現代のストレス社会に森林浴の意義は大きくなってきている。リラクセーションとして知られる森林浴について最新の研究成果を含めサイエンティフィックにまとめた学術書。
序文
人類をはじめ多くの生物は地球の覆う森林に包まれて育まれてきた。2011年は国連の定めた国際森林年であることは余り知られていない。日本の国土の約7割は森林が占めるが、この森林を有効に利用する1つのツールとして森林浴を挙げることができよう。
森林浴や森林療法は代替医療の1つとしても知られている。
ITの発達のもたらす24時間社会で、ストレス性健康障害に陥る人々も企業のなかで問題視され、メンタルヘルスの重要性が指摘されている今日、心身のリラックスやリフレッシュに役立つ1つの手段として、森林浴の意義は決して少なくない。
本書〔エビデンスからみた森林浴のストレス低減効果と今後の展開〕は、森林総合研究所環境計画研究室長である香川隆英先生の編集のもと、同研究室の主任研究員である高山範理博士による森林浴に関する現時点におけるエビデンスに基づいた最新の研究成果を含め、本邦での歴史、経緯、その活用や今後の方向性にも言及した内容で構成され、かつ内外の文献も網羅されていて森林浴に関するタイムリーでかつサイエンティフィックな学術書として位置づけされてよい。
高山博士は、人間総合科学大学(学長 久住眞理)大学院研究科博士後期課程心身健康科学専攻で博士号を授与されているが、その研究論文のタイトルは「森林浴の森林的効果と個人特性の解明に関する研究─神経症傾向に配慮した癒し効果の高い森林浴プログラムおよび森林環境の提案─」であり、小生はその際に3年間にわたり指導教員として研究をサポートしたこともあって、今回、監修者として名を連ねることになった次第である。
本書によって、心身両面からの森林浴の効果の科学的実証がさらにすすみ、森林浴に興味を持つ医療従事者や一般読者はもちろんのこと、その関心が深まることで健康科学、心身医学、リハビリの領域においても新たな展開がなされることを願って止まない。
東邦大学名誉教授
人間総合科学大学名誉教授 筒井 末春
第Ⅱ部 心理的ストレス低減効果の個人差
第❶章 森林環境の印象評価の個人差と個人特性
A 印象評価と個人特性
B 調査方法
1.実験の概要
2.個人特性についての考え方
C 分析方法
D 分析の結果と考察
1.森林環境の印象評価と個人特性
2.森林環境の印象評価と性格特性
3.森林環境の印象評価と自己効力感
4.森林環境の印象評価と価値観・関心
まとめ
第❷章 森林浴のストレス低減効果の個人差と個人特性
A ストレス低減効果に個人差をもたらす要因とは?
B 実験の概要
C 調査方法
1.個人特性を調べる調査票
2.森林浴の心理的効果を調べる調査票
D 分析方法
E ストレス低減効果と個人特性との関係
1.ストレス低減効果と知識・経験等
2.ストレス低減効果と性格特性
3.ストレス低減効果と自己効力感
4.ストレス低減効果と価値観・関心
F ストレス低減効果と森林浴中の活動の関係
1.ストレス低減効果と歩行活動
2.ストレス低減効果と座観活動
まとめ
第❸章 神経症傾向と森林浴のストレス低減効果との関係
A 健常者の神経症傾向について
B 調査・分析方法
1.実験の概要
2.調査票
C 神経症傾向による被験者の分類
1.被験者の分類方法
2.被験者の分類結果
D 分析結果
1.『神経症傾向』が森林浴以前の気分の状態に与える影響
2.『神経症傾向』が森林環境の印象評価に与える影響
3.『神経症傾向』がストレス低減効果に与える影響
4.『神経症傾向』が森林浴の体験後の感想に与える影響
E 森林浴前から森林浴後の感想までの関連性
1.『神経症傾向』と森林環境の印象評価および最終的な感想
2.『神経症傾向』と森林浴の心理的効果および心身相関の関連性
3.印象評価・森林浴のストレス低減効果・感想の関連性
まとめ
第❹章 個人差に配慮したプログラム・森林環境整備方策の展開
A より実践的な管理へ
B 神経症傾向の高い利用者に効果的なプログラムおよび森林環境整備方策
C 整理方法
D プログラム
1.When(いつ)
2.Where(どこで)
3.With whom(だれと)
4.Who(だれを)
5.What(なにを)
6.Why(なぜ)
7.How(どのように)
E 森林環境整備方策
1.When(いつ)
2.Where(どこで)
3.With whom(だれと)
4.Who(だれを)
5.What(なにを)
6.Why(なぜ)
7.How(どのように)
まとめ
文 献
索 引