臨床神経心理学の「わからない」を「面白い」に!
本書では、多様な症状を理解するための基本的な考え方から、言語や行為などの各神経心理症状、さらに画像の読影法や臨床でよくみる認知症患者の診かたについて各領域専門家が丁寧に解説。
症状への気づきを促し、患者や家族への説明や対応の指導、リハビリテーションにつながるプロセスを伝授します。
推薦の言葉
このたび,敬愛する松田実先生ご編著の「初学者のための神経心理学入門」が刊行される運びになりました。松田先生らしい目配りの行き届いた編集方針のもと,錚々たるメンバーが各章を分担されています。それぞれ長年にわたる深い臨床経験と指導実績をお持ちの方々です。読んでお分かりいただけると思いますが,各章とも実に丁寧で分かりやすい内容になっています。山鳥 重
(元 東北大学医学部高次機能障害学)
緒言
本書は神経心理学をこれから本格的に学ぼうとする人のための入門書である。筆者が主催した第43回日本高次脳機能障害学会学術総会での企画セミナー「初学者のための神経心理学入門」は立ち見があふれて部屋に入りきれないほどの盛況であり,聴衆の評価も非常に良好であった。神経心理学を基礎から学ぼうとしている人たちが多いことを実感した。そこで,その企画に参加していただいた講師陣にそのまま執筆をお願いし,講演の内容だけでなく,初学者のための入門書として必要と思われる事項を追加していただいた。さらに編者である筆者が全部の原稿を何度も読み直し,入門書として必要と考えられる項目を追加して執筆させていただいた。仙台にて 松田 実
推薦の言葉 (山鳥 重)
緒言 (松田 実)
第1章 神経心理学の基礎 (松田 実)
Ⅰ 脳構造と認知機能との関係─大まかな原則 12
Ⅱ 神経心理症状分析のための基本的な考え方 16
Ⅲ 高次脳機能の局在をめぐって 21
まとめと本書の構成 23
第2章 失語 (佐藤睦子)
Ⅰ 脳機能分化の観点から:言語野について 28
Ⅱ 失語症の定義:原因疾患があっての失語症 31
Ⅲ 歴史的観点から:温故知新 31
Ⅳ 失語症を構成する様々な症状:失語症は言語症状の寄せ集まり 34
Ⅴ 多言語話者の失語症 51
Ⅵ てんかん性失語 52
Ⅶ 神経変性疾患による失語症 53
Ⅷ 失語症タイプ:共通言語としての失語症タイプ 59
Ⅸ 言語聴覚療法から考える失語症:言語症状への対応 64
初学者への勧め 69
第3章 失行 (二村明徳)
Ⅰ 動作・行為を支える神経系 78
Ⅱ 運動系と感覚系 79
Ⅲ 大脳連合系 81
Ⅳ 頭頂連合野と動作障害 83
Ⅴ 習熟動作と模倣 88
Ⅵ 手指の巧緻運動 90
Ⅶ 習熟動作の解放現象 93
Ⅷ 大脳連合系の障害による高次運動障害 96
第4章 失認 (佐藤正之)
Ⅰ 失認の歴史 108
Ⅱ 失認のないことを確認するには… 108
Ⅲ 視覚・聴覚の認知過程の大原則:背側経路と腹側経路 109
Ⅳ 側頭極のはたらき 110
Ⅴ 失認の定義 111
Ⅵ 失認の脳内メカニズム 112
Ⅶ 失認の評価の基本 115
Ⅷ なぜ「失認は難しい」のか 116
Ⅸ 失認の分類 116
Ⅹ 視覚失認(visual agnosia) 118
Ⅺ 聴覚失認(auditory agnosia) 124
Ⅻ 触覚失認(tactile agnosia) 136
その他の認知障害 137
第5章 記憶障害 (今村 徹)
Ⅰ 記憶の分類と図式:脳損傷患者の記憶障害を理解するために 143
Ⅱ 記憶障害の患者と家族の診察,面接:行動観察と情報収集 149
Ⅲ 神経心理学的検査による近時記憶障害の評価 158
第6章 右半球症状 (太田久晶)
Ⅰ 空間性注意障害とその関連症状 172
Ⅱ 病巣対側上下肢に対する注意と認識の障害 181
Ⅲ 視覚性失認とその関連症状 191
Ⅳ 動作の制御の障害 195
Ⅴ 感情障害 197
第7章 数の障害 (松田 実)
Ⅰ 数処理や計算のモジュール性について 204
Ⅱ 数の概念について 205
Ⅲ 数処理の障害 207
Ⅳ 計算障害の分類 207
Ⅴ 失算をきたす病巣─特に右半球の関与について 209
Ⅵ 失算をきたす疾患 209
Ⅶ 数に関する定型的検査 209
Ⅷ 数に関わるその他の重要な臨床的事項 210
第8章 認知症 (長濱康弘)
Ⅰ 鑑別診断について 214
Ⅱ 皮質型認知症と皮質下型認知症 216
Ⅲ 主要な原発性認知症疾患 216
Ⅳ 認知症患者を診察する際のポイント 227
Ⅴ 診察の組み立て 228
Ⅵ 家族などの情報提供者への問診 234
Ⅶ 認知機能検査(神経心理学的検査) 241
Ⅷ 症例呈示─診察・検査結果の解釈のポイント─ 245
第9章 脳解剖の読影法 (藤井正純・二村美也子)
Ⅰ 大脳皮質の読影に適した画像 263
Ⅱ 脳表解剖と読影法 267
Ⅲ 白質解剖 283
Ⅳ 症例呈示 293
第10章 補遺 (松田 実)
はじめに:用語の問題─特に「作業記憶」について 300
Ⅰ 短期記憶と長期記憶の二重解離 301
Ⅱ 作業記憶の概念について 302
Ⅲ 神経心理学における二重解離や選択的障害の重要性 303
おわりに 305
INDEX 308