ステロイドの使い方を実地診療に即して解説した、待望のポケット判・スリムマニュアル登場。副作用に対するリスクマネジメントの内容も充実。特に研修医・若手医師必携。
序 文
ステロイドを使いこなすことができてこそ一流の臨床医といえよう.その位,ステロイドの使い方をマスターするのは難しい.また,ステロイドは「諸刃の剣」であり,有効性は高いが,副作用も多い.日常診療において,ステロイドの副作用を未然に防止することはきわめて大切である.また,ひとたびステロイドの副作用が起きれば,リスクマネジメントに習熟をしている必要がある.ステロイドの副作用はminor side effectとmajor side effectに大別されるが,特に生命予後に影響を及ぼすmajor side effectについてその種類と対応策をマスターしていることは,臨床医にとって必要不可欠である.
一方,日本ほどステロイドが臨床で濫用をされている国はないであろう.本来,必要がないにもかかわらずステロイドは頻用され,しかも漫然と使用をされている傾向がある.たとえば,関節リウマチの治療をみても,欧米の患者での使用頻度は25%前後であるのに対して,我が国では75%と3倍も多い.そのために,患者の日常生活活動(activity of daily living:ADL)や生活の質(quality of life:QOL)が障害をされている場合が少なくない.
この本は,研修医・若手医師を主たる対象として,ステロイドの使い方を実地診療に即した形で解説している.まず,第1章で「ステロイドの基礎」を歴史,作用機序,種類,相互作用についてわかりやすく説明をしている.それ以降は実地編である.第2章で「ステロイドの使い方」,第3章で「特殊な状態におけるステロイドの使い方」,第4章で「ステロイドの副作用に対するリスクマネジメント」が述べられている.いずれも「今日からの臨床に役立つ」内容である.
本書が若手医師の必携の書となれば望外の喜びである.
2013年1月
宮坂信之
第1章 ステロイドの基礎
1 ステロイドの歴史
2 ステロイドの作用機序
3 ステロイドの種類
4 ステロイドと他剤との相互作用
第2章 ステロイドの使い方
1 関節リウマチ
2 全身性エリテマトーデス
3 多発性筋炎・皮膚筋炎
4 血管炎症候群
5 強皮症
6 間質性肺炎
7 ニューモシスチス肺炎
8 気管支喘息
9 炎症性腸疾患(IBD)
10 肝炎
11 血液疾患
12 多発性硬化症
13 重症筋無力症
14 Guillain-Barré症候群,慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー
15 アトピー性皮膚炎
16 急性副腎不全
17 敗血症
第3章 特殊な状態におけるステロイドの使い方
1 妊婦に対するステロイド使用の注意点
2 小児に対するステロイド使用の注意点
3 高齢者に対するステロイド使用の注意点
第4章 ステロイドの副作用に対するリスクマネジメント
1 ステロイド骨粗鬆症
2 ステロイド潰瘍
3 ステロイド誘発性筋萎縮
4 ステロイド誘発高血圧
5 ステロイド誘発感染症
6 ステロイド誘発脂質異常症
7 ステロイド白内障・緑内障
索引