
序 文
医師となっても,試験はつきものである。
そして放射線科専門医試験(旧放射線科認定医試験)は,放射線科各分野の専門医を目指す者がその前段階として受ける試験である。
『放射線科認定医試験』から『放射線科専門医試験』と名称が変わる予定である。
他科・他分野の医療スタッフにはなかなか認知されていないことではあるが,診断医・核医学医・治療医はそれぞれ専門が大きく異なり,同じ科だからといってすべてを網羅し理解することは大変難しい。
しかしながら,放射線科専門医試験は各分野の専門の道を究める前に受けるものであり,出題者としては,放射線科医としてここは是非抑えておいてほしいという気持ちで各分野の問題を作成しているはずである。
本書は,放射線科医を目指すすべての者を読者対象とし,放射線治療に関する過去問を通して,現在行われている放射線治療の基本を理解する一歩となれば,そして試験に合格するための一助となればと考えて作成した。 また,そこから少し広げた解説を付けることで,これから放射線治療医を目指す者にとっても放射線治療の理解をさらに深めて頂ければと考えた。
勿論,試験を受ける側にとっては受かることが最大の目的である。このことを十分に考慮し,当書では過去問を丁寧に解説することを心掛けた。このためこれらの解説を理解していただければ,違う切り口の問題にも対応可能になるだろう。
従来の過去問集との違いを挙げるとするならば,当書の最大の特徴は過去問を分野別に分類したことである。同じ分野に関する問題パターンをいくつもまとめて学ぶことができると同時に,どういった問題が過去何度も(形を微妙に変えることはあっても)出題を繰り返されているのか,すなわち重要なのかということが自然とわかるだろう。逆に過去に1回しか出題されなかったような比較的重要でない(かもしれない)問題も分かるという仕組みである。
そして重要なポイントであるにもかかわらず本書ではあまり言及できなかった内容として,2010年からUICC─TNM分類は第7版に改訂され,食道癌,胃癌,肺癌,前立腺癌などに大きな改訂が加えられた。2010年8月の試験ではTNM分類は従来の第6版に準拠していたが,2011年の試験からは新しい第7版を準拠する予定となっているので,注意が必要である。
今後ますます高齢化が進むに従って,さらにがん患者が増加し,放射線治療の重要性も増すであろう。そういった中で,本書が皆さんの放射線治療の理解を深めるわずかばかりの助けとなること,そして皆さんが近い将来わが国の放射線科の未来を担うよう羽ばたいていかれることを切に願う。
2011年3月
東京大学医学部放射線医学教室
山下 英臣
本書の構成
本書は,社団法人日本医学放射線学会ホームページ(http://www.radiology.jp/)上で公開されている2005~2006年の「放射線科専門医認定一次試験」,2007~2010年の「放射線科認定医認定試験」注)の中から問題をピックアップして出題基準に基づき分野(大項目)別に配列するとともに,各分野の中で,正文・誤文にかかわらず選択肢の記述内容をもとに更に出題基準小項目に準拠した領域にまとめ,解説を加えています。
単なる過去問題・解説集ではなく,選択肢の記述をみながら,わかりやすく系統的に放射線治療学が学べる内容となっています。
注)2009年5月より,従来の認定医は「放射線科専門医」に呼称が変更されています。本書では2005~2010年の試験を総じて「放射線科専門医試験」と記載しています。
序 文
本書の構成
総 論
・総論で用いる主な略語一覧
A 治療計画
B 化学放射線療法
C 生物学
D 物理学
E 管理技術
F その他
各 論
・各論で用いる主な略語一覧
A 中枢神経
B 頭頸部
C 胸 部
D 消化器
E 泌尿器
F 婦人科
G 血液・リンパ
H 内照射療法
I 緩和照射
J 良性疾患
K 治療計画
L その他
索 引