精神科「フライング診断」を乗り越える
―鑑別と併存診断のケーススタディ―

仙波純一:著者

2024年12月25日発行 A5変型判 288頁
定価(本体価格4,500円+税) 消費税10%込(4,950円)
ISBN 9784880029368

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内容の説明

「精神科を専攻して2、3年経てば、そろそろ1人で外来を担当させられることになるであろう。
これから野戦病院でどんどん経験を積んでいこうという段階である。
さすがにそのころには、典型的であれば統合失調症やうつ病、あるいはパニック症などの
診断に困ることはないかもしれない。しかし、外来やリエゾンで往診した患者を前にして、
症状が複雑で定型的でない、診断を下すには情報が足りないなど、困惑することも少なくない。」

本書の「はじめに」で著者が記したこの言葉に、
若い精神科医だけでなく多くの医師がうなずき、同意するのではないだろうか。
そして、一度下した診断が経過をたどっていくうちに「違っていたか」と思い始めたり、
紹介されてきた患者の診断名に疑問を抱くといったことも、よく経験するだろう。

そんな “一見すると○○症と診断してしまうかもしれないが、
よく症状を見たり観察していくと△△症の診断になる” という51の症例を紹介した書籍である。

「少し臨床経験も積んできて、診断にも慣れが生じてしまっている…」
「時々やってくる複雑な症状を抱えた患者さんに対応できる自信を持ちたい!」
「めったに遭遇しない珍しい症例のことをよく知っておきたい!」
こんな思いをお持ちの方であれば、必ず役立つ1冊になっているはず。
ぜひご一読をお薦めしたい。

※既刊『ガイドラインにないリアル精神科薬物療法をガイドする』と併せて読めば
 精神科臨床のさらなる理解につながります。

おもな目次

はじめに 4
本書をお読みいただくにあたって 11
各項目のスタンプについて 16

■テーマ1 抑うつ症との鑑別が必要な症例
1.うつ病が先行した双極症 18
2.うつ病に隠れていた社交不安症 24
3.うつ病と見誤った甲状腺機能低下症 29
4.高齢者のうつ病とされた低活動性せん妄 34
5.うつ病が前駆したパーキンソン病 39
6.高齢者のうつ病が先行したアルツハイマー型認知症 45
7.アパシーが前駆したアルツハイマー型認知症 50
8.季節性感情障害 56

■テーマ2 統合失調症との鑑別が必要な症例
9.統合失調症のカタトニアと見誤った抗NMDA受容体脳炎 60
10.統合失調症とみられていた心的外傷後ストレス症(PTSD) 66
11.統合失調症と診断されていた解離症 71
12.単純型統合失調症とみなされていた自閉スペクトラム症 76
13.皮膚寄生虫妄想を示した躁病 81
14.昏迷状態を示した祈祷性精神病 87
15.敏感関係妄想 91
16.隠されていたfolie à duex(共有性精神病性障害) 94

■テーマ3 不安症・強迫症・解離症・衝動制御症との鑑別が必要な症例
17.パニック症とみられていた社交不安症 98
18.パニック症とみられていた解離症 102
19.不安症と見誤った前頭部髄膜腫 107
20.強迫症から統合失調症への発展 111
21.高齢者の身体症状症が前駆したレビー小体型認知症 117
22.心因性発熱とみられていた意図的な症状作成 123
23.ためこみ症 129
24.間欠爆発症 135
25.全生活史健忘 139

■テーマ4 摂食と睡眠・覚醒の障害との鑑別が必要な症例
26.摂食症の背後にある自閉スペクトラム症 144
27.摂食症とされていたオルトレキシア 149
28.うつ病が疑われた概日リズム睡眠・覚醒障害 154
29.非定型うつ病とされていた特発性過眠症 160
30.睡眠関連摂食障害(SRED)と摂食症 167
31.レム睡眠行動障害とみられていたてんかん発作後もうろう状態 172

■テーマ5 パーソナリティ症との鑑別が必要な症例
32.ボーダーラインパーソナリティ症と見誤った双極症 177
33.適応反応性の背後にある回避性パーソナリティ症 184
34.自己中心的な言動で周囲を困らせる認知症患者 189

■テーマ6 神経発達症との鑑別が必要な症例
35.うつ病になって受診した自閉スペクトラム症 195
36.繰り返す気分変動から双極症と見誤ったADHD 201
37.過剰に落ち着かないのをADHDと見誤った不安症 207
38.ADHDとされているがボーダーラインパーソナリティ症? 212
39.被害関係妄想を呈した成人ADHD 218

■テーマ7 脳器質疾患による精神症状との鑑別が必要な症例
40.「ヒステリー発作」とみられていた前頭葉てんかん 222
41.救急受診患者の発作はてんかん発作か変換症か? 226
42.シャルル・ボネ症候群からレビー小体型認知症への移行 231
43.成人になって診断された結節性硬化症の精神症状 237
44.意識障害の診断から高齢者のカタトニアへ 242
45.アルコール使用症から生じたマルキアファーバ・ビミャーミ病 247

■テーマ8 薬物の副作用と精神疾患の鑑別が必要な症例
46.下半身の落ち着きのなさはレストレスレッグス症候群,それともアカシジア? 251
47.じっとしていられないのは統合失調症の精神症状,それとも遅発性ジスキネジア? 257
48.向精神薬によるメージュ症候群 263
49.うつ病の悪化あるいは抗うつ薬による賦活症候群? 267
50.せん妄と見誤られた薬剤性の過眠 272
51.てんかん患者に見られた体感異常症 278

用語索引 282