
河村満先生、ご推薦!
脳梗塞のあと、音楽が音楽として感じられなくなった。よく知っていたはずの曲なのに、聞いてもその曲とわからない。本書は、こうした脳の障害により生じた失音楽症例1つひとつから、脳がどの局在とネットワークでもって、音楽を認知するのか紐解きます。
脳神経内科医にして音大卒でもある著者が、医学と音楽双方の専門的視点から見出す音楽の脳科学。
さらに、著名な音楽家の失音楽症例、音楽能力評価の検査、音楽認知の脳賦活化実験などの知見も網羅しました。
音楽という一専門分野から、人間の脳の可能性や奥深さが見えてくる、唯一無二の「失音楽症」成書です。
[推薦の序]
音楽や言語、注意、記憶、見当識といった高次脳機能は大脳に支えられて活動します。そして心をつくります。心は人によって異なっており、1つではなくいくつもの種類があるのかもしれません。音楽家や音楽演奏に優れた人の脳機能は一体どうなっているのでしょうか? これは誰でもが関心を持つに違いない、夢のある疑問であると思いますが、この本は答えの難しい、この問いに対しても答えてくれようとしています。著者の佐藤正之先生が脳機能にも音楽にもとりわけ専門性が高いからできるのです。佐藤先生は脳神経内科医であり、特に神経心理学を専門にしており、この本の著者として打って付けです。驚くべきことに佐藤先生は医学部入学前に音楽家になるための専門教育を受けた経験があるという特別な経歴をお持ちです。失音楽症の本は少なく、この本は日本語で書かれた珍しい本格的な失音楽の成書であり、佐藤先生のような経歴の方はめったにいるはずもなく、その意味でもこの本はたいへん貴重で興味を持って読む価値があるといえます。昭和医科大学医学部内科学講座脳神経内科部門名誉教授 河村 満
推薦の序(河村 満)
はじめに
第1章 失音楽症の歴史的症例
前奏 失音楽症とは
1.脳に閉じ込められた音楽―ラヴェル―
2.失語症と作曲能力―シェバリーン―
3.右半球の障害と作曲能力―山田耕筰―
第2章 失音楽症の自験例
失音楽症の評価に用いられる検査
CASE 1.混線するメロディ―両側側頭葉前部の梗塞―
CASE 2.ある日突然,音痴になった―両側側頭葉の梗塞による聴覚失認―
CASE 3.左手で弦が押さえられなくなったヴァイオリン奏者―脳梁梗塞による脳梁離断症候群―
CASE 4.本態性音楽性幻覚―難聴がなく脳病変を持たない幻聴―
CASE 5.歌唱てんかん―発作時に意識を保ったまま歌う―
CASE 6.演奏時の拍の障害―2回にわたる脳梗塞―
CASE 7.生来の音楽能力の障害―先天的な発達障害―
失音楽症例から探る音楽の脳内機構
第3章 音楽鑑賞の脳内機構
CASE 8・9. 脳が音楽美を失うとき―音楽無感症(musical anhedonia) ―
第4章 絶対音感の脳内機構
CASE 10.脳損傷による絶対音感(AP) の喪失
第5章 脳賦活化実験からみた音楽認知の脳内機構
音楽認知に関連した脳賦活化実験とその他の研究
終章 音楽の受容と表出のメカニズム
音楽と脳はどこまでわかったか
文献
あとがき―神は与え,そして奪い給う―
索引