認知リハビリテーションVOL.24 NO.1には、板口典弘先生による特別寄稿「神経心理学と統計」、さらに「外傷性脳損傷(TBI)に対する心理的アプローチ」をテーマとした本誌初となる特集原稿を掲載。TBIに関する理論的な背景や臨床研究の系統的レビュー、また不安や抑うつ、怒りなどの感情面の症状に対する心理的アプローチについて、実際の症例を呈示しながらわかりやすく解説。その他、記憶障害、他人の手徴候、失読失書、道順障害など、さまざまな高次脳機能障害例に対するリハビリテーションを報告しており、臨床にも研究にも役立つ1冊となっている。
(編集後記より)
脳と心。外因と心因。生物学的治療と心理学的治療。二つに分けて線を引くのは,概念をわかりやすくするための便法にすぎなかったはずが,ひとたび線が引かれると両者の分離が促進され,気づいた時には遠く離れて接点が見えなくなる。本研究会として初めて行われたワークショップはそんな状況を解消させる画期的なもので,本号の「特集」は,その貴重な記録です。専門分野によって異なる意味で用いられやや混乱している「認知」という語が,逆に両者を結ぶキーワードになりそうです。(村松太郎)
特別寄稿
神経心理学と統計:統計的仮説検定における効果量と検出力の問題(板口典弘)
特集 外傷性脳損傷(TBI)に対する心理的アプローチ~認知行動療法等のスキルを活かして
座長記(菊地俊暁)
1.文献レビューの結果と今後の可能性について
(堀田章悟)
2.頭部外傷後の心理症状への支援
(橋本優花里)
3.後天性脳損傷患者における激しい怒りの制御困難が,修飾型認知行動療法により消退した6症例:“脳損傷後の怒り=器質因”はどこまで本当なのか?
(宗 未来・三村 將)
原著
1.脳梗塞により左前頭葉に損傷を受けた症例に対する前頭葉機能訓練:WCSTの応用とcolour stroop効果への影響
(菅波美穂・小林一夫・今村健太郎・小松三佐子)
2.言語性ワーキングメモリ容量が潜在学習に与える影響:誤りなし学習の効果に関する検討
(有川瑛人・窪田正大・木山良二・原口友子)
3.左右の異なる手に他人の手徴候を呈した2症例に対するリハビリテーションの経験
(根岸沙樹・清水賢二・田後裕之・木村匡男・高橋守正・和田沙織・酒井 浩)
4.前脳基底部健忘重症例に対する時間的見当識訓練
(山本小緒里・西川順治・穴水幸子)
5.小児期発症高次脳機能障害者の記憶を含む認知機能の長期経過
(中島友加・荏原実千代・大塚恵美子・先崎 章・吉永勝訓)
抄録
1.頭部外傷後に多発したうっかりミス(action slip)に対するリハビリテーションの検討
(中島明日佳・船山道隆・中村智之・稲葉貴恵)
2.左視床腫瘍摘出術後に超皮質性運動失語を呈した一例−自発話低下の要因について
(石澤朋子・安藤牧子・中村拓也・里宇明元)
3.失読失書を呈する症例に対する認知リハビリテーション
(富永真紀子・仁井田りち・田渕 肇・斎藤文恵・穴水幸子)
4.道順障害を中心とした高次脳機能障害を呈した中学生に対する学校における神経心理学的支援
(田邉美紀・船山道隆・中島明日佳・松川 勇・中村智之)
5.高次脳機能障害を持つ人の就労にかかわる要因
(船山道隆)