追補改訂版 てんかん教室 
兼子 直 著

2003年発行 A5判 212頁
定価3990円(本体3800円+消費税5%)
ISBN9784880024585

*改訂版が出版されました
その他執筆者など▼
内容の説明▼
てんかんは種々の原因で起こりますが,人口の約0.6~1%の人が罹患しており,決してまれな病気ではありません.最近の科学の進歩に伴い,てんかんの遺伝子研究など,原因追及が一段と加速しており,成果如何によっては近い将来,新たな治療法が開発される可能性があります.また,社会のてんかんに対する偏見も次第に薄れ,多くのてんかんを持つ方々も健康な人と同様な日常生活を送っています.しかし,いまだ,運転免許などの資格収得の上で不適切な制限が存在することも事実です.また,発作が抑制されていなければ,就労する上で発作自体がハンディキャップとなることも否めませんが,薬に副作用はつきものですし,発作抑制を求めるあまり,多量の薬を服用するようでは副作用により日常生活が快適にはなりません.
これらを念頭に,本書では最近大きく進歩したてんかんの診断,治療に重点を置きつつ,てんかんの予後,結婚の問題,社会生活とてんかんの関わりなどをわかりやすく書いてあります.人は病名を告げられると,「どのような病気なのか」「治るだろうか」「どのような治療があるのか」「今の仕事はつづけられるだろうか」「子どもに遺伝しないだろうか」など,種々の不安を抱きますが,このような疑問にもできるだけ正確に答えようとしております.
そのため,少し専門的な事柄も取り上げられておりますが,これは一方では,てんかんを持つ人々とその家族だけではなく,ケアに関わる施設の方々,学校関係者,あるいはてんかんの治療を専門としない医師,看護者などの医療関係者にも参考となるように考えたからです.
21世紀は「脳の世紀」といわれております.本書がてんかんと戦う方々の21世紀へ向けての支えになることを願っております.(序文より)
おもな目次▼
1.てんかんとは
てんかんの概念/てんかんの疫学/てんかんの原因
2.てんかんの診断
てんかんの検査/てんかんの鑑別診断
3.てんかん発作とてんかん症候群の分類
てんかん症候群の国際分類(1989)/てんかん発作の国際分類(1981)
4.てんかんの合併症
性格障害/知能障害/精神病様状態/男性患者における性機能障害/小児における合併症
5.てんかんの発作誘発因子
てんかん発作の誘発要因の重要性/誘発因子の種類/情緒的要因/月経と妊娠/アルコール/睡眠時間/発熱
6.てんかんの治療
治療の原則/AEDの効果を高める要因/薬物相互作用/発作の難治化の要因/抗てんかん薬/抗てんかん薬の副作用
7.特殊な状態の治療
てんかん重積状態/精神症状/難治てんかん
8.てんかんの外科治療
手術の適応/最近のてんかんの外科治療/てんかん外科の種類と術式/外科治療の心理社会的効果
9.抗てんかん薬治療の終結
てんかんの診断を確実にすること/その他の臨床因子/社会的因子/発作の再発/治療中止の手順
10.てんかん病像の変化と長期予後
成人てんかんにおける加齢と発作の推移/てんかんの自然経過と治療予後/てんかん類型と予後/予後に影響を与える要因
11.てんかん患者の妊娠,出産
妊娠中のてんかん発作頻度変化,その原因と対策/抗てんかん薬の催奇性/てんかんの遺伝性/妊娠可能てんかん女性の治療
12.てんかんと社会生活
学校生活とスポーツ/重複障害を持つ患者の介護と治療方針/成人患者への対応──自動車運転免許,就職,結婚/社会制度の活用
付録1 こんなときどうしたらよいか(Q&A方式で16題)
付録2 おもな抗てんかん薬
付録3 マイスタンについて