新しいメンタルヘルスサービス システムをどう作るか?
元永拓郎:著

2010年発行 A5判 145頁
定価(本体価格2,300円+税)
ISBN 9784880028101

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内容の説明▼
(序文より抜粋)
 この本でいうメンタルヘルスとは、心の健康という意味であるが、細かな定義は別として、人生を豊かにするための、「気力」とか「生き生きとした心」にまつわるものといってたぶん間違いはないだろう。
 心の健康(メンタルヘルス)について語るだけでも、自己実現、気力、生き生きとした心、個別性、主体性といった、雲をつかむような抽象的な言葉が出てきた。心の健康とは何かという議論をするには、これらの言葉を避けて通ることはできないかもしれない。しかし一方で、いまを生きている私たちが、少しでも心の健康をよい方向にもっていくためには、はたしてどうすればよいのか、この現実的かつ具体的な答えを求める切実な問いが、対人援助職に投げかけられる。
 本文で繰り返し述べるが、システム作りには対人(ヒューマン)サービスにかかわるすべての人が関係する。かかりつけ医の方々を含め地域医療にかかわる皆さん、地域保健・福祉に関与する方々、産業や学校の関係者、まちづくり関係者の方々、一般市民で心の支援に関心のある皆さんにも、ぜひともこの本を手に取ってもらえればと願う。
 心の支援活動については、すでにさまざまなすぐれた活動が報告されている。しかし、ある特定の魅力あるリーダーの努力や献身で、何とか行われている場合が多い。リーダーが代替わりしても質の高い支援が継続するためには、何が必要なのだろうか。その答えが「システム」と私は考える。この本が、心の支援システムをこれからも担い続ける皆さんにとって有意義なものとなり、日本に住む皆さんの心の健康の向上にとって微力ながら役立つならば、著者としてこの上ない喜びである。
おもな目次▼
第Ⅰ章 メンタルヘルスサービスとは何か?
1.ある予備校でのメンタルヘルスサービス
2.個と集団
3.量的または質的
4.分断された個の出現=近代化
5.医療と数字
6.病と健康
7.日常性と緊急性
8.システムの発見
9.システムの科学性

第Ⅱ章 システム作りの実際
1.サービスシステムのプログラムとは?
2.予備校でのサービス
3.素人性と専門性
4.危機介入について
5.専門学校でのサービス
6.同質性と異質性
7.大学病院における活動
8.対人支援の近代化
9.大学教員としての活動
10.教育学的支援と心理学的支援の違い
11.産業領域での活動
12.経済活動とメンタルヘルス
13.心の支援システムの11の軸

第Ⅲ章 コミュニティの発見
1.コミュニティの発見
2.コミュニティ感覚
3.八丈島での経験
4.都市部でのメンタルヘルスサービス
5.コミュニティ実践モデル-学校、職場、地域
6.心理学的支援の統合化
7.在宅認知症ケア連絡会
8.認知症BSAP研修
9.評価の衝撃
10.システム作りの3レベル

第Ⅳ章 システム作りの方法
1.システムを作る-明日からできること-
1)かかわりにシステムを見出す
2)かかわっている自分の内面に起きている感情を生かす
3)すでにあるかかわりをチーム作りに生かす
4)チームを新たに作る
5)まわりの成果を最大に評価する
2.システムを作る-数ヵ月かけて行うこと-
1)システムを共に作る仲間を探す
2)失敗こそチャンス
3)成果を内部に報告する
4)若手を育て引き継ぐ
5)外部のシステムと交流する
3.システムを作る-数年かけて取り組みたいこと-
1)コミュニティネットワークを形にする
2)メンタルヘルスの諸活動と連携する
3)成果を外部に報告する
4)制度の欠点を整理し提案する
4.システムを点検する
1)5本柱による整理
2)11の軸での検討
3)時間軸を導入する
4)システム評価と評価システム

第Ⅴ章 システム作りのための日本の形-これからのこと-
1.人と人とのつながりをどう再生するか
2.本人と家族ということ
3.心の支援のグランドデザイン
4.専門家をどう供給し質を維持するか
5.法律をどう整備するか
6.まちづくりの視点
7.コミュニティとしての大学の可能性
8.心の健康ははてしない夢なのか