てんかんはちょっと苦手という医師のために、精神科はちょっとわからないという医師のために。
てんかんは小児科、脳神経内科、脳外科、精神科といった複数の診療科で対応しており、専門医の数が少なく、充実した包括的なてんかんセンターも不足しています。地域によっても診療格差があり、てんかん診療の実際はさまざまな問題があります。精神科医以外の専門医の先生がてんかん患者を診るとき、メンタル面での対応で困るケースも少なくありません。本書では、実際のご自身の現場でできることを見極め、自分なりの診療のシナリオをもって対応にあたることをイメージしてまとめました。著者のリアルな体験をもとに使える医療資源が限られた状況でどのようなてんかん診療が可能なのか伝授します。
INCEPTION 発端 人生を、何を目安に測る?
CHAPTER 1 てんかん臨床へのウォーミングアップ
1.精神医学から診るてんかん・てんかんから診る精神医学
2.「てんかん」かもしれないエピソード
3.てんかんをめぐる本音クロストーク……
てんかんを見えにくくしている霧
CHAPTER 2 ケースから考えるシナリオ
1.てんかん臨床航海日誌……診療の実際をながめる
ケース1 一見、元気な女子高生のケース
ケース2 高齢初発のケース
ケース3 脳波異常がないケース①
ケース4 脳波異常がないケース②
ケース5 妊娠・出産を考慮して薬剤を変更したケース
ケース6 うつ症状が出現したケース①
ケース7 うつ症状が出現したケース②
ケース8 不安症状が出現したケース
ケース9 幻聴を伴うケース
2.てんかんのようでてんかんではない?
ケース10 全身けいれんや多彩な精神症状がみられたケース
ケース11 全身けいれんが頻発するケース
3.少し込み入った課題を考える……難治てんかんとは
ケース12 薬剤抵抗性てんかんで薬剤調整を工夫したケース
ケース13 いろいろな課題を抱えた難治てんかん
CHAPTER 3 てんかんを覆う霧を払う
1.自分なりのてんかん臨床のシナリオを描く
2.何を諦めて、何を身につけるか
3.てんかんについてのイメージを明確にする
4.てんかん特有の分類に慣れる
5.脳波(electroencephalogram:EEG)に馴染む
CHAPTER 4 薬物療法のシナリオ
1.抗てんかん薬選択のシナリオ
2.具体的な薬剤選択
3.最初の薬で発作が完全抑制されなかった場合
4.もし治療開始の延期の希望があったら
CHAPTER 5 考えるてんかん臨床のために
1.外から見えない部分も考える
2.キンドリング(kindling)
CHAPTER 6 精神医学的視点とは
1.てんかん臨床に「精神医学」の視点を混ぜこむ理由
2.精神医学的スタンスを交えた診療実践のポイント
3.精神医学的な見立てをするうえでのポイント
4.発作との時間的関係から精神面の変化を捉える
5.精神医学的・心理学的判断の基本的視点
6.健康なてんかん患者の「心」にも目を向ける
CHAPTER 7 心理的支援の基本を理解する
1.患者を理解するということ
2.言葉は真実を伝えない場合がある
3.心理アセスメントは原因探しではない
4.自我……1つのまとまりをもって動いている中心
5.アドバイスするときの注意点
6.心理学的視点の意味とは
CHAPTER 8 てんかんという舞台で思うこと
1.見えるものと見えないもの
2.時が過ぎてみないとわからない
3.てんかん治療終結のシナリオ
CLOSING REMARKS
てんかんに向きあうための多様な眼差し
あとがき
索引