フローチャート整形内科漢方薬
手術をしない先生の武器!

白石吉彦(隠岐広域連合立隠岐島前病院院長、島根大学医学部附属病院総合診療医センター センター長):監修
新見正則(オックスフォード大学医学博士、新見正則医院院長):著者
Dr.Tこと、冨澤英明(東京蒲田病院整形外科部長):著者

2025年5月28日発行 B6変型判 212頁
定価(本体価格3,500円+税)消費税10%込(3,850円)
ISBN 9784880029085

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内容の説明

整形外科外来に最高の武器を! 漢方薬で医師も患者も楽になります。

整形外科外来や、手術を必要としない時期、補う漢方薬で患者さんをサポートしよう。攻めの漢方を学ぶ「フローチャート整形外科漢方薬」とあわせて読めば完ペキです! 痛みが取りきれない、ほかの場所が痛くなったなどの患者さんの悩みにどこまでも寄り添う医師にオススメします!

監修の言葉

 本書は,整形内科領域における漢方治療の実践的な活用を目的として出版されました.近年,国民生活基礎調査の「有訴率」においても,腰痛・肩こり・関節痛が国民の主要な健康問題として挙げられています.手術治療が必要な場合は適切に整形外科医の手にゆだねられるべきですが,多くの場合,内服を含めた保存療法が重要となります.特に中高年層においては,運動器の慢性痛が日常生活の質(QOL)を低下させる要因となっており,西洋医学的治療のみでは十分な改善が得られないケースも少なくありません.
 また,国際疾病分類(ICD-11)において,Fasciaが正式に採用されたことは,痛みのメカニズムや治療アプローチを再考する契機となりました.一般社団法人日本整形内科学研究会(JNOS)でも,Fascia(含む筋膜)の重要性が議論されており,漢方医学が持つ概念との関係について新たな視点が生まれています.
 本書では,こうした最新の知見を踏まえ,腰痛・肩こり・関節痛をはじめとするコモンな整形内科疾患に対する漢方薬治療をフローチャート形式でわかりやすく整理されています.さらに,各処方の適応や使用経験,注意点を明記し,安全かつ効果的な治療へとつなげられるよう配慮されています.
 漢方医学は,西洋医学と補完し合うことで,より包括的な診療を実現できます.本書が,整形内科における漢方薬治療の普及と発展に寄与し,患者の健康増進に貢献できることを願っています.

隠岐広域連合立隠岐島前病院 院長
島根大学医学部付属病院総合診療医センター長
一般社団法人 日本整形内科学研究会 副会長
白石吉彦



序文

 いよいよ「フローチャート整形内科漢方薬」の登場です.「フローチャート整形外科漢方薬」と「フローチャート芸術医学漢方薬」に続いて,冨澤英明先生との3冊目の共著になります.漢方薬は過去の知恵をもとに保険収載されましたが,実は過去をまったく参考にしなくても冨澤英明先生のように,漢方薬を自由自在に使用できるようになります.
 以前の僕は,そんな天才肌の先生は存在しないと思っていました.また,存在したとしても僕は知らなかったので漢方薬を使いこなすための根拠を過去に求めていました.ところが,冨澤英明先生は過去を勉強しなくても,僕の師匠である松田邦夫先生が選ぶ処方と同じ結果になりました.本当に驚愕すべきことです.
 つまり,漢方の過去が好きな人は過去を勉強すればいいでしょうが,過去の勉強に抵抗がある人は,ただただ前を向いて,実臨床で困っている患者さんに保険適用漢方薬を使用すれば,自ずと同じような結果になるのです.僕は四半世紀にわたって漢方の過去を必死に勉強しました.ところが,僕が登った苦難の山頂に,冨澤英明先生は自分のルートで登頂したのです.そして僕より遙かに短時間にです.そこには彼の実臨床医としての努力があります.山頂にたどり着くと,次の山が見えてきます.さらなる高みを目指しましょう.
 僕は漢方の過去を勉強する時間があるのなら,漢方診療を勉強する時間があるのなら,まず目の前の困っている患者さんをたくさん診ることが,実は漢方上達の早道だと合点したのです.そして実際に冨澤英明先生は,僕たちがこの10数年にわたって築き上げたモダン・カンポウ的立ち位置で,僕たちの書籍を通じて漢方の勉強をしたそうです.嬉しい限りです.「過去を勉強する必要はない! 漢方診療は必須ではない!」と懸命にメッセージを送り,講演会でも話し,書籍にもしてきました.ところが,僕は松田邦夫先生のもと,膨大な時間を古典や漢方診療などの過去の勉強に費やしてきたのです.「膨大な勉強をした人に,勉強が不要だと言われても,説得力に欠ける」と問われたことが多々あります.その質問への回答が冨澤英明先生が歩んだ道のりです.
 10年前に筋膜リリースの真偽を確かめようと白石吉彦先生を訪ねました.実際に見て,自分でやってみて納得しました.本書で漢方薬を試して,その効果をご納得ください.フローチャート漢方薬シリーズを活用,そしてモダン・カンポウ的立ち位置で,過去に囚われずに,前を向いて,今困っている患者さんに漢方薬を処方してください.もしもこの本を読んで難しいと感じたら『フローチャート整形外科漢方薬』を読むと腑に落ちます.
 前を向いて,実臨床で漢方薬を使えば,新しい漢方薬の利用方法が編み出されるでしょう.そんな整形内科領域での漢方薬治療の発展にこの書籍が寄与することを期待して,満を持してこの書籍を送り出します.
 なお,本書では「整形内科」という文言を整形外科領域で手術以外の診療を広くカバーする意味合いで使用しています.

2025年春

新見 正則


おもな目次

監修の言葉 白石吉彦
序文 新見正則
本書の使い方 新見正則

漢方薬の基本 新見正則
医師のためのモダン・カンポウ 16
漢方薬の副作用 17
整形内科漢方薬早見表 24

漢方薬の始め方 新見正則
初めて漢方薬を処方する先生へ 28
患者さんへの説明 29
長びく整形内科の決め打ち 32

整形内科 処方の考え方 Dr.Tこと冨澤英明
整形内科に漢方薬を役立てる 36

フローチャート整形内科 Dr.Tこと冨澤英明
基本
 急性期 44
 回復期 46
 慢性期 48

急性期
 外傷による腫れ 52
 外傷による血種 54
 炎症所見あり(外傷・感染など) 56
 下肢の捻挫 58
 上肢の脱臼 60
 ぎっくり腰 62
 頸部痛 64
 脊椎由来の神経痛 66
 腱鞘炎 68
 骨折 70
 上肢の骨折 72
 足・足関節部の骨折 74
 肋骨骨折 76
 ギプスを巻いたら 78
 足がつる 80

回復期
 手の外科の術後 82
 人工股関節の術後 84
 膝関節の術後(人工膝関節・骨折など) 86
 頸椎の術後 88
 筋力(筋肉量)が回復しない 90
 起立性低血圧・リハ時の血圧低下・めまい 92

慢性
 変形性膝関節症 94
 変形性膝関節症(水腫がある時) 96
 変形性膝関節症(虚弱な方) 98
 変形性関節症(末期・関節内骨壊死) 100
 慢性の腰椎疾患(術後にも) 102
 関節リウマチの炎症期 104
 関節リウマチの維持期 106
 肩手症候群 108
 夏に変更したい漢方薬(慢性期) 110

難渋
 難治性疼痛 112
 肩関節不安定症 114
 肩関節周囲炎(五十肩)の炎症初期 116
 肩関節周囲炎(五十肩)の炎症期~拘縮期 118
 肩関節周囲炎(五十肩)の拘縮期~回復期 120
 胸郭出口症候群(軽症例) 122
 首下がり症候群 124
 脊髄損傷・脊椎術後 126
 上肢の変性疾患(外側上顆炎・TFCC損傷・
 尺骨突き上げ症候群など) 128
 腕神経叢損傷 130
 ニューロパチー 132
 交通事故(上半身の痛み) 134
 低髄液圧症候群 136

スポーツ
 スポーツの骨の痛み(骨端症・付着部炎・疲労骨折など) 138
 スポーツの関節の痛み 140
 スポーツの筋肉痛・筋膜炎 142

内科
 便秘 144
 胸の不快感・痛み 146
 呼吸器症状 148
 食欲不振 150
 メタボリックシンドローム 152
 下肢の浮腫 154
 排尿障害を伴う下肢の浮腫 156
 虚弱者の下肢浮腫 158
 嚥下機能低下 160
 うつ傾向 162
 パーキンソン病・脊髄小脳変性症 164
 透析患者 166

小児
 子どもの胃腸障害 170
 子どもの不眠 172
 子どものかんしゃく 174
 子どものけいれん 176

高齢者
 ロコモティブシンドローム 178
 骨粗鬆症(疼痛性) 180
 高齢者の大腿骨骨折 182
 フレイル 184
 サルコペニア 186
 認知機能低下 188

キズ
 熱傷・浮腫 190
 外傷性の切断術後 192
 糖尿病性壊疽による切断後 194
 義足トラブル 196
 褥瘡 198

介護
 介護疲れに 200

あとがき 202
参考文献 205
索引 209

コラム  新見正則
この本が難しいと感じたら 23
第2の冨澤先生を目指そう 26

コラム  Kwon Seungwon
なぜ韓医にフローチャートが人気か? 31
韓国の高齢の運動器疾患によく使われる漢方薬 40

コラム  中山今日子
とりあえず湿布を見直そう 39
漢方薬とチーム医療 42

コラム  Dr.Tこと冨澤英明
整形内科おすすめ漢方薬3選 41
リハ漢方薬のオススメ!補中益気湯41 50
筋トレよりも,食トレ(摂れ)! 51
整形内科とファシアに注目した疼痛医療 168
特別支援学校の校医をしています 169

※本書で記載されているエキス製剤の番号は株式会社ツムラの製品番号に準じています.番号や用法・用量は,販売会社により異なる場合がございますので,必ずご確認ください.
※本書は基本的に保険適用の漢方薬を記載しています.
※株式会社ツムラの漢方薬は,1日3包が基本で,それを2から3回に分割と記載されています.本書では1日2包を2回に分割(1包×2回)が基本になっています.
※本書では文字数制限で「リハ」と略している部分があります.