超音波検査のエキスパートがポケットエコーの活用術を解説。超音波検査がまったく初めての方にも、これから自分の専門領域以外に挑戦してみようという方にも、お奨めの一冊!
序 文
多くの病院では、まず外来診察室で主治医が「問診」し、「身体所見」を取得し、"必要な場合には"検査室での「超音波検査」をオーダーします。検査室に設置されている超音波診断装置は、200 kgの重量級で、かつ価格も2,000万円くらいのものが少なくありません。なるほど、このようなハイエンド超音波診断装置の診断能力はとても高く、その有用性は言うまでもありません。
以前からポータブル超音波装置はたくさんありましたが、多くは1~6 kgの重量があり、残念ながら真に「ポータブル(持ち運び可能)」ではありませんでした。2011年、本当に手持ちで携帯可能な390 gのVscanが登場しました。ポケットに入れることが可能な大きさで、価格も100万円以下です。
このVscanの出現で超音波検査の様子が変わりつつあります。
①心臓や腹部領域では、外来などで医師が取得する身体所見を補強し、「第2の聴診器」ともよばれるようになりました。
②その気になれば、各医師が常に携帯し、いつでもどこでも超音波検査を施行できます。
③いつでもどこでも、つまり在宅医療、救急現場、災害現場、教育現場など、使用可能な場所は無限です。
注意すべき点は、このVscanは「割り切った携帯型装置」であることです。画質や機能において、検査室にあるハイエンド装置には劣る点が多々あります。これは、手持ちで携帯できるようにするために「割り切った」結果です。したがって、このVscanのみで常に超音波検査が完結することはなく、"必要ならば"ハイエンド装置で精密検査をする体制が必要です。
しかし、このような限界を十分に理解して使用するならば、今までは考えられなかった場所や状況でも、超音波検査の高い診断能力を駆使することができます。百聞は一見に如かず、まずは手にとって使ってみることが大切です(短期間レンタルも可能)。その際の一助として、各領域の専門家の先生にこのVscanの使い方を解説していただいたのが本書です。超音波検査がまったく初めての方、あるいはこれから自分の専門領域以外にも挑戦してみようという方のお役に立てれば幸いです。
竹中 克
1 ポケットエコー装置Vscanとはどんな装置?
2 ポケットエコー装置Vscan:買う? 借りる?
3 ポケット心エコー:まずはたった3つの基本断面
4 ポケット心エコー:カラードプラと圧推定
5 ポケット心エコー:胸痛
6 ポケット心エコー:息切れ
7 ポケット心エコー:ショック
8 急性腹症の超音波検査
9 診察室で駆使するポケットエコー
10 産婦人科でのポケットエコー
11 在宅医療でのポケットエコー
12 東日本大震災での携帯型超音波装置の使用経験
13 ポケットエコーと教育
14 病院検査体制の変化
索引