ガイドラインにないリアル糖尿病薬物療法をガイドする

坂根直樹(京都医療センター 臨床研究センター):編集

2022年発行 A5変型判 288頁 2色刷
定価(本体価格4,700円+税)消費税10%込(5,170円)
ISBN 9784880029207

紙版(クレジット・コンビニ決済)はコチラ→BASESTORES

電子版はコチラ→M2PLUS医書.jp

内容の説明

ガイドラインで標準化されていない「よくある」「まれな」事例に、どう対応する?

「文献が少なくてどうしたらいいかわからない」 「対応しきれているか不安」
糖尿病患者をとりまくさまざまな病態・合併症、臨床での困りごとにフォーカスした40項目をエキスパートたちが解説!糖尿病診療のリアルワールドをもとにした一冊。

●序文

 読者の皆さんは、医学生時代に糖尿病という病気をどう捉えていただろうか。私が医学生であったころ、糖尿病という病気は、75gブドウ糖負荷試験を用いた診断基準も確立しており、診断が単純明快な病気だと思っていた。治療についても食品交換表を用いた食事療法があり、それを順守することが大切だと教わった。その当時は、糖尿病の経口薬はSU薬とビグアナイド薬の2種類しかなく、ビグアナイド薬もSU薬の補助的な役割でしかなかった。ところが、医師になって外来や病棟で糖尿病患者と接すると、診断は簡単だが治療は非常に難しいことを痛感した。
 大学の研修医になり、「根拠に基づく医療」(Evidence―based medicine : EBM)というのが出てきた。EBMが発表された1991年以前は臨床家の勘や経験で糖尿病薬の選択は行われていた。現在では、糖尿病の経口薬は9種類、注射薬は2種類と治療の選択肢が格段に増え、診療ガイドラインも充実してきた。これらの診療ガイドラインを適切に利用することで、臨床的は判断や治療が効率化し、患者アウトカムの向上が期待できる。私自身も日本だけでなく、ADAやEASDの診療ガイドラインを参考にして、まれな病態に関しては文献をその都度、検索してきた。しかし、日本で標準化されたガイドラインが示されていない、よくある病態や、まれな病態にどう対応するのか、まとまった本があればと考えていた。
 リアルワールドで糖尿病をみていると、十人十色、百人百様の糖尿病がある。我々が目にする診療ガイドラインは、あくまでも一般論である。Eddyによると、ガイドラインが適応できるのは60~95%の患者にとどまり,95%以上の患者に適応されるのが「スタンダード」で,50%ほどの患者には一般的な推奨とは異なる「オプション」が適用されるとしている。つまり、リアルワールドの糖尿病診療はオプションだらけかもしれない。そこで、私自身が読んでみたい本を作ることにした。「第1章 基本的な病態をガイドする」(20項目)ではよくみる2型糖尿病からまれな病態を呈する糖尿病を網羅した。この章を読んでいただければ、最新の糖尿病治療を知ることができる。もしかすると、すでにまれな疾患に出会っていたことに気づくかもしれない。「第2章 合併症をガイドする」(8項目)では、糖尿病が長期にわたることで起こる糖尿病合併症の処方のコツについてレビューやメタアナリシスを元に、その道の専門家に執筆して頂いた。「第3章 特殊な病態をガイドする」(12項目)では、通常の診療ガイドラインで網羅されていないことに触れている。それぞれの章については、読者が読みやすいように、執筆者に病態の概念、治療方針、レビュー・メタアナリシス・ガイドライン、薬物療法の選択と投与法、副作用への配慮、患者への説明で構成されている。薬物療法の選択法だけでなく、患者への説明法もについて触れられているので現場で用いやすいことと思う。本書を読んでいただければ、ガイドラインにないリアル糖尿病に対する自信が高まることを確信している。

(坂根直樹)

おもな目次

略記表   9

第1章 基本的な病態をガイドする
1 小児1型糖尿病   10
2 成人1型糖尿病の病態と治療   16
3 劇症1型糖尿病   22
4 緩徐進行1型糖尿病   28
5 高齢1型糖尿病   33
6 小児2型糖尿病   39
7 成人2型糖尿病   47
8 肥満を伴う2型糖尿病   55
9 ASCVD合併2型糖尿病   63
10 高齢2型糖尿病   72
11 妊娠糖尿病と糖尿病合併妊娠   79
12 ステロイド糖尿病   85
13 免疫チェックポイント阻害薬による1型糖尿病   92
14 脂肪萎縮症   99
15 高インスリン血性低血糖症   106
16 インスリン抵抗症(インスリン受容体異常症)   112
17 インスリン自己免疫症候群   120
18 ミトコンドリア糖尿病(MIDD)   126
19 若年発症成人型糖尿病(MODY)   134
20 胃切除後反応性低血糖   142

第2章 合併症をガイドする
21 神経障害   148
22 糖尿病網膜症   154
23 糖尿病性腎症   161
24 糖尿病性足潰瘍   169
25 認知症・軽度認知障害   176
26 重症低血糖   181
27 夜間低血糖の管理   186
28 無自覚低血糖   194

第3章 特殊な病態をガイドする
29 多囊胞性卵巣症候群   200
30 摂食障害を伴う1型糖尿病   206
31 検査前の薬物管理   213
32 災害時の薬物療法   219
33 経済的困窮者の薬物療法   225
34 COVID‒19禍での糖尿病診療   232
35 暁現象   238
36 インスリンボール   245
37 運動時のインスリン調節   252
38 ラマダン中の糖尿病管理   259
39 イメグリミン   265
40 糖尿病に対する外科治療(減量・代謝改善手術)   271

薬剤一覧   280
索引   284