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新見正則(帝京大学医学部外科 准教授):著
2016年発行 320頁生薬から保険適用漢方エキス剤のアウトラインを理解し、処方に役立てよう!
前著「3秒でわかる漢方ルール」では、これまで長い経験によって理解されてきた漢方の性質を公式で表す考え方を提案し、解説しました。この考え方をもとに、本書では、漢方保険適用エキス剤128処方を1つずつ解説しました。含有生薬から代表的な15の漢方薬にチャート分類し、生薬の方向性とあわせてどんな漢方なのかをザックリつかみます。そのほかに、虚実、寒熱、気・血・水などもルールからどんな処方かをさらに類推できます。また、あわせて保険病名と典型的な患者像なども掲載し、面白くて役に立つよう考えました。漢方の相関の世界を実感できます。
はじめに
保険適用のセカンドオピニオン外来を大学病院で,本邦で最初に始めたのは,もう15年近く前になる.5年間のイギリス留学が終わって,なにか新しいこと,人の役に立つことをしたかった.そこで,その当時はまったく認知されていない,また採算性もあわないセカンドオピニオンを始めた.ひとり1時間で週に10人以上を拝見した.領域を問わずすべて拝見した.専門家から,ちょっといろいろな疾患に興味をもつ医者に変わった瞬間だった.たくさんのかたの悩みを伺っていると,今の医療の限界が少し見えてきた.そんなときに,漢方に出会った.まず保険適用であるという当たり前のことに気が付いた.つまり僕たち西洋医が安価に使用できるということだ.そしてまず,自分の家族に使用してみると,なんと運がいいことか,いわゆるビギナーズラックか,家族全員が漢方の力に感心した.そして,漢方の勉強を真剣に始めた.たくさんの本をむさぼり読んだ.たくさんの勉強会に出席した.でも,勉強すればするほど,漢方の世界の混沌,不合理,不整合,矛盾に振り回された.これ以上漢方を勉強して,自分のなかで学問として,医療の一部として成り立つのだろうかと逡巡しているときに,運良く松田邦夫先生に出会った.そして運良く,松田邦夫先生のクリニックが勤務先の近くであると知った.そして運良く金曜日の午前中に見学することを許された.松田邦夫先生からたくさんのお話を伺い,霧が晴れるようにすっきりした.また松田邦夫先生に大学での古典の講義をお引き受け頂き,古典をたくさん勉強する機会に恵まれた.それも最高の講師の元で.僕は本当に幸せだと思っている.2016年 新見正則
おまけ
現状の医療で困っている患者を診るときに,僕は「いっそプラセボ効果でもいい」と思って使用している.最近,名医とは,との質問を受けると,「最低限の侵襲で治療できるドクター」と答える.そうであれば,プラセボ効果をより上手に利用し,それを増強できる医師は素晴らしい.漢方をたくさん処方するとミラクルを経験する.そんなとき,謙虚になって,プラセボ効果だったかもしれないと自問することは大切と思っている.そしてやっぱり漢方が効いたのだと納得できた時が漢方の素晴らしさを体感できた瞬間である.