新見 正則(帝京大学医学部外科准教授)・岡部 朋子(一般社団法人 日本ヨガメディカル協会代表理事):著
2017年発行 A5判 176頁科学的根拠はなくても、健康や病気に対する効果が期待できるなら、メディカルヨガを始めてみませんか? 不調の悩みごとに一つひとつ、ヨガのポーズを写真とコメントでわかりやすく解説しています。基本的に危険なポーズはありません。ヨガってなんだかいいらしいと思えるメディカルヨガの入門書です。
はじめに「ヨガってなんだか いいらしい」無理なく、楽しく、それぞれに
科学的根拠はなくても効果を期待できるなら。 岡部先生がメディカルヨガの紹介に僕の外来に来たときに、最初に、「どんな人ならメディカルヨガができるのですか?」と尋ねました。すると「息をしていればどなたでもできます」と言われました。その一言で僕は決心しました。愛誠病院でメディカルヨガをやってみようと。すると、あちらこちらから「結構よさそうだ」というコメントをもらいました。不思議です。でも臨床医としては、医療従事者として、なにかよい効果があり、そして副作用や怪我がなく、安価であれば、なんでもOKです。
医療に30年以上携わり、西洋医学の素晴らしさを体感する反面、残念ながら西洋医学の限界も明らかに感じます。西洋医学はますます進歩を続けるでしょうが、残念ながら、現状の西洋医学では治せない訴えも多々あります。また、大分よくしてもらったがもっとよくなりたいという願いもあるでしょう。そしてできれば病気になりたくないという希望も当然にあります。そんな期待に応えられるひとつの可能性がメディカルヨガなのです。
西洋医の目で見れば、そこに、メディカルヨガにサイエンティフィックな根拠はまだまだ足りません。むしろ、僕が理解できないヨガ用語が並ぶと、またインドの言葉が登場すると、僕のメディカルヨガに対する応援したいイメージが思いっきりトーンダウンするのです。僕の理解を超えた仮想病理概念での理屈を並べられると、「そうであれば、こういう理由から現代医学的な理屈に合わないではないか」という批判の心が頭をもたげるのです。
「メディカルヨガは確かによさそうだ」 僕にはそれだけのメッセージでよいのです。現代西洋医学が存在しない頃からの、精一杯の知恵のひとつがヨガでしょう。それを現代の医療になんとか利用しよう、なんとか現代医療の補完をしようというのが、メディカルヨガの神髄です。ですから、この本には一切仮想病理概念は登場しません。ヨガ用語も登場しません。そしてインドの言葉も出てこないのです。まずは、先入観を排除して、試しにやってみようというのがこの本の立ち位置で、この本を上梓する理由なのです。
「ともかく、やってみてください」 それが最大のメッセージです。この本ではわかりやすくいろいろなポーズを載せています。基本的に危険なポーズはありませんが、立つのがおぼつかない人には立っていることだけでも危険です。人にはそれぞれ限界があります。そんな限界はちゃんと理解しつつ、この本を利用してメディカルヨガに親しんでください。ボーズの多くはなんと僕が岡部先生の指導によってメディカルヨガを楽しんでいる写真です。ぜひ、見よう見まねで、ご自身でやってみて、また家族に、そして患者さんに勧めてください。
メディカルヨガをスポーツのように考えると、ちょっと危険です。スポーツは多くの場合、それにはまると、その魅力に取り憑かれると、その気持ちよさを味わうと、どんどんとエスカレートしていきます。それは精神的には素晴らしいことで、そして快感がわき起こります。でも危険も増幅します。それがスポーツの楽しさであり、反面危険性をはらんでいる部分です。メディカルヨガは、メディカルと謳っている以上、安全であることが大前提です。ですから、くれぐれも無理はしないでください。自分ができる範囲で、気持ちよくなることが大切なゴールです。
実際に、病院で行ってみると、本当に人生の終焉を迎えつつある人にも効果的です。ベッドで寝たきりの人でも岡部先生が僕の質問に最初に答えたように、自分の意思で呼吸さえできればメディカルヨガが有効です。また、精神科病棟では、もっとメディカルヨガの有効性を体感します。精神科で入院が長い方は、お世辞は決して言いません。そんな患者さんたちが、メディカルヨガで集まると、生き生きとし出すのです。それこそ片方の鼻から息を吸って、反対側から出すということをやるだけでも、テンションがアップするのです。本当に不思議です。
メディカルヨガは現状では、やってよかった、決して悪くはなかった、危なくはなかった、そして高価ではないというのが導入の動機です。しかし、これから医療現場にもっと浸透するには、アメリカで行われているような医療のニーズにあった臨床研究も必要でしょう。僕は経験から導かれていることを、決して否定はしません。そして、今ここにその正当性を担保するサイエンスがなくても使います。でも、歴史の叡智にあぐらをかいていれば、いずれ誰もが見向きもしなくなるでしょう。今のサイエンスのレベルに合わせた臨床的研究は近い将来必須です。とくにメディカルヨガをますます普及させるには不可欠なデータと思っています。ぜひ、この本を利用してメディカルヨガの有効性を感じ取っていただき、この本が近い将来、たくさんのメディカルヨガの有効性を示す臨床研究が登場する嚆矢となることを願っています。この本で、興味を持ち、そしてもっとメディカルヨガに触れたい方は、ぜひメディカルヨガの実際を体感しにスタジオにお越しください。 健康には、また病気を少しでもよくするには、些細な努力の積み重ねが大切と思っています。なにかひとつをやればすべてが解決するような魔法の引き出しは残念ながらありません。なんとなくよさそうなことを積み重ねて、健康が維持でき、また病気から回復できるのです。そんなちょっと些細な、でも実は大切な引き出しのひとつがメディカルヨガだと思っています。そんなメディカルヨガの入門書が本書です。アメリカと同じように、メディカルヨガが健康維持に、健康管理に、病気の撃退に、いろいろな症状の緩和に、広く使用される日を夢みています。
2017年 吉日
新見正則(帝京大学医学部外科)
■究極のらくちんポーズ7選
緊張を緩めたい/気分を上向きにしたい/リフレッシュしたい/ちょっと逆さにしてみよう/運動不足を解消したい/何もかも忘れて心を休めたい/静かに休んで体力を回復させたい
■不調の原因別ポーズ
呼吸器の悩みCase1-5
息が苦しい/呼吸が浅くて速い/鼻のむずむず/熱っぽい/だるい
消化器の悩みCase6-14
下痢・便秘1/下痢・便秘2/腹部膨満感1/腹部膨満感2/糖尿病/老廃物の排出をうながそう/二日酔い/吐き気・めまい/口のかわき
循環器の悩みCase15-19
ストレスによる動悸・高血圧/ふくらはぎが重苦しい/緊張感が緩まない1/緊張感が緩まない2/気持ちが落ち着かない
泌尿器の悩みCase20-22
尿漏れ1/尿漏れ2/インポテンツ
運動器の悩みCase23-36
腰痛予防/腰痛1/腰痛2/ぎっくり腰の予防/四十肩1/四十肩2/四十肩3/ロコモティブシンドローム1/ロコモティブシンドローム2/ロコモティブシンドローム3/転倒予防1/転倒予防2/転倒予防3/指・腕の痛みやしびれ/
耳・鼻・眼の悩みCase37-40
目の疲れ・かすみ/めまい/嚥下障害/鼻水・鼻づまり
皮膚の悩みCase41-42
かゆみ/湿疹・アトピー・肌荒れ
こころの悩みCase43-85
心の疲れ1/心の疲れ2/心の疲れ3/心の疲れ4/心の疲れ5/燃え尽き症候群もどき/やる気が出ない1/やる気が出ない2/やる気が出ない3/やる気が出ない4/うつっぽい1/うつっぽい2/心のモヤモヤ/クヨクヨしてしまう/行き詰まり感/閉塞感/孤独感1/孤独感2/落ち込み・ハイテンションすぎる/緊張感が緩まない1/緊張感が緩まない2/気持ちが落ち着かない/焦り/イライラ・神経過敏1/イライラ・神経過敏2/フラストレーション/パニック1/パニック2/自意識過剰でくたびれる/自分を許せない/自己嫌悪/恐れ/慢性疲労感1/慢性疲労感2/慢性疲労感3/眠れない1/眠れない2/寝起きが悪い/心の病と診断されて不安が消えない1 /心の病と診断されて不安が消えない2/病気による気持ちの萎縮/病気による気分の落ち込み/病気による運動機会の減少
子どもの悩みCase86-92
落ち着きがない1 /落ち着きがない2/イライラ・不機嫌/発達障害/寝つきが悪い・夜泣き/おねしょ/発熱
女性の悩みCase93-104
月経前症候群/ホルモンバランスの乱れ/妊娠中の不調1/妊娠中の不調2/妊娠中の不調3/更年期の不調1/更年期の不調2/更年期の不調3/更年期の不調4/更年期の不調5/乳腺痛/子宮系疾患
高齢者の悩みCase105-111
認知症1/認知症2/認知症3/認知症4/終末期1/終末期2/終末期3
がんの悩みCase112-121
現実を受け入れがたい気持ち/術後の不安・孤独1/術後の不安・孤独2/術後安定期/経過観察期/治療の副作用による疲れ/乳がん1/乳がん2/乳がん3/乳がん4
重病のときの悩みCase122-126
気分の落ち込み1/気分の落ち込み2/孤独感・絶望感/疾病による運動性の低下/疾病による運動器の衰弱
痛みをやわらげるためにCase 127-133
お腹の痛み/頭の痛み/胸の痛み/生理痛/肩こりの痛み/筋肉の痛み全般/その他の痛み全般
その他の悩みCase134-141
運動不足1/運動不足2/運動不足3/足腰の弱り/貧血・顔色の悪さ/冷え症/肩こり/パソコン疲れ 実践・メディカルヨガ