安全性の高い標準化されたECTをめざし、理論と実践の両方に精通したスペシャリストの執筆陣がわかりやすく解説。重症度、緊急性、施設条件などにより対応が大きく異なる可能性の高い身体合併症に関する課題について柔軟な連携・対応がとれるよう、抑えておくべき点を中心にまとめられECT研修のテキストとしても必携の1冊。
ChapterⅠ ECTの基本知識
▶1 ECTをはじめるにあたって 金野倫子
▶2 ECTの適応 安田和幸,野田隆政
1 .わが国における急性期ECT適応に関する指針
2 .海外のECTガイドラインにおけるECT適応の動向
3 .国内外の各種精神疾患治療ガイドラインにおけるECTの位置づけ
▶3 ECTのインフォームド・コンセント 中村 満
1 .ECTにおけるICの阻害要因
2 .ECTのICは患者と医師の共同作業である
3 .ECTにおけるICが成立する要件
4 .説明は誰に行い,同意は誰から取得するか
5 .ECTの同意が得られない場合
6 .同意能力が不十分でも説明は行う
7 .ECTについての説明事項
8 .特殊な状況:未成年に対するECT
9 .医療過誤を回避するために
▶4 ECTの治療効果 川島啓嗣
1 .うつ状態(単極性/双極性)
2 .躁状態
3 .統合失調症
4 .カタトニア(緊張病症候群)
5 .その他の疾患
6 .児童・思春期
▶5 ECTの禁忌・使用注意 橋本 学
1 .安全にECTを施行するために
2 .ECTに際して重大な危険を伴う身体的状態
3 .ECTを施行するにあたって注意を要する身体的状態
▶6 ECTによる生理学的影響 門井雄司
ECT施行中の循環動態変動の原因
▶7 ECT時の心血管・呼吸器系および脳循環への影響と対策 門井雄司
1 .基本の麻酔
2 .心拍数への影響
3 .血圧への影響
4 .心機能への影響
5 .循環器系合併症
6 .循環動態安定化のための薬剤:抗コリン薬
7 .循環作動薬の選択
8 .脳循環への影響
9 .呼吸系への影響
▶8 身体合併症患者へのECT 門井雄司
1 .循環器系疾患
2 .呼吸器系疾患:喘息
3 .脳疾患と脳血管に関する合併症
4 .その他
▶9 ECTの有害事象①
呼吸器系,遷延性無呼吸,遷延性発作など 鮫島達夫
1 .ECTは安全なのか?
2 .ECT施行前の身体疾患の評価
3 .ECT施行前の呼吸状態の特徴:精神疾患特有の状態を考慮
4 .発作直後の呼吸状態と酸素化の必要性
5 .誤嚥性肺炎と急性呼吸窮迫症候群
6 .肺水腫
7 .肺血栓塞栓症:致死的疾患であり予防,早期診断と治療が重要
8 .深部静脈血栓症
9 .唾液分泌の増加
10 .気管支攣縮:喘息同様の管理と麻酔薬の選択が必要
11 .遷延性無呼吸
12 .遷延性発作
13 .口腔内損傷,歯牙損傷
▶10 ECTの有害事象②
せん妄,認知機能障害など 岩本崇志
1 .せん妄
2 .ECTによる認知機能障害
3 .躁転
4 .頭痛
5 .嘔気
6 .筋肉痛
▶11 ECTユニットおよび備品,消耗品 橋本 学
1 .ECTを施行する場所(ECT治療室・リカバリー室)
2 .治療室・リカバリー室の設備
▶12 ECTの機器管理 飯田仁志
1 .医療機器の安全使用を確保するための責任者
(医療機器安全管理責任者)の設置
2 .従事者に対する医療機器の安全使用のための研修の実施
3 .医療機器の保守点検に関する計画の策定および保守点検の適切な実施
4 .医療機器の安全使用のために必要となる情報の収集,その他医療機器の安全確保を目的とした改善のための方策の実施
▶13 メンテナンスECTおよび急性期ECT後の維持療法 竹林 実
1 .メンテナンスECT
2 .メンテナンスECTのメリットとデメリット
3 .メンテナンスECTの効果
4 .基本的知識:メンテナンスECT基本プロトコール
5 .基本的知識:メンテナンスECTの適応
6 .応用的知識:急性期ECT反応後維持療法のプロトコール
7 .レスキューECT
▶14 医療者へのECTの研修 荻原朋美
1 .研修の必要性
2 .医師への研修
3 .コメディカルへの研修
4 .海外でのECT研修
▶15 ECTの医療連携 野田隆政
1 .ECTを取り巻く環境の変化
2 .治療計画の1つとしてのECT
3 .医療連携の必要性
4 .医療連携の定着・発展
5 .医療連携のモデル
ChapterⅡ ECTの治療計画
▶1 ECTの施行前の評価・検査 奥村正紀,竹田美香,橋本知加子,木田 涼
1 .病歴聴取
2 .身体所見
3 .ECT施行前検査
4 .施行前の評価・検査アルゴリズム
▶2 ECT施行中の薬物療法の計画 神出誠一郎
1 .ECT施行に際する薬物療法概説
2 .ECTにおける薬物療法の注意点
3 .ECTとの併用禁忌,慎重に使用を検討すべき薬剤と推奨される減量の方法
4 .ECTコース中に減量を検討すべき薬剤と推奨される減量の方法
5 .ECT施行当日に使用する薬剤
6 .ECTと薬物療法の併用
7 .ECTコース終了後の薬物療法
8 .ECTコース中のよくある向精神薬調整例
▶3 ECTの治療計画
通算回数,頻度,刺激条件など 青木宣篤,嶽北佳輝
1 .ECTにおける治療方法の選択
2 .治療コース内の治療回数
3 .ECTの頻度
4 .刺激条件
5 .けいれん閾値(ST)に影響を及ぼす因子
ChapterⅢ ECTの実践手技
▶1 ECTにかかわる治療スタッフ 奥村正紀
1 .精神科医
2 .麻酔科医
3 .看護師
▶2 ECT直前の準備 飯田仁志
1 .入室前の準備
2 .治療室入室からECT直前までの準備
3 .サイマパッドの装着
4 .脳波・筋電図・心電図電極の装着
5 .電極装着時の注意点
▶3 ECTの麻酔 門井雄司
1 .ECT麻酔の流れ:プロポフォール,チオペンタールの導入
2 .海外を含めECTに使用されている麻酔薬
3 .日本国内におけるECTの麻酔薬
▶4 ECTの機器の操作 栗本直樹
1 .サイマトロン(Thymatron®)
2 .サイマトロンの準備
3 .刺激用量の設定
4 .患者の準備
5 .EEG/ECG/EMGの印字記録
6 .インピーダンスの測定
7 .ECT開始
8 .治療の終了
9 .治療後レポートの項目
10 .応用手技
▶5 発作の有効性評価と次回刺激用量の設定 上田 諭
1 .脳波で発作の有効性を判定
2 .1.5倍の%上げる(両側性):適切な刺激用量設定
3 .両側性電極配置におけるアルゴリズム
▶6 ECT施行後のリカバリー 奥村正紀
1 .ECT治療室からの退室
2 .リカバリー室・病棟への移動
3 .リカバリー室・病室での観察
▶7 けいれん不発への対応と次回刺激設定 嶽北佳輝
1 .十分な刺激用量に達していないECTセッション
2 .十分な刺激用量に達しているECTセッション
▶8 転帰および有害事象の評価 諏訪太朗
1 .ECTコース中の治療効果の評価
2 .ECTコース終了の判断
3 .ECTによる有害事象と身体合併症の評価
4 .ECTコース後の評価
ChapterⅣ 資料
▶1 タイムテーブル 野田隆政,竹田美香,橋本知加子,奥村正紀
1 .ECT前日までのタイムテーブル
2 .ECT当日施行前のタイムテーブル
3 .ECT施行中のタイムテーブル
4 .ECT施行後のタイムテーブル
▶2 説明と同意書 中村 満
1 .説明書例
2 .同意書例
3 .文書例を利用するにあたっての注意事項
4 .説明文のオプション
▶3 患者・家族用パンフレット 和田 健
電気けいれん療法(ECT)に関する説明パンフレット例
▶4 クリニカルパス 澤山恵波,野田隆政
▶5 医療連携用資料 野田隆政
医師用:ECT患者紹介シート
看護師用:ECT患者紹介シート
索引
編者あとがき 巻末