脳卒中の診断、病態を考えるうえで画像診断は必須であり、予後を把握するうえでも重要である。本書は脳卒中リハビリテーションにおける各疾患の代表症例の画像をはじめ、神経学的所見、急性期から回復期までのリハビリの経過を各画像とともに具体的に記載した、リハビリ治療を行うための有用な参考書。脳卒中疾患に携わるリハビリ科のPT、OT、ST、MSWや看護師のみならず、脳卒中の診療にかかわる脳神経外科、神経内科、内科ドクターや研修医にも活用してほしい1冊である。
序 文
脳卒中は死亡原因の主要な疾患であるのみならず,高齢者の寝たきりや認知症の原因となる最大疾患である.近年これらの治療にあたってリハビリテーションの重要性が指摘されている.急性期からのリハビリの開始が重要であるのみならず,十分なリハビリのための回復期リハビリへの移行が必須であることから,回復期リハビリ病棟のベット数も年々増加しつつある.脳卒中の診断,病態を考えるうえで画像診断は必須であり,予後を把握するうえでも重要である.
本書の構成は,総論では脳卒中各疾患の画像一般と一般的事項について述べ,各論では,日常よく遭遇する脳卒中症例を対象とし,急性期の画像と簡単な治療経過を含め,回復期リハビリの治療目標(計画),治療経過について説明した.PT,OT,STによる各評価法を用いて詳細にリハビリの経過を追って述べた.また障害の評価,および治療経過をわかりやすくするため図表を多く取り入れた.さらに,解説を加えて各症例の画像,リハビリの経過の提示とともに各疾患の病態の特徴並びに予後についてわかりやすく説明した.
本書の最後に各疾患の具体的症例(画像)の一覧とその索引ページを記してあるので,アトラスとしても普段の診療にすぐ役立つものと思われる.本書でリハビリの対象となった症例は,すべて系列の苑田第一病院から急性期治療後に,当院へ紹介された症例である.
本書は,各疾患の代表症例の画像,神経学的所見,リハビリの経過を具体的に記載していることからわかりやすく,今後の具体的なリハビリ治療を行っていくにあたって有用で,参考になるものと確信している.このことから脳卒中疾患に携わるリハビリ科のPT,OT,ST,MSWや看護師のみならず,脳卒中の診療にかかわる脳神経外科,神経内科,内科ドクターや研修医にも有用性が高く良い参考書となる.最後に本書の企画に助言をいただいた林 峰子氏,編集および作成にご助力いただいた早川喜代子氏に感謝致します.
竹の塚脳神経リハビリテーション病院
宮上光祐
■総論
脳血管障害の画像と一般的事項
1 虚血性病変
2 出血性病変
●各論
1 被殻出血
症例1 62歳,男性.右被殻出血
症例2 41歳,女性.左被殻出血
2 視床出血
症例1 57歳,男性.左視床出血
症例2 57歳,女性.右視床出血,脳室内出血
3 橋出血
症例 74歳,女性.右橋出血
4 小脳出血
症例1 62歳,男性.右小脳出血,脳室穿破
症例2 66歳,女性.正中~左小脳出血
5 大脳皮質下出血
症例1 57歳,男性.左前頭頭頂葉皮質下出血
症例2 46歳,女性.右側頭葉皮質下出血
6 脳出血,脳動静脈奇形
症例1 62歳,女性.脳動静脈奇形による左側頭葉出血
症例2 31歳,男性.脳動静脈奇形による脳出血+右急性硬膜下血腫
7 くも膜下出血(破裂脳動脈瘤)
症例1 52歳,女性.くも膜下出血,左中大脳動脈瘤
症例2 51歳,男性.くも膜下出血,前交通動脈瘤,くも膜下出血後水痘症
8 脳梗塞,内頸動脈閉塞
症例1 68歳,男性.心原性脳塞栓(右中大脳動脈領域),心房細動,右内頸動脈閉塞
症例2 65歳,女性.脳梗塞(右中大脳動脈領域),右内頸動脈閉塞
9 脳梗塞,右中大脳動脈閉塞
症例 78歳,男性.脳梗塞,右中大脳動脈閉塞
10 脳梗塞(左前頭葉)
症例 58歳,男性.心原性脳塞栓(左前頭葉),心房細動,左前大脳動脈狭窄
11 境界領域脳梗塞(右大脳分水領域)
症例 66歳,男性.脳梗塞(右大脳分水領域),両側頸部内頸動脈狭窄
12 ラクナ梗塞
症例1 74歳,女性.ラクナ梗塞(左放線冠,基底核)
症例2 71歳,男性.ラクナ梗塞(左放線冠,基底核),右頸部内頸動脈狭窄
13 小脳梗塞
症例1 70歳,男性.左小脳梗塞
症例2 62歳,男性.右小脳梗塞,左椎骨動脈狭窄
14 脳幹梗塞(橋)
症例1 78歳,女性.脳幹(左橋)梗塞
症例2 75歳,男性.脳幹(右橋)梗塞
付録 脳卒中 重症度の評価法 1,2
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