新しい糖尿病の治療 
完全なる目標達成を目指したこれからの管理・治療のあり方
加来浩平:編著
2010年発行 B5判 179頁
定価(本体価格4,500円+税)
ISBN 9784880026824

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内容の説明▼
(序文より抜粋)
 糖尿病患者数の急増は目覚ましい.一方で,近年の大規模アウトカム試験は,血管イベント発症あるいは総死亡の抑制には,より早期からの介入とともに,血糖のみならず血圧や脂質の管理を含めた統合的治療が重要であることを示唆している.糖尿病病態は常に進展しており,病態が進行するのを待ってからの介入では,もはや長期間の良好な管理は困難となることは,明らかである.すなわち血糖管理を例にとると,病態が進み,血糖管理が困難になってからの介入ではなく,病態進展をさせないためのproactiveな介入が求められることになる.このように幾多のエビデンスの蓄積によって,糖尿病管理のあり方は大きく変わろうとしている.
 本書は,現時点での糖尿病の管理の最新の知見を網羅することを念頭において企画した.インクレチンエンハンサーとしてDPP-4阻害薬あるいは,インクレチンミメティックスGLP-1受容体作動薬の登場は,単に血糖管理に新たなツールを増やしただけに留まらず,2型糖尿病へのproactiveな介入をより可能にするものと期待される.またiPS細胞を用いた膵β細胞再生の試みは,今後乗り越えるべきハードルはあるものの糖尿病の根本的な治療への幕開けと夢は膨らむ.本書が,糖尿病治療の最新知見の紹介にと留まるのではなく,糖尿病管理の本質を伝え,治療のレベルアップに貢献することを強く願うものである.
おもな目次▼
A 糖尿病一次予防の可能性
1.生活習慣への介入
・糖尿病発症の危険因子と予防の目標
・ 糖尿病発症予防の対策
・生活習慣介入による糖尿病発症予防のエビデンス
・生活習慣介入の費用対効果
2.薬物による介入
・抗糖尿病薬による糖尿病の発症予防
・その他の薬剤による糖尿病発症の予防の可能性
B 最新の食事・運動療法
1.食事療法
・糖尿病の食事療法
・食品交換表による食事療法
・食品交換表による指導のあり方
・食品交換表 活用編
2.運動療法
・運動療法の効果
・運動療法指導の実際
C 経口糖尿病薬治療の現状と将来
  1.SU薬
・SU薬の位置づけと選択
・投薬の実際
・SU薬の限界-使用にあたっての留意点
2.速効型インスリン分泌促進薬
・グリニド薬の特徴
・グリニド薬の適応
・ グリニド薬の作用とその位置づけ
・グリニド薬の脂肪肝に対する作用
・グリニド薬の副作用
・服薬指導の実際
・グリニド薬とαグルコシダーゼ阻害薬(αGI)の違い
・グリニド薬とαGIの併用の意義
3.αグルコシダーゼ阻害薬
・食後高血糖是正の意義:食後高血糖と大血管障害
・インスリン療法とαGIの併用
・SU薬とαGIの併用
・グリニド系薬剤とαGIの併用
・チアゾリジン薬,ビグアナイド薬とαGIの併用
4.ビグアナイド薬
・薬剤の歴史的背景
・薬理作用機序
・適用と禁忌
・大規模臨床試験によるエビデンス
5.チアゾリジン系薬
・作用機序
・チアゾリジン系薬剤の臨床試験
6.経口糖尿病薬の併用療法
・経口血糖降下薬併用療法の原理
・経口血糖降下薬併用療法の実際と効果
・多剤併用療法
7.その他の新規経口糖尿病薬
・SGLT阻害薬
・新規開発中のインスリン分泌促進薬
・その他の有望な糖尿病治療薬
D インスリン治療の現状と将来
1.インスリン療法の進歩-MDI,CSII,SMBG,併用療法を含めて-
・強化インスリン療法
・持続皮下インスリン注入療法(CSII)
・自己血糖測定(SMBG)
・インスリンと経口糖尿病薬の併用療法
2.ヒトインスリンアナログ製剤について
・インスリン製剤の歴史と進歩
・インスリン製剤の種類と特徴
・既存インスリン製剤の問題点
・ヒトインスリンアナログ製剤の利点と問題点
・超速効型ヒトインスリンアナログ製剤
・持続型ヒトインスリンアナログ製剤
3.インスリン治療の現状と将来-インスリンデバイスの進歩-
・良好な血糖管理とインスリン治療
・ディスポーザブル・キット製剤のデバイスの改良
・経口,経鼻,経粘膜,経肺インスリン
・持続皮下インスリン注入療法(CSII)デバイスの進歩
・持続血糖モニター(CGM)を用いた血糖コントロールとその将来
E インクレチン療法の現状と将来
1.インクレチンの抗糖尿病作用
・インクレチンとは
・GLP-1とは
・インクレチンのインスリン分泌促進作用
・インクレチンによる膵β細胞数の増加作用
・GLP-1の膵外作用
・GLP-1を用いた糖尿病治療
2.新規経口糖尿病薬-DPP-4阻害薬
・DPP-4阻害薬の長所
・DPP-4阻害薬の短所
・Sitagliptin
・Vildagliptin
・Saxagliptin
・Alogliptin
 3.エクセナチド
・発見の経緯
・構造と作用
・臨床応用
 4.リラグルチド
・製剤学的特性および薬理作用
・海外での臨床試験成績
・日本での臨床試験成績
F 慢性合併症治療の現状と将来
1.糖尿病性神経障害
・血糖コントロールによる治療
・発症機序に則した治療
・新たな治療法
2.糖尿病眼合併症
・糖尿病網膜症の病態
・眼科受診の重要性
・血糖コントロールの重要性
・急速な血糖コントロール
・眼科受診の頻度とタイミング
3.糖尿病腎症
・糖尿病腎症とは
・腎症に対する現状の治療手段
・メタボリックシンドロームと腎症
・腎症の寛解を目指した治療戦略
G その他の新規糖尿病治療
1.肥満症治療薬
・モノアミン作動薬
リモナバン
・その他の食欲抑制薬
・オルリスタット
・エネルギー消費亢進系としてのβ3受容体賦活化系
2.1型糖尿病に対する免疫寛容誘導療法
・非特異的ワクチンにおける成績
・特異的自己抗原を用いたモデル動物での成績
・インスリンを用いた1型糖尿病の予防介入試験
3.膵移植・膵島移植
・膵臓移植
・膵島移植
・膵臓移植と膵島移植の比較
4.人工膵島
・人工膵島の基本構成と臨床応用
・携帯型人工膵島の開発経緯と現況
・機械型人工膵島の開発動向と将来展望
5.膵再生治療-ES細胞,組織幹細胞-
・膵β細胞再生のメカニズム
・膵再生治療へのアプローチ
H トピックス
1.介入による長期予後
-長期大規模介入試験が教えるもの(DCCT/EDIC,UKPDS,Steno-2の成績を基に)
・DCCT
・EDIC
・Glucose memory
・UKPDS
・UKPDS 33
・UKPDS 34
・UKPDS 80
・UKPDSの血圧管理アーム
・UKPDS 75(血糖と血圧の複合効果)
・UKPDS 81
・Legacy effect
・Steno-2 study
・Steno-2 studyの追跡調査
2.厳格な血糖管理と大血管症-最新の大規模介入試験結果が示すもの-
・UKPDS 33をはじめとする疫学研究の結果(2008年以前)
・2008~2009年にかけて報告されたメガトライアル
・メガトライアルの結果を受けて
・血糖コントロールによる心血管イベント発症抑制の根拠
・エビデンスから考える糖尿病治療とは
3.糖尿病管理の目標達成に向けた治療戦略
・血糖コントロールと血管合併症
・軽症・初期糖尿病の場合
・ 進行した糖尿病・動脈硬化の進んだ患者の場合
索引