推薦の言葉
新見先生は,まず自分に,そして家族に使って漢方薬の効果を実感されました.私もかつてそのようにして効果を確かめました.
この本は,漢方理論も漢方独特の用語もなくてわかりやすい.しかもフローチャートで症状から処方を選んでいます.漢方馬鹿の人間から見ると実に大胆な発想です.まず最も妥当な処方選択を示し,それが効かないときに次に使う処方を示しています.こういう本こそ,実地臨床に役立ちます.
その症状に,この処方を選ぶ.最適とされる処方を選択すること,それが定石です.それは,昔から現在まで,多くの先輩が使ってみた経験に基づくもので,先人の知恵の結集です.漢方でも何でも,まず定石を使うことを覚えることが必要です.学ぶ者は,初めは定石を覚え,やがて定石をはずれて応用することを学ぶのです.初めから定石を無視しては何もなりません.
名医と云われた大塚敬節先生も,一度で処方が決まり,そのまま治癒に結びついたわけではありません.まず定石とされる処方を使う.効かなければ,次の処方を考えます.試行錯誤は漢方治療に避けられません.必要な手順のことが多いのです.
そのようにして,この本には,すぐに使える処方が用意されています.第一,小さくてポケットに入れられる.本当に良い本が出来ました.私の漢方入門の頃を思い出して,こういう本があったら良かったと思います.これから漢方薬を使ってみようとする人にお勧めします.
2011 年 1 月 25 日
社団法人日本東洋医学会元会長名誉会員 松田 邦夫
はじめに
漢方に興味を持って約 10 年.松田邦夫先生に教えていただくようになってから 4 年の年月が流れました.数年前からわかりやすい漢方の入門講座を全国で行い,その講座の臨場感をそのままに「本当に明日から使える漢方薬」を書き上げました.漢方嫌いであった昔を思い出しながら,漢方薬はうさんくさいと感じている昔の私のような先生方にわかりやすく解説を加えた,快心の出来映えと自分に酔っていた時期もありました.ところが,やっぱりなかなか使えないとのご意見が少なからずありました.
そこで,漢方理論も漢方用語も一切登場しない本を書こうと思ったのです.そして漢方の世界では禁じ手であるフローチャートにしました.漢方は有効性の打率を上げるために,漢方理論や漢方診療を駆使して築かれています.それを知っていながら,あえて「どんな○○にも」といったように処方を配列しました.
つまり,打率は高くないのです.でも今の西洋医学的治療で困っている方々のためには,それもありだろうと思っています.ぜひ,この「フローチャート漢方薬治療」を使って,どんどんと漢方薬を困っている患者さんに処方してください.打率は低いですが,それでもけっこう有効です.そして打率を上げたければ漢方薬を使用しながら勉強してください.そんな実地臨床で本当に使用できる漢方薬使用の入門書です.ぜひ,「本当に明日から使える漢方薬」と一緒にご使用ください.
2010 年 12 月吉日
新見 正則
はじめに
本書の特徴・使い方
1章 補完医療としての漢方
民間薬である熊胆
民間薬と漢方薬の違い
漢方は変化球
漢方の知恵とは
漢方薬治療と漢方治療
補完医療としての漢方
漢方医療の将来
2章 フローチャート活用の心得
ルールを知る
話し方を工夫する
飲み方の説明を工夫する
副作用について上手に話す
数回処方して治らないときの話し方
打率より「打つこと」が大切
3章 疾患別処方フローチャート
●呼吸器疾患関係
風邪にかかりたくない
インフルエンザ
風邪っぽい
風邪(がっちりタイプ)
風邪(ややがっちりタイプ)
風邪(やや弱々しいタイプ)
風邪(弱々しいタイプ)
咳
空咳
COPD や気管支拡張症
喘息
●消化器疾患関係
便秘
麻子仁丸(大黄)で腹痛がくる便秘
下痢(西洋薬で無効)
高級胃薬として
過敏性腸症候群
イボ痔
繰り返すイレウス
口内炎
肝炎
●循環器疾患関係
高血圧
起立性低血圧
動悸(西洋医学で異常のないもの)
●泌尿器疾患関係
頻尿
膀胱炎
尿管結石
インポテンツ
●精神・神経疾患関係
睡眠障害
睡眠障害(柴胡剤を使用)
片頭痛
頭痛(片頭痛以外)
神経痛
認知症
悪夢
●運動器疾患関係
整形外科的疾患の痛み止め
腰痛の急性期(ぎっくり腰)
坐骨神経痛
間歇性跛行
慢性腰痛
変形性膝関節症
むち打ち症・頸椎症
打撲・捻挫
●婦人科疾患関係
更年期障害もどき
更年期障害と婦人科疾患
月経前緊張症
経血量が多い
生理・妊娠・出産で悪化
妊娠時の漢方
乳腺痛
不妊症・習慣性流産
●耳鼻科疾患関係
花粉症
めまい
めまい(キーワードから処方)
蓄膿症
扁桃炎
鼻出血
●眼科疾患関係
アレルギー性結膜炎
●皮膚科疾患関係
湿疹・アトピー
湿疹・アトピー(キーワードから処方)
湿疹・アトピーによる皮膚の痒み
蕁麻疹
手荒れ
にきび
帯状疱疹後の痛み
●高齢者の疾患関係
初老期の訴え
最期まで元気に
●子どもの疾患関係
子どもの常備薬
虚弱児・虚弱な方
おねしょ(夜尿)
夜泣き
●がん医療関係
がんになったら
抗がん剤(イリノテカン)による下痢
●その他
入院したら
手足のほてり
のぼせ
肥満
水太り肥満
食欲不振
冷え症
しびれ
暑気あたり(軽い熱中症)
疲れ・だるさ
呑む前・二日酔い
のどの違和感
しゃっくり
こむら返り
下肢静脈瘤・深部静脈血栓症
リンパ浮腫
腹部膨満感
しもやけ
口渇
海外旅行用漢方
透析の患者さんに
4章 処方が思いつかないときに
処方が思いつかない❶
処方が思いつかない❷
処方が思いつかない❸
処方が思いつかない❹
処方が思いつかない❺
処方が思いつかない❻
処方が思いつかないときのまとめ
より打率を上げるには
あとがき
参考文献
著者略歴