日本高次脳機能障害学会誌「高次脳機能研究」編集委員長を長年務める著者が、神経内科医として日常診療や学会で感じたことを、回想や医学史を交えながら書き綴った一冊。後輩医師へのエールを含む心温まる書。
序 文
大学や病院で研究・教育・診療していた私の姿を改めてお伝えして、お世話になった皆様へのお礼を込めてご報告したいというのが出版の第一の理由です。もう一つは、私の現役時代をこれからも知らないはずの三人の孫たち、楽(らく、私の長男岳・がくの長男)、明(あき、岳の長女)、仁太(じんた、私の次男圭・けいの長男)がおじいさんの現役時代を知りたいと思ったときに、この本を役に立たせたい、と思ったからです。
散録で恐縮ですが、お時間のある時にお読みいただければ幸いです。
二〇一五年三月 河村 満
第Ⅰ章 学会、病棟回診より
『失語症研究』から『高次脳機能研究』へ/セビリアより、京都学会を振り返って/Brown-Sequard症候群と斎藤茂吉/肢節運動失行/古書に学ぶ―Wilson“Aphasia”より/記憶障害のシンポジウム/病棟回診より/第二八回学術総会を終えて/時計描画試験と時計デザイン/聞かせどころはピアニッシモで/聞かせどころはフェルマータ付休止符?/後輩医師へのエール/ブエノス・アイレスより、この十年を振り返って
第Ⅱ章 つれづれなる日々
結婚披露宴でスピーチする/ふと立ち止まって…/失語症とコミュニケーション障害/脳科学と芸術、仕事と趣味/アナルトリーと発語失行/田邉敬貴先生を偲んで/マイノリティが握る真実/『日本高次脳機能障害学会』の柱/病院長としての務め/エディンバラ学会に向けて/論文の査読結果について/わかりやすい『病院の言葉』とは/“文字”認知の脳内機構/昭和大学神経内科学教室―研究の歩みと特徴/神経心理学の基本―症例研究の重要性/つれづれなるままに…/「加齢」のメリット・デメリット/古書に学ぶ―「失語症」コーナーより/PD、ALSと認知機能障害
第Ⅲ章 チームプレイ
本の監修・編集について/古書収集のきっかけ/恩師平山惠造先生と神経症候学/チームプレイ/東日本大震災/人生に必要なこと/チーム医療の重要性/神経内科医と精神科医/『こころの時間』学/失われた時を求めて/進行性失語/シャルコーとシャンパン/病院長、そして編集委員長として/漢字が書けない/聴覚性失認―歌が歌えない/高齢者てんかん/教授退任にあたって