(姉妹編
「病院の外側から見たアメリカの医療システム」もご覧下さい)
●既存書とは異にする視点
●日本の医療改革への新鮮な提言
●巻頭にアメリカ医療の今がわかる「用語集」を収録
日本人初の米国病院経営フェローシップと修了した著者が、「生」のアメリカの医療システムについて報告。
本当にマネジドケアは悪なのか?
本当に患者切り捨ての医療なのか?
本当にアメリカの医療制度は破綻しているのか?
読者は、日本で語られているアメリカ医療制度と現実との差異を、著者とともに痛切に感じさせられることだろう。
著者「おわりに」より抜粋
これまでに、アメリカの医療経営の現場から、アメリカの医療システムを目の当たりにしてきたが、根底の問題は日本もアメリカも変わらない。限られた医療財源、高齢化と先進医療技術による医療費上昇という矛盾した財務関係。それに対して国民は医療費の自己負担には難色を示すが最高の医療を期待している。アメリカはこの問題に対して一九八〇年代からDRG/PPS導入やマネジドケアの導入促進など、医療費削減に努めるよう取り組んできた。
ここで強調したいのは、アメリカでもDRG/PPSやマネジドケアは医療の質が保てないのではと論争が湧き起り現在も続いている。しかし、医療費の抑制の効かない出来高払い制の保険を続けると、誰が医療費を払うのか、またはまかなうだけの財源は保証されているのかと疑問が湧く。財源の枯渇で医療保険制度そのものが破綻すると、医療の質を保つ前に医療を受けられなくなる。この点を直視しているのがアメリカではないかと思う。
医療機関へのアクセス、医療の質、適正な医療費の三つのバランスを保つことで、医療システムは成り立っているのである。日本の一国民として、世界でも賞賛されている国民皆保険が存続しつづけるために、コスト管理で先行しているアメリカの方式を取り入れられる部分は取り入れ、将来も安心できる医療制度を存続してほしいと願っているのである。