筒井末春(東邦大学・人間総合科学大学 名誉教授):監修
島田凉子(人間総合科学大学人間科学部 教授):著者
交流分析(TA)における心理療法理論を具体例を示しながら、よりわかりやすく解説した珠玉の1冊。心理的問題を抱えたクライエントたちとの体験をどう受け止め、どう生かせばよいのかという、思考を深めるノウハウを追究。特に関係性アプローチに、より多くの具体例を示した。サイコセラピストはもちろん、広く心理療法を学び、実践する人に役立ててほしい。
監修にあたって
島田先生とは1994年4月東邦大学医学部心身医学講座の非常勤研究生として採用されたのが,小生との出会いの始まりである。東邦大学・人間総合科学大学 名誉教授
筒井末春
2016年3月
はじめに
本書は,交流分析(Transactional Analysis:TA)における心理療法(サイコセラピー)理論について,具体例を用いて解説するものであるが,TAセラピストだけでなく,広く心理療法を学び,実践する人の役に立つことを目指している。TAの出発点である精神分析や発展過程で影響を受けてきた他の学派の理論にも触れつつ,TAにおける心理療法理論の変遷をたどり,人の変容を促進する治癒要因について考える。ケースを想定して解説することを通し,サイコセラピストとして,心理的問題を抱えたクライエント達との体験をどう受けとめ,どうセラピーに生かすかについての考えを深めたい。CONTENTS
監修にあたって 3
はじめに 5
第1章 TAとは 9
第2章 古典的TA 14
1.バーン派のTA classical school 14
2.4つの基本理論 15
①「自我状態 ego-state」分析 15
a.構造分析 15
b.機能分析 17
②「交流(やりとり) transaction」分析 18
a.平行交流(相補交流) 18
b.交叉(交差)交流 19
c.裏面交流 19
③「ゲーム game」分析 21
④「脚本 script」分析 24
3.汚染解除 decontamination 26
4.バーンによる8つのセラピー操作 therapeutic operations 28
a.質問 interrogation 28
b.特定化 specification 28
c.直面化 confrontation 28
d.説明 explanation 28
e.例証 illustration 29
f.確認 confirmation 29
g.解釈 interpretation 29
h.結晶化 crystallization 29
5.バーンによる8つのセラピー操作を適用した具体例 29
①ケース1 Aさん 29
②解説 33
第3章 再決断療法 redecsion therapy 35
1.再決断療法とは 35
2.契約と主体性 36
3.ゲーム=投影同一視(化)と,再決断療法 38
4.再決断療法におけるセラピストの役割 39
5.再決断療法のプロセス 41
6.再決断療法の適用 41
7.再決断療法の具体例 43
①ケース2 Bさん 43
②解説 50
8.再決断療法・チェアワークの具体例 52
①ケース3 Cさん 52
②解説 58
9.「美女と野獣」か「カエル王子」か 59
10.再決断療法・チェアワークの失敗 66
①ケース4 Dさん 66
②解説 66
第4章 関係性TA relational TA 69
1.関係性TAとは 69
2.<C>の混乱とスキゾイド・プロセス 71
3.混乱解除 deconfusion 75
4.セラピストの体験とセラピーのプロセス 76
5.関係性アプローチの実際 79
①セラピストの感覚を使う ケース5 Eさん 80
②セラピストの自己開示 ケース6 Fさん 80
③メンタライゼーション ケース7 Gさん 81
④「共感」の困難さ ケース8 Hさん 85
a.ゲーム 86
b.スーパービジョン 87
c.パラレル・プロセス 89
d.セラピストの変容 91
第5章 人格適応論を用いたケースの見立て 95
1.人格適応とは 95
①生き残るための人格適応(0~18ヵ月の間に身につけた人格) 95
a.スキゾイド的 95
b.パラノイド的 96
c.反社会的 96
②行動上の人格適応(18ヵ月~6歳の間に身につけた人格) 96
a.受動攻撃的 96
b.強迫的 96
c.演技的 96
2.人格適応論の視点を含めたHさんの見立て 96
まとめ 98
付録 99
文献 101
あとがき,謝辞 105
INDEX 108