推薦の序
新見先生はとてもユニークなドクターです。
医師としてやっていることもユニークですが、全てがきちんとした学問的業績や努力に裏打ちされています。今回さらに、inactiveだった生活習慣をactiveなものに転換することに成功し、それに留まらずトライアスロンに挑戦して達成してしまったのですから、この本は大変貴重な症例報告と言えると思います。
世の中には身体を動かすのが好きな人と、嫌いな人がおります。その比率は時代や国や年齢や性別などで差はあるものの、例えば過去のある調査で、アメリカでは人口の60%は定期的運動習慣が無く、30%はほとんど運動していないことが分かりました。つまりその時代のアメリカ人の9割は身体を動かすことが嫌いか、あるいは嫌いとまでは言わないものの実際には動いていなかったというのが現実なのです。この数字がその後どれくらい改善したかは不明ですが、先進国ではいまだに人口の大部分が十分な運動習慣を持っていないと考えられています。その一方で、健康寿命を延伸するにも、長寿遺伝子のスイッチを入れるにも、脳を健康な状態に保つにも、確実な方法は運動しかないと考える十分な科学的エビデンスが次々に明らかになってきています。
私の専門はスポーツ医学と膝関節外科で、健康をキーワードに研究を行う健康マネジメント研究科という大学院も兼務しています。私の外来には運動をやりすぎて関節を壊しかけた方と、運動すれば解決できるのに運動が嫌いでできない方の両方が通ってきます。実は運動好きな人に運動を止めさせることも、運動嫌いな人に運動を始めてもらうことも、実際は両方ともほとんど不可能と言えるほど難しいのです。ただし、前者については運動を続けながらできる多くの対策があります。しかし後者については有効な対策がありません。運動嫌いの人に運動してもらおうとして今までどれほど多くの試みが失敗してきたことか。そこにこの本の価値があります。たった一人でも成功事例があることが分かり、その経緯が大変楽しく、かつ具体的に示されています。私などは読んだだけで自分がトライアスロンを完走したような気分になれました。お読みになった方は、なぜ自分にできなかったことが新見先生にはできたのか、胸のつかえが通るようにすっきりと理解できるはずです。この本のおかげで生活習慣をactiveに転換できたという方が一人でも増えることを心から祈っております。
平成二三年九月
慶應義塾大学教授 大谷 俊郎
プロローグ
娘とプール/挑戦しない自分/トライアスロンが人気ですよ
第一章 トライアスロンとは?
トライアスロンって何/五一・五/誰でもできる(泳ぐ、自転車、走る)/トライアスロンの歴史
トライアスロンの魅力/かっこいい/競争が目的ではない(完走が目的)/いつまでも楽しめる/いつからでもはじめられる/努力が報われる(才能は不要)/努力の方向性が理解できる/仕事の負荷に耐えられるようになる/終わりが見えないことにも取り組める/タイムマネジメント能力/仕事がはかどる/現状分析ができるようになる/有酸素運動は体によい/有酸素運動は頭によい/理解できない人にやさしくなれる/新しい仲間/やると決めること、はじめること、申し込むこと/完走の快感、勇気あるリタイア
第二章 漢方の限界
漢方の限界/漢方の師匠、松田邦夫先生
第三章 いざトレーニング開始
筋肉トレーニング/筋肉トレーニングの開始 二〇〇九年一〇月二三日 横尾さんと会う/運動って何?/僕の欠点/成功の過程を感じにくい/パーソナルトレーナーのおかげ
スイムの練習/水泳の開始/蹴伸び/上達がみえるので楽しい/TIスイム/なんちゃってバタフライで二五m/クロール/スイマーズショルダー/アイアンマンスイム/でもやっぱりまだまだ
バイクの練習/ロードバイクの購入計画/ロードバイク来る/バイク練習会参加/ビンディングペダル/立ちゴケ/八〇㎞ロングライド/おしりが痛い/風の抵抗/他の必需品/サイクルコンピューター/自分で練習/バイクは事故に注意/夜の走行/自転車は軽車両/ローラー台
ランの練習/ランニング開始/コーチとの相性/ランニングを習う/オーバーユース症候群/歩き方・走り方/ランシューズ/心拍数モニター
トライアスロンのための練習/トライアスロンスクール/ウエットスーツ/フレッシュマンズキャンプ/家族の理解
第四章 トライアスロン大会に挑戦
トライアスロン大会に向けて/どの大会に申し込もうか/他の大会にも申し込もう/大会に向けて/シュミレーション/トイレ/帰りの方法/いよいよ前日
いざ本番、いよいよ大会出場 遊水地ふれあいトライアスロン大会(二〇一一年五月一五日)/起床から到着まで/到着から会場まで/競技説明/スイムの本番/バイクへのトランジション/バイクの本番/ランの本番/なんとか完走して
なんとか大会終了し、その後/小雪ちゃん/プールで反省/宮塚&藤原合宿/再びTIスイム/藤原裕司スタイル体験キャンプ/海で練習
日産カップ神奈川トライアスロン大会(二〇一一年六月一二日)
館山わかしおトライアスロン(二〇一一年七月一〇日)
第五章 これから
夢と挑戦/無理せずじっくり/生涯、走れる距離は決まっている?/還暦までにアイアンマンに出てみたいな/八〇歳でアイアンマン
医師として/西洋医として/スポーツドクターとして/漢方医として
娘への手紙