若年認知症の臨床 
宮永 和夫 著

2007年発行 B5判 224頁
定価(本体価格5500円+税)
ISBN9784880026701

その他執筆者など▼
内容の説明▼
(「はじめに」より抜粋)

若年認知症という言葉は、約10年前私たちの研究班の報告で初めて使用した造語です。その当時は65歳以上の認知症については、老年期痴呆(認知症)、45歳から64歳までの認知症は初老期痴呆(認知症)と呼ばれていました。当然、それ以下の年齢の認知症に該当する言葉はなく、仕方なく初老期認知症に入れていたと思います。私たちが老年期認知症以前、いわゆる65歳以前の認知症に注目したのは、老年期認知症に対する施策(ゴールドプラン)による施設整備計画の流れが出たためでした。当時は介護保険もなく、老人保健法と老人福祉法により、65歳以前の認知症の施設処遇が困難で、結果として精神病院のみが受け入れていたのです。その現実を問題視し、65歳未満の認知症者にも、老年期と同様の福祉サービスを提供すべきではないか、という趣旨で研究班が作られ、全国調査を開始したわけです。
ところが、全国調査をするにあたり、65歳未満の認知症をどう呼ぶかが議論になりました。65歳未満については、45歳以上64歳以下の認知症については初老期痴呆(認知症)の言葉がありましたので、それ以前は若年期がよいだろうと若年期痴呆(認知症)と呼ぶことになりましたが、全体を纏めたものには適当な名前が出ず、議論の結果、若年痴呆(認知症)という名称に落ち着きました。また、英語圏では65歳以前の認知症をYoung-onset dementiaやearly onset dementiaという名称で呼んでいることがわかったため、私たちもYoung-onset dementiaが妥当と考え使用することになりました。しかし、今回この本を出す間際になり、世界の若年認知症の流れに思いを巡らしつつネット検索をしていたところ、Working age dementiaの言葉を見つけ、こちらのほうがより認知症の当事者の立場を代弁しているのでないかと考え、それをこの本の英語のタイトルとさせていただきました。若年認知症の特徴は、年齢が単に若いことでなく、働き盛りの人々が社会や地域の中で役割を喪失することではないかと思ったのです。そして、若年認知症者とは、疾病として自宅で治療やケアを受けるだけの受動的な存在ではなく、障害者として地域に住み、本人の希望に基づいて社会活動(労働)や社会参加する能動的な存在との視点からも、Working age dementiaのほうがよいのでないかとも考えたわけです。(以下略)
おもな目次▼
第1部 家族
1.家族の思い・家族の願い
2.家族会のあり方

第2部 諸外国の状況
1.概論
2.各国の現状
3.その他の国の施設・制度の実態

第3部 概論
1.疫学
2.若年認知症と老年期認知症の相違
3.疾患より障害へ
4.施設より地域へ
5.今後の流れ

第4部 診断
1.若年認知症の種類と頻度
2.若年期に発症するおもな認知症疾患
3.症状
4.心理テスト
5.画像検査など
6.診断告知・病名告知
7.病識

第5部 治療
1.薬物療法
2.非薬物療法

第6部 看護・介護
1.概論
2.評価
3.具体的対応

第7部 社会制度
1.処遇の原則
2.障害者自立支援法
3.介護保険法
4.精神保健福祉法
5.身体拘束
6.虐待

第8章 診断群分類について(素案)
1.入院医療
2.地域処遇(参考)