
社会情勢の変化により、高年齢となってからも就労する労働者は着実に増加している。
その一方で、急激に増加しているのが高年齢労働者による労働災害であり
中でも転倒・転落による事故が占める割合は大きい。
特に、小売業や社会福祉施設といった従来、労働災害の比較的少なかった分野で
労災件数の上昇がみられるところが、現在の特徴となっている。
本書はそうした現状を分析し、転倒・転落事故をどのように予防すべきかを解説した書籍である。
●序文
「天の時は地の利に如かず 地の利は人の和に如かず」(孟子)とされる。元々は、城を攻める時に、運勢や地形の利よりも、人々の心が一つになっていることには叶わない意味だが、新たに大きな事業を推進する時にも、関わる人々の心が一つになっていることが最も大切であることを伝えている。
令和5(2023)年1 月吉日
編者 武藤 芳照、萩野 浩、三上 容司、竹下 克志
序 文 5
第1章 今、増えている高年齢労働者の労災としての転倒・転落事故の現況
1.高年齢労働者の労働災害の発生状況 8
2.高齢者の外傷の特徴 12
3.高年齢労働者の労働災害の特徴 16
4.発生要因(内的要因、外的要因、社会・管理的要因、傷害増幅要因)
-高年齢労働者の労災としての転倒・転落事故- 22
5.現行の取り組み 27
第2章 職場における高年齢労働者転倒・転落事故防止マニュアル
1.最大の事故原因「滑り」の防止対策① 原因と求められる対策 32
2.最大の事故原因「滑り」の防止対策② 耐滑性の確認と摩擦係数の評価 35
3.業種別・事故を減らすための取り組み好事例 40
事故を防ぐための基本的な対応
4.内的要因からのアプローチ① 転倒リスクを高める疾患の理解と治療 47
5.内的要因からのアプローチ② 薬剤チェック 50
6.内的要因からのアプローチ③ 身体機能改善のための取り組み 53
7.内的要因からのアプローチ④ 産業医の役割 56
8.外的要因からのアプローチ① 労働現場の環境整備 60
9.外的要因からのアプローチ② 危ない所の見える化 63
10.外的要因からのアプローチ③ 職員教育 66
11.外的要因からのアプローチ④ 職場に潜む転倒リスクの「チリ」 70
12.行動要因へのアプローチ① 防滑 73
13.行動要因へのアプローチ② 安全靴 76
第3章 職場全体で事故防止に取り組む
1.転倒予防の周知啓発
-厚労省・消費者庁、日本転倒予防学会との連携協力- 78
2.言葉のチカラ -標語・川柳- 82
3.体力・運動能力の測定・評価 86
4.身体活動の向上を基盤とする取り組み
-身体活動の向上、運動・スポーツの推奨- 91
5.運動機能訓練としての転倒予防体操 95
第4章 データによる分析と今後の課題
1.労働力人口と労働災害の動向 100
2.転倒災害の課題① 高年齢労働者の課題 106
3.転倒災害の課題② 労災認定の課題 109
4.課題解決のための今後の展開 111
5.労災としての転倒・転落事故の法的責任 113
6.判例からみた労災としての転倒・転落事故の原因と対策 115
第5章 多職種の視点
1.労災病院の立場から① 117
2.労災病院の立場から② 118
3.産業医の立場から 119
4.理学療法士の立場から 120
5.医療ソーシャルワーカーの立場から 121
6.社会保険労務士の立場から 122
7.労災認定審査の立場から① 整形外科医 124
8.労災認定審査の立場から② 脳神経外科 125
9.シルバー人材の転倒・転落事故の現況 126
10.劇場の舞台での転倒・転落事故 127
巻末資料1.エイジフレンドリーガイドライン
(高年齢労働者の安全と健康確保のためのガイドライン) 128
巻末資料2.WHO身体活動・座位行動ガイドライン(日本語版) 130
索 引 132
編者プロフィール 134