奈良県立医科大学の精神科チームが15年かけてつくりあげた渾身のマニュアル。修正に修正を重ね、精神科臨床研修にふさわしいベストオブベスト!
白衣におさまるコンパクト版。効率的に最新情報をアップデートしたい先生方にもお勧めします。
序 文
志し高き研修医諸君!
このたびの精神科臨床研修の必修化にさいして本書NEW精神科研修ハンドブックを上梓することは,わが国の精神科医療の向上につながるものと確信している。
さて,精神科は患者を精神・身体・社会・倫理的にみるのを特徴とする。病を持つ患者の存在の意義すなわち実存をみるのである。これは,医師としての人格の涵養のうえで重要なことであり,患者を同じ存在として尊重することにより,自身が成長することにほかならない。精神科研修の意義はここにある。
とはいえ,初学者が同じ自然科学の分野であっても一般身体科とは異なる独自の学問体系を持つ精神科臨床になじみ、自己学習するのは容易ではない。本書はそのためのマニュアルであって,おもに奈良県立医科大学精神科で日常にいそしむ者が著わしている。実際に身近にいる先輩医師から指導を受ける感覚で学習できるとともに,指導を仰ぐ医師にも相談する端緒にもなろう。賢明なる諸君らに広く本書が愛用され,日常臨床を通じて少しでも患者や家族の尊厳に寄与することを願っている。
精神科診療においても求められることが多くなってきているので,本書においては,最新の情報を提供するように努めた。診断基準は,汎用されている米国精神医学会Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders 5th edition (DSM-5)の日本語版(日本精神神経学会 日本語版用語監修,髙橋三郎・大野裕監訳,医学書院,2014)に準拠した。また薬剤名は臨床の場に即して一般的な商品名にした。また日常の臨床は証拠に基づいて保険診療の枠内で行われなければならないが、現状に即してやむなく適応外の処方を示しているところもある。
旧版である精神科研修ハンドブックの石阪巧氏の好意により,新興医学出版社からの発刊になったことについて,関係各位に深謝する。
2020年4月
岸本年史
1 総 論
2 神経発達症群/神経発達障害群
3 統合失調症スペクトラム障害および他の精神病性障害群
4 双極性障害および関連障害群
5 抑うつ障害群
6 不安症群/不安障害群
7 強迫症および関連症群/強迫性障害および関連症群
8 心的外傷およびストレス因関連障害群
9 解離症群/解離性障害群
10 身体症状症および関連症群
11 食行動障害および摂食障害群
12 物質関連障害および嗜癖性障害群
13 神経認知障害群
14 パーソナリティ障害群
15 てんかん
16 緩和ケア
17 向精神薬の使用法
18 電気けいれん療法
19 精神科でみられやすい副作用,合併症
20 自殺・自傷の危機管理
■付 録
A 向精神薬の警告・禁忌・重大な副作用
抗精神病薬/抗うつ薬/抗躁薬/抗不安薬
B 精神障害の分類