てんかんの薬物療法 新たな治療薬の導入後
兼子 直(弘前大学大学院医学研究科神経精神医学講座教授):編著

2010年発行 A5判 156頁
定価(本体価格3,000円+税)
ISBN 9784880028163

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内容の説明▼

序 文
 本邦には新しい抗てんかん薬がしばらくの間導入されず,医師は従来の薬剤で工夫しながら治療してきた。てんかんの薬物治療においては,作用機序の異なる新たな薬剤を併用することで,これまでの薬剤では発作抑制が困難な症例にも対応できる場合があることが知られている。もちろん,薬物療法だけがてんかんの治療手段ではなく,手術療法,ホルモン療法,食餌療法,迷走神経刺激療法など,いくつもの治療手段がある。しかし,現在でも治療の主流は薬物療法に変わりはない。
 最近の4年間に新しい抗てんかん薬,ガバペンチン,トピラマート,ラモトリギンが次々と導入され,レベチラセタムも使用可能な時代になった。これで使用可能な薬剤については先進諸国との格差はかなり縮小したものと考えられる。既にガバペンチン,トピラマート,ラモトリギンは臨床で幅広く用いられ,種々の側面で治療効果を上げており,文献では読み取れなかった事柄が臨床からフィードバックされ,薬剤の特性に関わる知識が集積しつつある。一方,多忙な治療者自らが文献を集め,読み解き,臨床に反映させるには時間がかかり,現実的ではない。そこで,本書はこれまでに蓄積されている知識を集約し,臨床に必要な薬剤の特徴,例えば,標的症状,副作用,使用上の留意点などをコンパクトにまとめようと試みた。本書では既に十分な使用経験のあるゾニサミドに,新薬のガバペンチン,トピラマート,ラモトリギン,レベチラセタムを含めた5剤を取り上げ,そのてんかん治療における意義,作用機序,臨床薬理学的側面からみた新薬の特徴,抗てんかん薬療法の限界と併用による効果,新たな抗てんかん薬の使い方のポイントを各著者に論じて頂いた。各章は図表を多く使用することでコンパクトにし,短時間に各薬剤の要点を理解出来るよう,配慮されている。また,本書では各章毎に厳選した文献を引用してあり,より詳細な内容を必要とする読者の要望にも答えることが出来る。新薬の大きな特徴は発作抑制効果だけではなく,従来の抗てんかん薬に比較し,副作用が少なく,かつ,向精神作用を有する薬剤が含まれていることであり,これらの新薬登場により患者のQOLにもこれまで以上に配慮出来るようになった。本書はてんかん診療に携わる医師向けに書かれたが,薬剤師,臨床薬理学や基礎薬理学分野へ興味をお持ちの方々,看護系の方々,学校関係の方々にも容易に理解できるように配慮されている。4種類の新薬が導入されたこの時期に,新しいすべての抗てんかん薬をコンパクトにまとめた最初の本書がてんかん治療,抗てんかん薬に関心のある各分野の方々に少しでもお役に立てれば,著者一同望外の喜びである。また,本書の将来の改訂のためにも,読者諸兄から内容に関するコメント,ご批判を頂ければ大変幸甚である。

 平成22年10月吉日
 弘前大学大学院神経精神医学講座
 兼子 直

おもな目次▼
序文
第1章 新薬の作用機序
 A ゾニサミド(zonisamide:ZNS)
  1. ZNSの抗けいれん作用・モデル動物に対する効果
  2. ZNSの作用機序
 B ガバペンチン(gabapentin:GBP)
  1. GBPの抗けいれん作用・モデル動物に対する効果
  2. GBPの作用機序
 C トピラマート(topiramate:TPM)
  1. TPMの抗けいれん作用・モデル動物に対する効果
  2. TPMの作用機序
 D ラモトリギン(lamotrigine:LTG)
  1. LTGの抗けいれん作用・モデル動物に対する効果
  2. LTGの作用機序
 E レベチラセタム(levetiracetam:LEV)
  1. LEVの抗けいれん作用・モデル動物に対する効果
  2. LEVの作用機序
第2章 臨床薬理学的側面からみた新薬の特徴
 A 新薬の薬物動態学的特徴
  1. ガバペンチン(gabapentin:GBP)
  2. トピラマート(topiramate:TPM)
  3. ラモトリギン(lamotrigine:LTG)
  4. レベチラセタム(levetiracetam:LEV)
  5. ゾニサミド(zonisamide:ZNS)
 B 新薬の有害事象
 C 新薬の投与設計と有効血中濃度域
 D 新薬の薬理遺伝学
 まとめ
第3章 てんかん薬物療法の意義と限界
 A てんかん薬物療法の流れ
 B AED単剤療法の意義と限界
  1. 単剤療法(monotherapy)のメリット
  2. AED単剤治療による治療効果と限界
  3. 新規AEDによる単剤療法の意義
 C AED療法の限界と難治性(薬剤抵抗性)てんかん(re-fractory or drug-resistant epilepsy)
  1. 難治性てんかん(薬剤抵抗性てんかん)とは?
  2. 難治性発現に関連するてんかんの分子病態
 D 多剤併用療法(polytherapy)の意義と限界
  1. AED変更(switch)か付加投与(add-on)か?
  2. AED変更時のtransitional polytherapy
  3. 合理的な多剤併用治療(rational polytherapy)とは?
 E AED療法の限界
  1. いかなる段階でAED療法の限界を判断するか?
  2. 多剤併用は単剤療法よりも効果があるのか?
  3. 新規AEDの付加による多剤併用の有用性について
 F AED療法の限界の克服に向けて
第4章 ガバペンチンのてんかん治療における意義
 A 薬理学的特性
 B 有効性
  1. 成人の難治部分てんかんに対する有効性
  2. 成人の部分てんかんに対する単剤療法
  3. 高齢発症てんかんに対する治療効果
  4. 全般てんかんに対する治療効果
  5. てんかん診療ガイドラインにおけるGBPの位置付け
 C 副作用
 D 使用上の留意点
 E てんかん治療におけるガバペンチンの意義
第5章 トピラマートのてんかん治療における意義
 A 薬物動態
 B 薬物相互作用
 C 副作用
 D 用法・用量
 E 海外の診療ガイドラインにみる本剤の位置づけ
 F 各種てんかん発作ならびにてんかん症候群に対する有効性
  1. 成人難治部分てんかんに対する有効性
  2. 単剤療法の有効性
  3. 特発性全般てんかんに対する効果
  4. 小児のてんかん
  5. てんかん性脳症に関する効果
 G てんかん以外の有効性
 まとめ
第6章 ラモトリギンのてんかん治療における意義
 A 標的症状
  1. 薬効の広域性と単剤療法の可能性
  2. 抗うつ効果
 B 臨床上の特徴
  1. 有効性と忍容性
  2. 薬剤相互作用と半減率
 C 副作用
  1. 薬疹
  2. 妊娠・出産時
  3. 認知機能
  4. 体重変化
 D 使用上の留意点
第7章 レベチラセタムのてんかん治療における意義
 A 有効性
  1. 成人の部分てんかんに対する有効性
  2. 小児の部分てんかんに対する有効性
  3. 高齢者の難治性部分てんかんに対する有効性
  4. 特発性全般てんかん(IGE)に対する有効性
  5. その他の病態・疾患・症候群に対する有効性
  6. 他のAEDとの比較
  7. 発作の逆説的増加
  8. QOLに対する有効性
  9. てんかん以外の病態に対する効果
 B 効果発現までの時間差・効果の持続
 C レベチラセタムの用量・効果関係
 D 安全性
  1. 副作用
  2. 精神・行動面への影響
  3. 妊娠・授乳への影響
 まとめ
第8章 ゾニサミドのてんかん治療における意義
 A ゾニサミドの有効成分に関する理化学的知見
 B ゾニサミドの作用機序と薬用量
 C 副作用
 D ゾニサミドの小児てんかんにおける有効性
 E 成人における2重盲検試験
 F ウエスト症候群におけるゾニサミドの有用性
 G てんかん性無呼吸発作におけるゾニサミドの有用性
 H レノックス・ガストー症候群と大田原症候群
 まとめ
第9章 これからの抗てんかん薬の使い方
 A 薬剤選択
  1. 作用機序が異なり,同じような副作用を発現しないAEDを選択する
  2. 現在処方中の薬剤との相互作用を考える
  3. AED併用による効果
 B 患者のQOLへの配慮
 C てんかん以外の疾患に対する使用
 D 部分発作に使用可能なAEDの特徴
 E これからのAED選択
索引
巻末資料:抗てんかん薬(写真)