クリッチュリー鏡像書字
本村 暁(行橋記念病院副院長):訳編

2011年発行 A5判 86頁
定価(本体価格2,500円+税)
ISBN 9784880028309

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内容の説明▼

Ⅰ.臨床的側面

はじめに
 鏡像書字(mirror─writing)(同義語、ecriture en miroire[仏]、Spiegelschrift[独]、lithographic writing、levography、abduction─schrift、scrittura speculare)とは、通常と反対方向に書かれ、各々の文字も反転した書字をいいます。書かれた文字は、鏡の前に掲げないと判読が困難で、鏡像書字の身近な例には、吸い取り紙にみられる文字の跡があります。
 鏡像書字は最も対照的な2つの状態―すなわち知的障害を有するものと、高い知能をもった者―にみられます。Soltmanは、鏡像書字を病んだ精神の鏡であると述べていますが("in der Spiegelschrift der Spiegel und Ansdruck einer kranken Seels")、これは本来正常な過程である、とみている研究者もいます。鏡像書字は小児にも成人にもみられ、無意識にでも、故意にでも生じることがあります。
 鏡像に書くことは少しの練習で誰にでもできる、ということが重要です。また、無意識に逆転した文字があらわれる手技があり、たとえば、前頭部に貼った紙や、カードの裏面、身体と直角の矢状断面の両面、これらに書くと文字は鏡像書字になることがあります。しかし、このような行為は手品じみたもので、当面の問題には何ら答えを与えるものではありません。

本書に述べられる内容は1928年3月7日、パリ警視庁付属医務室において口演された。

おもな目次▼

Ⅰ.臨床的側面
・古い文献から
・Fox and Holmesの症例
・ダ・ヴィンチ ノート
・意識・注意の障害と鏡像書字
・言語発達と鏡像書字

Ⅱ.発生機序
・visual hypothesis
・motor hypothesis
・その他のメカニズム説
・Drinkwaterの症例
・鏡像書字を読む能力
・Fraenkelの症例

Ⅲ.アルファベットの発達
・文字の起源
・犂耕体とは
・Claphamの症例
・利き手の問題

Ⅳ.倒立書字と下向き書字
・概説
・Ohmの症例
・Degalliersの症例
・倒立書字の症例
・下向き書字

Ⅴ.逆転発話
・概説
・Pickの症例
・逆転発話の分類
・Collierの症例
・Downeyの症例
参考文献

解説
鏡像書字について……波多野和夫
臨床神経学のなかの鏡像書字……田代邦雄
鏡像書字の諸相……杉下守弘

解題
科学のなかの鏡像書字……本村 暁

あとがき