,本書でわかっていただければ幸いです.
 このような機会を与えてくださりました伊藤公一先生と新興医学出版社の方々に感謝申し上げます.そして伊藤病院と相良病院の執筆を担当してくれた現場スタッフの皆様,本当にお疲れ様.日常診療が終わった後の執筆業務をありがとうございました.本書が医療現場において誰かに,何かに寄り添える一冊となることを願って.

相良病院 理事長
さがら病院宮崎 理事長
相良 吉昭

おもな目次

●刊行に寄せて 専門病院同志で看護の教科書を創りました 伊藤 公一  3

Ⅰ 甲状腺疾患看護  11
 はじめに 専門病院の知識をより多くの看護職へ 石澤  緑  12

第1章 甲状腺機能性疾患の理解と看護ケア
 1 甲状腺とは 石澤  緑  13
  1.甲状腺の機能
  2.甲状腺機能性異常の原因
 2 甲状腺機能低下症~橋本病を中心に~ 池田 幸子  15
  1.どんな疾患か
  2.病態生理
  3.検査と診断
  4.治療と看護
 3 甲状腺機能亢進症~バセドウ病を中心に~ 藤本 枝里  18
  1.どんな疾患か
  2.病態生理
  3.検査と診断
  4.治療
  5.看護
 4 その他の甲状腺機能亢進を呈する疾患 池﨑  彩  25
  1.機能性甲状腺結節
  2.無痛性甲状腺炎(painless thyroiditis:PT)
  3.亜急性甲状腺炎(subacute thyroiditis:SAT)
 5 副甲状腺機能亢進症(hyperparathyroidism:HPT) 天野ますみ  27
  1.どんな疾患か
  2.治療と看護

第2章 甲状腺腫瘍性疾患の理解と看護ケア
 1 甲状腺腫瘍の分類 藤原 智恵  29
  1.甲状腺腫瘍分類と伊藤病院における組織別頻度
  2.甲状腺結節の診断・治療アルゴリズム
 2 甲状腺良性結節 藤原 智恵  31
  1.どんな疾患か
  2.治療と看護
 3 甲状腺悪性腫瘍 大島 由美  33
  1.乳頭がん
  2.濾胞がん
  3.髄様がん
  4.低分化がん
  5.未分化がん
 4 甲状腺リンパ腫 二階堂名奈  40
  1.どんな疾患か
  2.病態生理
  3.検査・診断
  4.治療
  5.看護

第3章 甲状腺疾患治療に伴う看護ケア
 1 意思決定支援 天沼 紗織  43
  1.医療相談室の役割
  2.治療選択への意思決定支援
  3.人生の最終段階への意思決定支援
 2 甲状腺疾患を持つ小児患者の看護 大野さゆり  45
  1.発達段階に応じたケア
  2.家族への支援
  3.伊藤病院の取り組み
 3 薬物療法に伴うケア 阿部 佳代  47
  1.甲状腺ホルモン薬
  2.抗甲状腺薬(anti thyroid drug:ATD)と無機ヨウ素
 4 手術療法に伴うケア
  1.術前看護 岩井 里子  50
  2.術中看護 髙橋 裕子  52
  3.術後看護 岡部 紗香  54
  4.退院後の生活に向けたケア 駒林 昌代  60
 5 放射線療法に伴うケア 西塚永美乃  62
  1.131 I内用療法(非密封小線源治療)
  2.放射線外照射
 6 化学療法に伴うケア 後藤  希  73
  1.がんと化学療法の適応
  2.意思決定支援
  3.治療と看護
  4.治療期を支える支援体制
 7 甲状腺疾患患者への生活支援 鈴木 絹子  80
  1.社会資源の活用
  2.就労支援
  3.甲状腺疾患と妊娠

Ⅱ 乳がん看護  83
 はじめに  心に寄り添い,その人らしく生きることを支えるために 江口 惠子  84

第1章 乳がん専門病院として大切にしているケア
 1 継続的な意思決定支援 江口 惠子  85
  1.揺れる気持ちや不確かさに寄り添う
  2.乳がん患者の診療過程と継続的な意思決定支援
 2 ケアリング 江口 惠子  89
  1.日常ケアにおける「気遣い」「呼応」
  2.病いに向き合う患者の語りを聴く
 3 チームアプローチ 江口 惠子  91
  1.キャンサーボードでの看護師の役割
  2.倫理的課題に対する日常的な取り組み
 4 家族等のケア
  1.乳がん患者の家族等の抱える課題とケア 有島みつる  95
  2.親ががんの子どものケア 江口 惠子  96
 5 アドバンス・ケア・プランニング(ACP) 江口 惠子  99
  1.乳がん治療の特徴とACP,当院の方針
  2.質問紙を活用したACPの実践

第2章 診断治療過程に伴うケア
 1 乳がんの病態と診療過程 戸畑 利香  104
 2 診断時からの緩和ケア 有島みつる  106
  1.乳がん患者における診断時からの緩和ケア
  2.生活のしやすさに関する質問票の活用
 3 高齢者のがん治療とケア 加藤 詩子  108
  1.高齢者機能評価を活用したケア
 4 乳がん初期治療に伴う看護
  1.診断に伴うケア 戸畑 利香  110
  2.診断後の治療の決定に伴うケア(看護相談等) 加藤 詩子  111
  3.主な治療に伴うケアのポイント
   ①手術療法 深江 亜衣  114
   ②薬物療法(化学療法・内分泌療法・分子標的薬)  小峰 歩美  115
   ③放射線療法 坂口由紀子  118
 5 進行・再発乳がんの治療に伴う看護
  1.進行・再発乳がんの治療の目標とケア 江口 惠子  121
  2.痛みのマネジメント 有島みつる  121
  3.がん性皮膚潰瘍へのケア 松山 智子  122
  4.薬物療法に伴う有害事象対応 小峰 歩美  125
  5.免疫療法 小峰 歩美  127
  6.緩和的放射線治療に伴うケア 坂口由紀子  127
 6 終末期の看護
  1.療養場所の選択と地域連携 橋口由紀子  129
  2.終末期の家族ケア 有島みつる  130
  3.臨死期・死別後のケア 橋口由紀子  133

第3章 サバイバーシップケア
 1 サバイバーシップケアの考え方 江口 惠子  134
  1.がんサバイバーシップについての基本的な考え方
  2.相良病院におけるサバイバーシップケア
 2 ボディイメージの変容に伴うケア・アピアランスケア
  1.ケアの基本的な考え方 平松 明子  135
  2.手術に伴うケア 平松 明子  136
  3.乳房再建に伴うケア 深江 亜衣  139
  4.薬物療法に伴うケア 小峰 歩美  140
 3 セクシュアリティに対するケア 平松 明子  142
  1.セクシュアリティへの支援について
  2.乳がん治療が及ぼす性への影響について
  3.セクシュアリティへのサポートにおける看護の役割
  4.相良病院におけるセクシュアリティへの対応
 4 妊孕性に対するケア 平松 明子  144
  1.がん治療による生殖機能障害と妊孕性温存治療
  2.乳がんの診療過程における妊孕性温存へのケア
  3.相良病院における妊孕性温存への対応と看護の役割
 5 仕事と治療の両立支援 戸畑 利香  146
  1.がん患者への就労支援
  2.乳がん患者への就労支援
  3.相良病院における両立支援の取り組み
 6 治療に伴うリンパ浮腫の予防とケア 川本  薫  148
  1.リンパ浮腫が生じる背景
  2.乳がん診療ケアにおけるリンパ浮腫治療・ケアの考え方
  3.私たちが行っている看護
 7 セルフマネジメント能力の向上
  1.学習を支援し,サポート体制を継続するケア 松枝 文子  150
  2.体験者間の語りを促進し生きる力を高めるケア 江口 惠子  153

第4章 専門病院としての取り組みと看護の役割
 1 遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC)への取り組みと看護 深江 亜衣  154
  1.はじめに
  2.相良病院の取り組み
  3.相良病院における看護師の役割
 2 がんゲノム医療への取り組みと看護 深江 亜衣  156
  1.がんゲノム医療
  2.乳がんの診療過程におけるがんゲノム医療
  3.相良病院におけるがんゲノム医療
  4.がんゲノム医療外来における看護師の役割
 3 臨床試験・治験に参加する患者へのケア 西  光代  159
  1.臨床試験・治験を受ける患者支援の基本事項
  2.相良病院での臨床試験・治験を受ける患者へのケア
 4 特定領域がん診療連携拠点病院としての役割と看護 江口 惠子  161
  1.地域における役割
  2.専門病院としてのケアの質向上

CASE
 橋本病と診断された患者 湯澤 陽子  17
 心不全を併発したバセドウ病患者 石橋奈穂美  22
 四肢麻痺症状が出現したバセドウ病患者 畑 ゆかり  24
 在宅療養を希望された未分化がん患者 伊藤由希子  37
 急性増悪をきたした甲状腺リンパ腫患者 岩﨑 倫子  42
 抗甲状腺薬により無顆粒球症が出現した患者 永田 京子  49
 術後出血により再手術となった患者 岡部 紗香  59
 131 I内用療法により消化器症状の訴えがあった甲状腺機能亢進症患者 西塚永美乃  65
 唾液腺障害をきたした131 I内用療法患者 西塚永美乃  66
 甲状腺未分化がん根治術後に化学放射線療法を行った患者 西塚永美乃  70
 化学療法を受ける甲状腺未分化がん患者 後藤  希  78
 レンバチニブ治療により手足症候群をきたした乳頭がん患者 後藤  希  79
 乳がん患者への意思決定支援 江口 惠子  88
 高齢者の意思決定支援についての倫理的検討 江口 惠子  94
 母親のがん治療とともに成長した姉弟への支援 江口 惠子  98
 質問紙を通して夫とじっくり向き合えた進行乳がん患者のACP 江口 惠子  103
 看護相談を通じた患者ケア 加藤 詩子  113
 若年性乳がん患者の夫と幼児 有島みつる  132
 治療選択に揺らぐ患者 平松 明子  138
 HBOCの可能性が高い若年性乳がん患者 深江 亜衣  158

COLUMN
 穿刺吸引細胞診検査 藤原 智恵  32
 甲状腺手術後の気管切開(気管皮膚瘻) 伊藤由希子  38
 病院と地域をつなぐ退院調整の実際 新宅はつみ  39
 放射線被ばく防護のポイント 西塚永美乃  69
 ヨウ素摂取制限 西塚永美乃  71
 甲状腺眼症への放射線治療 西塚永美乃  72

□文献  163
 Ⅰ甲状腺疾患看護  163  Ⅱ乳がん看護  165
□INDEX  169

●おわりに 患者の人生に寄り添う 相良 吉昭  172