西洋医を志す君たちに贈る漢方講義
魅力的な授業をするために
松田邦夫・新見正則:著

2012年発行 A5変形判 185頁
定価(本体価格2,500円+税)
ISBN 9784880028415

その他執筆者など▼
内容の説明▼

西洋医を志す学生のための、まったく新しい漢方教育指南!

漢方教育現場の教える人がいない、教え方がわからない、魅力ある講義の仕方がわからない、西洋医がどのように漢方の講義すればよいのかなどの疑問。そして教えれば教えるほど漢方嫌いになる学生が増えるという懸念の声に応えてアンチ漢方をつくらないためのまったく新しい漢方教育メソッド。

漢方教育にかかわる先生方に
 漢方医学は昔から現在まで多くの先輩医師の経験に基づく先人の知恵の結晶です。これらを絶やすことなく、将来につなげる担い手を育てていただきたいと願っております。
 漢方医学は、古い歴史があります。長年の使用経験のなかで、有効なものだけが残ってきました。現在利用可能な漢方薬には大きな副作用はありません。かつては、一部の豊かな人だけが飲んでいた薬が、今ではエキス剤が作られ、便利に、しかも保険医療で使うことができます。エキス剤の薬理の研究も進んで来ました。これらが漢方薬が急速な普及をみた理由です。我が国で、医師が、西洋医学と漢方医学と両方の治療を同時に行うことができるのは、外国に比べて大変優れた制度です。
 ただし、漢方医学は、長い歴史の中で培われた独特の考え方があります。それを理解し利用してこそ、治療効果を高めることができます。現代の医薬品を使いこなすために現代医学の知識が必要なことと全く同じです。
漢方医学は奥が深いですが、初めから難しく考える必要はありません。基本的なことを踏まえて漢方薬を使えば良いのです。実際に使えば、効果が実感され、使用経験の積み重ねにより、使用技術は高まるでしょう。西洋医薬と漢方薬と両方を使うことのできる我が国の医療制度を活用できる人材を育ててゆくことが必要です。漢方教育にかかわる先生方に、漢方薬の効果的な使い方が出来る人材を育てていただきたいと思います。そのために本書が役立つことを信じております。
松田邦夫

おもな目次▼

第一章 …………… 松田邦夫
 1.漢方との出会い 
  父に勧められて漢方
  漢方の師匠、大塚敬節先生
  患者への愛情と厳しさ
 2.私の漢方勉強法
  古典を読め。あとは患者が教えてくれる
  漢方の存在を知ることのメリット
 3.漢方診療の実際
  肺炎に真武湯
  慢性副鼻腔炎に人参湯合真武湯
  不眠症に桂枝茯苓丸料
  歩行困難に八味地黄丸
  EDに大柴胡湯
  むち打ち症に葛根湯加苓朮附湯合桂枝茯苓丸
  咽喉頭違和感
  薬診(?)に黄連解毒湯
  腹痛に大建中湯
  顔面発疹に当帰芍薬散
  歩くのが遅いに補中益気湯
  胸痛に当帰四逆加呉茱萸生姜湯
  小児喘息に小柴胡湯合麻杏甘石湯
  副鼻腔炎に葛根湯加味方
  口訣の面白さ:頭痛に釣藤散
 4.漢方医としての生き甲斐
第二章 …………… 新見正則
 1.魅力的な授業をするために
 2.西洋医を志す学生を教える時の注意点
  仮想病理概念の羅列をしない
  自分が理解できることしか講義をしない
  自分の土俵で話す
  せめて講義では整合性を保とう
  漢方は保険医療だから意味がある
  日本の医師は漢方を処方できる
  保険適応エキス剤に限定する
 3.西洋医だからこそ教えられる点
  多くの学生は西洋医になりたいのだ
  まずは立派な西洋医になってもらおう(直球と変化球)
  素直に自分の昔のイメージを語ろう
  西洋医学の限界を語る
  実際の症例を交え、西洋医として漢方の魅力を語る
  現代西洋医学が何よりも先にある
  華岡青洲は漢方の限界を知っていた
  漢方があると診療の幅が広がる
 4.必修授業は選択授業とは異なる
  必修授業はモダン・カンポウの立ち位置で
  漢方エキス剤とは何?
  何かあれば止める。これで安全
  フローチャートで処方可能。そしてそこそこ有効
  患者と一緒に探すことを楽しむ
 5.西洋医を志す学生が知っておくべき漢方の考え方
  森全体を治す。それしかできない
  サイエンスからは遠い。だからこそ補完医療には良い
  実は漢方はオーダーメード医療
  漢方は養生あってこそ
  現代社会のデジタル感で病気に?
  漢方の短所はそのまま漢方の魅力
 6.西洋医を志す学生が知っておくべき漢方とEBM
  大建中湯の臨床研究
  大建中湯は山椒より有効か
  漢方は西洋薬剤と同等の打率があるのか
  漢方の魅力を正しく伝えないと
  EBMはあった方がいいが…
  漢方にEBMは必要か?
 7.西洋医を志す学生が知っておくべき漢方とサイエンス
  アヘンとモルヒネ
  麻黄とエフェドリン
  熊胆とアンプラーグ®
  六君子湯(43)とヘプタメトキシフラボン
 8.西洋医を志す学生が知っておくべき生薬
  保険適応エキス製剤を構成する一一八生薬
  生薬が読めると漢方も読める
 9.西洋医を志す学生が知っておくべき漢方薬の名前
  保険適応エキス製剤 一二八種
  漢方薬が読めないとかっこ悪い
 10.エキス製剤理解のためにまず葛根湯(1)
  傷寒論に載っている
  落語枕噺:葛根湯医者
  一八〇〇年前のものが通用するのか
  葛根湯(1)で足し算の叡智を納得しよう
 11.漢方の副作用
  劇薬を使用した昔の話
  瞑眩と副作用
  甘草による偽アルドステロン症
  小柴胡湯(9)による間質性肺炎
  麻黄による副作用
  アレルギー反応
  地黄による胃腸障害
  漢方では何でも起こり得る
 12.漢方処方時の注意点
  用量依存性がないことも
  乱暴な言い方をすれば何でも治る
  双方向に効く(中庸に持って行く)
  逆に悪化させることも
  生薬数が増えると効かなくなる
  匂いと味が大切
  空腹時の内服が建前
 13.漢方理論は処方選択のために
  虚実
  陰陽(寒熱)
  六病位(表裏)
  気血水
 14.漢方診察は経験が土台
  いろいろな診察がある、そして人それぞれ
  腹診
  舌診
  脈診
  漢方診療の流れ
 15.覚えておくとよい十五処方
  芍薬甘草湯
  麻黄湯(27)
  桂枝湯(45)
  小柴胡湯(9)
  六君子湯(43)
  補中益気湯(41)
  四物湯
  加味逍遙散(24)
  当帰芍薬散(23)
  桂枝茯苓丸(25)
  五苓散(17)
  真武湯(30)
  黄連解毒湯(15)
  大黄甘草湯
  八味地黄丸(7)
 16.簡単な漢方の歴史
 17.古典を覗いてみよう
  古典の読み方・親しみ方
  傷寒論
  薬徴
  類聚方広義
  勿誤薬室方函口訣
 18.漢方の神髄の講義
  伝統的漢方の講義
  その前にアナログの再確認
  矛盾は致し方ないと腑に落とす
  そして漢方の神髄を専門家から伺おう
 19.漢方を体感しよう(実習)
  実習
  生薬を見よう、触ろう、嗅ごう、味わおう
  漢方薬を煎じてみよう
 20.実際の授業構成例
  八コマの必修講義の場合
  四コマの必修講義の場合
  二コマの必修講義の場合
  一コマの必修講義の場合
  実録 漢方授業
 21.国家試験予想問題